第1回幻想庭園銀細工職人祭り
売り切れた物は仕方ない。
バラムさんに奢って貰って食事してるとバラムさんのクランの仲間が次々と転移してくる。
「バラム、今日はどんな依頼だ?お!金仙瓜の坊主!幻惑森林行きか?」
「その坊主からお土産だ。好きなだけ取って帰れ」
「マジか。悪いな坊主!いつもいつも!やったぜ、今夜の酒のアテが出来た!」
「俺、銀細工が欲しい」
「「売り切れました」」
「ああ!何か若い奴らが付けてる格好いいの!今度お土産に持って帰ってくれ!」
クロウさんの作品か。
「わかりました。10日後にここでお会いしましょう」
今回はクロウさんとこ行ってないから、いくつかあるだろう。
今夜は屋敷に帰ってよく寝る!
34人も運ぶから、アイテムボックスは空にして、隠蔽魔法切って運ぶ。
多分それでもギリギリなのだろう。
夕飯は食べず朝食をモリモリ食べて、冒険者ギルドに転移した。
冒険者ギルド前にはメリエレさん友の会のメンバーが何時もより綺麗な格好で固まって待っていた。
「ファインさん!キャラさん!ユーリさん!じゃ、手を繋いで下さい。皆繋いだら行きますよ!」
「繋いだぞ!」「こっちもだ!」「全員大丈夫だ!」
「じゃ、行きます!」
アイテムボックスに何も入れてないせいか、幻想庭園まで本当にひとっ飛びだった!
今日は祭りの1日目でエントリーした銀細工アクセサリーが一般市民に吟味される予定。
採取組合長達が、離宮に移ったから泊まる所はある。荷物を持ってるメリエレさん友の会の仲間をまず、そちらに案内して後は放置。
私は忙しい身なのだ!
事務所に行くとルメリーさんにメリエレさんとラプナーがもう一般投票された票を仕分けている。これを15:00までやって、発表は真夜中。頑張れ、皆!私も頑張る!
「ちょっと休んで昼ご飯持って来い!」
メリエレさんに命令された。真夜中にシロッコさんとクロウさんとニカレさんを審査員として連れて来いと言われて、昼まで自室のベッドで寝て、昼にコリンズに起こされる。厨房に行き肉団子入り春雨スープとチーズとベーコンのピタパンをアイテムボックスに入れて事務所に転移する。机の上は木の札だらけ。その中で床からこんもりと山になってる番号がある。
「皆さんお昼です!」
「ああ、お昼かまだ!」
皆さんグッタリなさっておられる。
据え置きの汁椀にスープを入れて渡せばハフハフと食べている。ピタパンも渡すとがっついてる。お腹が減るとイラつくよね!
私もお昼をいただくとアイテムボックスにまだ、集計してない票を入れて、特定の票だけ取り出せないか!とブラッディウルフにもすがるお願いをされた。
上手く行くかな?
結果、出来ました!これで爆速で開票が進みます。2184番さん大人気です!あと893番さんが追い上げてます!後は10人くらいが横並びって感じで、木箱に同じ番号の木札をドンドン入れて行き、計数魔法で数える。それの繰り返し。何と祭りには175万人の人が来ていた。あ?
「ハンナ!」
どうしてるかな?!
「リンディーちゃんと回ってるから大丈夫よ」
ルメリーさんに抜かりなし!
「ただし、ヒューイット達も一緒だけどね」
「コロス」
「だって仕方ないじゃない。ケイトスくん、主催者側何だもの。きっと、優秀なお財布替わりにされてるわよ」
メリエレさんが噴き出す。
「違いない!明日は催し物終わりだから行って来いよ!俺もファイン達と一緒にあちこちする」
「私も連れてって!」
「じゃあ、皆で行こうか!」
「私もお外出たい!」
「「「ナジムさんはさすがにムリでしょう?」」」
ルメリーさんとメリエレさんが話し合って祭りの3日目に外出許可がナジムさんに降りたのだった。
銀細工アクセサリーの展示は天幕の中で5日間してるので、何時でも見られる。それもこれも魔法建築じいさんズのおかげだ。
じいさんズは3人一組で天幕の中で監視している。
15:00になり、投票が締め切られた。
また、すごい数の木札が投票箱に入ってきた。相変わらず2184番は凄い人気だ!
