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支援

「つまり、店が余ってるからちょっとでも腕がいいリグルに店を持たせてやろうって言うのか?」


「わかっていただけて、嬉しいです!ようは、リグルさんのやる気と師匠である貴方の許し次第なので、考えて見て下さい。私からの支援は、他に材料の仕入れを安価にしてあげられる事ですかね。あ、リグルさんが今から作る銀細工のアクセサリーの宝石いしは私が都合しますから、B級品は使わないで下さい。材料の仕入れが10日後以降になります。また、こちらにお邪魔していいですか?」


「店はタダか?」


「ソレはないです。毎月、無理がない分だけ店舗代を返却してもらいます。

 その分、発注しますから作ってくれたら、どんどん売って来ます!」


親方さんは胸の前で腕を組んで考え込んでいたが、すぐに返事をした。


「10日後以降に素材を持って来た時に契約書も持って来い!内容次第でリグルを卒業させるかどうか、決める!」


「ありがとうございます!今日はこれで帰ります」


「アイル、オメェは残っていろいろ今までの事を説明しろ!」


リグルさんの手にリダル商会の名刺を無理矢理握らせてナツメ男爵領へと転移した。

 オークションはすでに終わっていて会場は閑散としていた。

 メリエレさんの魔力を探知して転移したら、メリエレさんも採掘した土砂を洗って原石を拾っていた。作業をしてるのは子供達ばかり、25人ほどで、土砂をザルに入れて揺すり洗いして砂を流し石だけにするとリッツくんが、原石を拾ってスキルで研磨する。研磨した宝石は小さいがたくさんある。


「メリエレさん、ご飯食べた?」


「トウモロコシ茹でて食べた。塩持ってないか?ケイトス」


「持ってるから、一壺置いてくね」


「青マメ茹でてくれ」


「私が?料理やらせたら、とんでもないよ?」


「俺が茹でるから、石さらってろ」


危険性に気付いたようで良かった。

ズボンを捲くって生暖かい泥水につかり、ザルに土砂を入れて泥水の中で揺する。

 私は楽しいけど、これ、小さい子には重労働なんじゃないのかな?

 疲れて河原に座っている子達は日々の生活で精一杯な感じ。

 私は子供が働いている姿を見るのがあまり好きではない。アンデッドの討伐に明け暮れていた頃の生活を思い出すからだ。

 楽しかったのは師匠といる時だけ。監視される生活に疲れていた。オマケに食事は有るか無いかわからないくらいの量で、香辛料も手に入らなかったから味がほぼ無い。いつもお腹が空いていた。

 だから、虫も食べてみた。師匠の愛情が入ってなかったら食べられなかっただろう。

 私は愛情にも飢えていた。

だから、同じ立場の子供達に幻想庭園の厨房から明日のパンを少し、失敬してきた。

 木の実が練り込んであるフワフワパンだ。渡す前にクリーンをかけてあげて、1人に二つづつ手渡してあげた。

 皆、腰につけてる袋に入れて食べない。


「リッツさん、何で食べないんですか?」


「ああ、次がいつになるかわからないから、食べないで持っておくんだ」


「家はある?」


「ぼろ屋だけど一応な!」


「食材と料理人持って来たら、家においてくれますか?」


リッツくんのノドが鳴る。


「それも、先払いか?」


「いえ、お節介です。私も食べられなかった時がありましたから」


「……お前、貴族だろ?」


「田舎の貧乏貴族でした。食べる物がなくて虫を食べた事もありましたから皆さんの気持ちはわかります」


「……そっか、お前も大変だったんだな。でも、施しはいらない!」


「じゃあ、はっきり言うけど、嫌々働いてる子供達が可哀想だから、無理矢理食べさせる!文句あるか!」


「……好きにすればいい」


勝った!


