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試しの日

オークション会場から帰って、すぐお風呂に入った。

 ハッシュがお湯を溜めて待っていた。

もうすぐ夏になるこの季節にはちょっと熱いくらいだったが、髪に付けてる香油が程よくほぐれるので熱いのはガマンした。

 お風呂を出たら、湯あたりしていて父上がわざわざヒールを掛けてくれた。


「ほら、もう寝なさい」


おやしゅみなしゃ~い。


翌朝、父上とチェルキオ教の教会に行き父上が使う司祭の間で、父上お手製の試験問題集を解く。父上と神官様達も聖句を写経している。

 父上、何気に高度な問題を出してらっしゃる。リンディーに算数習って無かったら、ほとんど解けてないよ!

チェルキオ教の聖句はスラスラ書けた!

 でも、これって関係ないよね?いかにもオマケ的な問題の付け方してるし。

3時間かかった問題集は、父上に早速マルバツつけられて次は面接。


「将来の目標は?」


「リトワージュ流剣術を正しい形で広める事です!もちろん、それだけじゃ食べて行けないから商会の仕事も頑張ります!」


父上は、頷くとため息交じりに呟いた。


「これなら、小等科3年生くらいの学力はあるだろう。明日、キスカ帝国宮廷騎士学校に行って飛び級のテストを受けなさい」


「何で?!いきなり!」


あと1年半は、学校に通わなくていいって言ってたよ!


「いろんな理由があるのだが、学校からの行事への参加の依頼と、ザトー子爵と約束してたのだろう?お孫さんと友達になると?ウソをついてはいけないよ」


「だって、後1年半後だっていいじゃない!」


「よくないから、今日テストした。ザトー子爵のお孫さんは、ますます鼻持ちならない子供になってるようだ。このままほっとくと、学校でもそんな風に振る舞うだろう」


1枚分が公用金貨6枚の正装30枚と騎士服10枚分のツケがやって来た。

 タダより高いものはない!その通りでした!師匠!


 私は明日からの登校の為に気晴らしに幻惑森林で魔法無双した。

 性格に問題がある坊ちゃまと友達にならなければならない私。……気が重い。

 まず、ボコボコにして鼻っ柱をへし折り、そこからどう友達になるかなんだよな。

そんな、劇みたいな友情あるわけないし、騎士の一人にするわけにもいかない。

……ロベルトに聞いて見るか。


男爵邸に帰ってから、ロベルトの部屋を訪ねると、勉強中だった。慌てて退去しようとしたが、嬉しげに部屋に引きずり込まれた。


余ってた椅子に座らされてロベルトは真面目な顔で用件を聞いた。


「さあ、何でも話して下さい!」


「……メンフィールド=ザトー、って知ってる?」


ロベルトの顔が凍った。


「ま、さ、か、関わるわけじゃないよな?!」


……ああ、反対されるぐらい性格がアレなんだ。終わったな、私の小等科生活。


「私の正装をもらったのが、ザトー子爵からなんだ。孫と友達になって欲しいって下心込みで」


「服なんか返して来いよ!……って言えたらいいんだけど、あの仕立てじゃなあ、もったいないよなあ」


「わかってくれてありがとう。鼻っ柱を折ってくれって言われたんだけど?」


「ああ!ルーク様なら簡単に折ることが出来るよ!……でも、それから、友達って難しくない?」


「君らみたいにするわけにもいかないし、さ」


「下僕にしてやれば?対等な友情を望めないと思う」


「下僕……すごい事言うねロベルト」


「だってアイツ、性格最悪なんだもん!女の子に対しては紳士なんだけど、男に対しては、近寄るな、触るな、鼻が曲がるとか、悪態ツキ放題なんだぜ」


うわ~、ますます友達になりたくないな。

ヨシ!もういいや!鼻っ柱を折ることに全力を注ごう!


翌朝、登校したら、理事長に呼ばれた。

 知らない人の案内で、理事長室に行くとそこで、テストを受けることになった。

 仕事中のフォンダ理事長と無言で、同じ部屋にいる気まずさよ。

 それに昨日受けた父上のテストよりはるかに簡単で、その分余計な視覚情報が集中の邪魔をする。


「終わったのか?もう。ヘルドナ、採点してくれ」


「はい、クロスディア君。そこまで、です」


テスト用紙が回収されて、代わりに菓子と紅茶がローテーブルに置かれた。


「さすがに、非礼な呼び出しだったからな。食べなさい。採点の間気詰まりだろう。それとも私と話でもするか?」


「何故、私の飛び級を?」


「なんだ。何もクロスディア伯爵から聞いて無いのか!帝国で行われる学生剣術選手権大会の小等科3年生の代表選手が代表を辞退してな、こんな大会出場ギリギリに!2~3日妙案が浮かばなかったのだが、今採点してる私の秘書のヘルドナが、お前がいるじゃないかと、言ったから今日テストしてるのだ。許せ」


学生剣術選手権大会?!面白そう!!


「フフ、ルークシードは剣鬼だな。そんなに喜んで貰うとありがたいが、頭の程はどうだかな」


口が悪くて失礼だが、意外と親しみ安かったフォンダ理事長と学生剣術選手権大会のことを話している内にヘルドナさんが、採点を終えた。


「いきなり古代語になってる所を除くと8割の正解率です。古代語になってる所も正解してるのでおいおい、現代文を覚えたら、いいでしょう。合格です。おめでとうございます!」


「なんだ?その古代語文が混じるとか、ルークシードは古代人か!」


「師匠が、帝国語は古代語しか知らなかったんです!仕方ないでしょ?」


「学者だったのか。入学金と飛び級代、公用金貨3000枚を払え」


「はーい」


虹証で支払うとフォンダ理事長、直々に3年生の教室に連れて行ってくれた。


誰もいない。何で?


「ルークシードの席はここだ。教科書を買うぞ。購買へ行く」


購買は玄関の脇だった。


「忘れているかもしれないが、今は夏休みだからな。剣術大会の代表選手が鍛練に来てるくらいだ」


「夏休み!それでかぁ、フォンダ理事長は?」


「剣術大会の調整で毎日仕事がある。ありがたいやら、迷惑やら!」


意外とキレてるのかもしれない。


「そうだよね、お休み欲しいよね?」


「あと、3日の我慢だ!」


「そういえば、いつ大会ですか?」


「4日後だが?」


「明日は、ヘキサゴナルに行かなきゃならないです!仕事で!」


「そうか。3日後には帰って来い。その後2~3日予定を空けておけ。腕に触っていいか?」


「?どうぞ」


触れた瞬間投げられたので投げられた方に飛んで勢いを殺す。


「うん、体術も順調に習ってるようだな」


空中で1回転して元の場所に着地する。


「ヒュージ流ですけどね」


廊下を並んで歩きながら何で3年生の代表選手が辞退したかを聞かされた。


「イジメ?!同じ代表選手からですか!」


「2年生にちょっと武芸が得意な調子に乗った貴族がいてな。皆そいつの言いなりなんだ」


2年生?ま、さ、か?


「メンフィールド=ザトーとか、言いませんよね?」


「その通りだ。よく知ってたな」


ああ!私のお友達が、そんなヤツなんて嫌だ~~~!

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