得票数98万票。2位の893番を大きく引き離し余裕の1位である。審査員の方は私は知らないんだけどナジムさんがニンマリ笑ってるから、人気投票とそんなに変わらないんだろう。夕飯を厨房に取りに行ったら、用意してくれていた。フレンチトーストのベーコンエッグ乗せに肉の塊がゴロゴロ入ったミルクシチュー。ヨダレが止まらないくらい美味しかった!
夕飯を済ませて審査員氏を拉致ってくる。一応正装に着がえるまでは待った。
一番、ニカレさんがオシャレだった!
クロウさんは、ローザ工房で見立てて貰ったまんま。シロッコさんは、無難にスーツだったけど、付けてるアクセサリーが凄かった!ニカレさんが、それを見て「着る物を何とかしろ」と呆れていた。結局スーツのジャケットを脱いで腕まくりしてその華奢で美しいブレスレットをみせつけていた。3重に手首を巻いたデススパイラルスネークの威嚇する様子が手の甲まで来ていて指輪にも見える優美な一品だ。ホンモノより綺麗かも。
口を開けてアホの子のように見ていたら、ルメリーさんにフライドポテトを入れられた。ちゃっかり食べる。
「欲しくてもアレはダメよ。オーダーメイドだろうから。それにケイトスくんがあんなの付けてたらホンモノと勘違いされること間違いナシよ」
「私はテイムも出来ると思われてるわけ?」
「そうよ!だって幻惑森林から何十回でも出てくるんだもの!裸だけど」
「生きてりゃ良いんですよ!生きてりゃ!私にはテイムの才能はありません!」
「そうよね、その前にぶっ殺しそうだもの。ヒューイット達、会っても殺しちゃダメよ」
「……わかりました」
「さあ、授賞式の設営に行くわよ!」
外に出ると直ぐ授賞式会場が設営されてました。ナジムさんが手配したみたいだ。授賞作品も取って来ていて魔法建築じいさんズの壁魔法で埋め込まれている。
受賞者には私が転移して知らせに行く。まず、裏庭の職人棟から。ミリスとナーテさんの師弟コンビ。ナーテさんの作品は2位の893番さん獲得票数51万票。告げると喜んでいた。ミリスは支援賞の130人の中に入ったというとどんな賞なのか聞いて来たので次の祭りまでここに居ていい権利だというと飛び跳ねて喜んでいた。
残念ながら、他の職人はあと2カ月経ったら出て行って貰う。
箸にも棒にも引っかからなかったのだから、仕方ない。
「じゃ、ナーテさんは一緒に来て下さい。受賞式がありますので」
ナーテさんは上着を着替えて来た。エメリヒ工房の服だ。鮮やかな緑のチュニックがよく似合っている。
都合12名の受賞者を転移で連れて来たが1位の受賞者だけは連れてこなかった。
何と他人の名前でデルフィ工房のマリスが出品していたのだ!
その住所に迎えに行った私にマリスがこう言った。
「ほら、私が一番でしょう?今なら許してあげる。謝りなさいよ!」
「バフォア公爵領で仕事を始めたのですか?」
「はあ?何でこんなシケた領で仕事始めると思ってるの!ウケる!アハハハ!」
「では、ルール違反で受賞は取り消しですね。他人名義だったのも、他領の者が祭りに参加したのもルール違反です。作品は直ぐに返します!」
「何よ!言いふらしてやるんだから!」
「汚い手段で優勝を取りに来たことを、ですか?どうぞご自由に」
「何でそんなに冷たいの!ルーク!」
「何で?さんざんお世話したあげくのはてにもうウチの商品は卸せないから、他を当たれって言ったの誰でしたっけ?」
「だって、店売りが忙しいんだもん!仕方ないじゃない!それで追い出すってどっちが恩知らずよ!私たちが儲けさせてあげさせてたんじゃない!ちょっとはそっちが折れなさいよ!」
こいつ。どうしてやろうか?