再び幻想庭園に転移して、夜でも開けてる露店で食材の大量購入をした。

 使用人居住区に入り、ベッドに寝てる人の顔を覗き込んで料理人の1人目を起こすと決めていた。

 あ、これ、セームだ。揺り起こして、コックコートに着替えさせ今度は王都の屋敷に転移する。


「セームはここで11日間朝昼晩の賄いメシを作って。シロッコさんっていう銀細工職人さんが、いるからメイドさんに呼びに行かせてちゃんと3食食べさせて。お肉もたんと使っていいから、ちゃんと良い物食べるんだよ?ここに常駐してる人間は、13名。お客様がいるかどうかはメイドさん達が教えてくれるから、頑張れ!帝国でお土産買ってくるから、楽しみにしてて!」


「1人にしないで下さい!」


「ん~。もう一カ所も1人になる所なんだよ。まともに食べてない子供達ばかりで、お話が苦手なセームにはハードル高いと思うよ?スラムの子供達と変わらないから」


セームが苦悩してる間にリョウちゃんを起こしてくれるよう侍女頭のユッテに頼んだら、鍋と包丁、フライパンといくつかの調理器具と調味料を荷物して、リョウちゃんが、旅装でやって来た。話が早くて助かる。


 半泣きのセームを王都に置いて、リョウちゃんとナツメ男爵領へと転移した。


『どこよ?荒くれ者は』


リョウちゃんのノリの良さにウケていると、子供達は、もう家というより、小屋で眠ってしまったようでリョウちゃんの為に天幕と竃を組んだ。建築魔法じいさんズを見てたら、簡単な物が作れるようになったのだ。でも、竃、と簡単な小屋くらいだが。

天幕の中に食材を入れて空いた隙間にお布団を敷く。

 リョウちゃんは、サッサと中に入り、入り口の幕を下ろすと眠ってしまった。

 何という豪胆さ!さすがリョウちゃん!

メリエレさんを探すと研磨した宝石をルーペで見ていた。


「さすが銀冠山脈産。混じり物が無い。一番大きなので指輪の小さな宝石いしくらいだな。幻想庭園帰って寝るぞ!」


「了解!」


◆○◆○◆


翌朝、飛行艇乗り場まで魔法建築師とファイン達メリエレさん友の会会員を何回かに分けて転移輸送して、そこでお別れした。

 ルメリーさんとハンナ、メリエレさんは私の転移じゃないと嫌だと言うので一緒に帰ることにした。

ルメリーさんと小麦粉を爆買いして今度のお土産は、南東諸国連合国のストールにした。下手な毛布よりあったかいし、平民ならオシャレにも一役買える。

 しかし、いつものベーコンとチーズも忘れない。私は気配りの男なのだ。キラーン!

チャトン伯爵領の青証市場でお土産を買って、クロウさんちに寄ってロマン派銀細工アクセサリーの仕入れ。

 銀冠山脈越えしてカルトラの幻蝶屋に転移。店長以下10名の店員さんが、ブラッディウルフのように待っていた。

1000点近くの仕入れにご機嫌な様子。

 冒険者ギルドに転移してチーズとベーコンを積んでいるとバラムさんに転移させられた。


「帰って来たら、直ぐ来い!指名依頼が溜まってる!お、チーズとベーコンか?ありがたくもらっておく。メリエレ、お前の待ちわびてたブライダルネックレスの群生地、復活したぞ」


「メリエレさん、お詫びに採取手伝うよ」


荒らしたの私だし。


「いや、いい。ファイン達と一緒に行くから、ケイトスは自分の事を考えろ。そら、嬢ちゃん送ってけ」


「私も送ってくれる?」


「ハイ!ルメリー様!」


バラムさんとメリエレさんが声無く笑う。無事ハンナとお土産をカーメルさんに渡す。


「型を見てやるから、空いてる日に来い」


コワッ!


「よろしくお願いします!」


ルメリーさんちの倉庫で小麦粉とチーズとベーコンを放出して代金を受け取る。

え?公用金貨3枚も買って無いよ!


「輸入税、忘れてるでしょ?ちゃんと取らなきゃダメよ!じゃ、9日後に貴方の屋敷に朝早く行くわ!お仕事頑張ってね?」


「ハイ!ありがとうございます!ルメリーさんもゆっくり休んで下さい!」


冒険者ギルドへ再び転移して、ベーコンとチーズの山を作り、南東諸国連合国の色鮮やかな幾何学模様のストールを畳んでチーズの横に並べているとまたもやバラムさんに強制的にギルマス部屋に転移させられた。


「もう!何?!」


「昼食を食べて行け。指名依頼書を渡してなかった。すまない」


「許して差し上げますとも!バラムさん、ストールいる?足が冷えなくて良いんじゃない?」


深緑と橙色と黒の買って来た中ではおとなしめの柄の毛織物のストールを見せると手に取って触り心地を楽しんでいたバラムさんは、鮮やかな青と黄色のストールを選んでご満悦の様子。

 さて、私は、指名依頼書を確認しますか!

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