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祭りの前②

王都の屋敷に行って見るとデルフィ工房はもぬけの殻だった。

 当然マリス達もおらず、やっと、王都の屋敷が使えるようになった。

私達が来るとメイドさん達は、2日前からこの屋敷を拠点にして遊び呆けているヒューイット達を屋敷から追い出して欲しいとハッキリ言った。

 何でもメイドさん達にいやらしいことをしようとするらしい。

胸揉むの?アウトだよね?

 リンディーがコワイ顔をしている。

メイドさん達と話して会議室にこもってしまった。

 リョウちゃんがご飯を食べるかどうか、聞きに来たので、【ニホンゴ】で話しかけてみる。


〖リョウちゃん、この言葉ならわかる?〗


リョウちゃんは驚いた後泣きながら頷く。


〖ルークシード様はどうして日本語を話せるの?〗


そこから、スカルナイトの師匠の事を話すとやっぱり帰れないんだと言い、落ち込んでいた。話を変えてマリス達のことを聞くとリョウちゃんが大激怒した。


〖あの人達スポンサーが出来た途端、この屋敷を買い取ろうとしたんです!信じられない!バカにしてる!〗


〖今は大丈夫って事は売らずに追い出せたって事だよね?〗


〖ラプナー様が来て、陛下と縁付いてる方の屋敷を強引に買ったらどうなるでしょうね?って問い掛けたら、マリス達も大人しく出て行きました!ルークシード様は陛下と縁付いてるんですか?〗


〖お祖父様何だよ。お母様がお祖父様の娘でね〗


〖無茶苦茶、高貴なお方じゃないですか!今までのご無礼をお許し下さい!〗


〖ふふ、いいの。リョウちゃんはそのままで。いつも美味しいご飯ありがとう〗


〖ルークシード様は食が細いから心配です。もっと食べましょうね!〗


〖はあい。ここの工房にシロッコさんっていう紫証の銀細工職人さんが来るんだよ。ほら、2週間前くらいに来た若い銀細工職人さん〗


〖ああ、ご飯を頰にパンパンに詰めてた人かな?あんな食べ方してたらすぐ太るよ〗


たわいない会話を楽しんでいると、1時間後、超絶美女になったリンディーが会議室からメイドさん達と出て来た。

 リョウちゃん大喜び!みすみちゃんに見せてあげたいとはしゃいでいた。

 そこに王都を満喫して帰って来たヒューイット達。リンディーを見て熱を上げている。

リンディーは良家の子女のように振る舞い、ヒューイット達を迎えに来たと言った。

 フィモさんが屋根から落ちる寸前だったと多少大げさに言い、ヒューイット達が働いてくれたら安心すると笑って見せた。


「任せて!俺に!」


チョロいな。ヒューイット。公用金貨5億枚分働いて貰うぞ!


翌朝からの美女リンディーは、リオラについてから容赦なかった。破壊された工房を見るとため息をつきながら、「かわいそう。私が直してあげられたなら…」と言い、ヒューイット達に仕事をさせる。

 スゴい美人局だ。

ほっといても大丈夫そうだから、シロッコさんちに行くことにした。

 転移して行くとカフェは今日も開店している。

 私が中に入ると、村人達が一斉に声を上げた。


「「「「「「「「「シロッコ!迎えが来たぞ!」」」」」」」」」」


2階からドタバタ足音がして、作業着のシロッコさんが、姿を見せた。


「こっちは準備終わったよ。そっちはどう?」


「荷作りしてある。2階に来てくれ」


シロッコさんについて2階に上がると木箱が幾つかと巻いてある絨毯があるだけになっていた。


「これ、持って行けるか?」


「他には服とかは?」


「そんなに持ってなかったから、王都で買う」


アイテムボックスに全部荷物をしまうとシロッコさんが1階に下りていく。


「ジジイ、頼んだぞ!」


「たまには、顔をみせるんじゃぞ!」


「淋しくなるのう」


「怒鳴られんかと思うとホッとするわい!王都で稼いでコーヒーを貢げ!」


「食材は送ってやるから、ちゃんと毎日カフェ開けろよ!また、見廻りに来るからな!」


「「「「「「「「「シロッコ元気でな!」」」」」」」」」」


「おう!ジジイ共、お前らもな!」


「…じゃ、シロッコさん。行くよ?」


「おう!連れて行け!」


私はシロッコさんが泣かない内に王都の屋敷へ転移した。

 工房の鍵を渡して開けさせると中に入って荷物をアイテムボックスから出す。まずは絨毯からだ。ちょっと足りなかったが概ね敷けた。シロッコさんがまだ、駆け出しの時にお客様に貢いで貰った宝物らしい。

 確かに高級そう。木箱を絨毯の上に下ろすと早速道具を出している。


 私は厨房に行きリョウちゃんに私とシロッコさんの分のお昼ご飯を頼んでまた工房に、

看板を付けて貰わないといけないから、看板屋さんを転移で連れて来る。

 看板自体は作ってあるので問題ない。

ただ、珍しい名前の付け方だ。

【紫証銀細工工房・シロッコ】

この○○証工房という尊大な名前の付け方はよほど自身の腕に自信が無いと付けられない。そしてそんな看板見たことない。

 シロッコさんは、スゴ腕の職人さんだし、仕方ないよね、って思ってたら、ゲンコツされた。


「俺だって恥ずかしいワ!今すぐ消えて無くなりたいくらいに!」


「そうなんだ…じゃ、何で?」


「あの、デルフィ工房の後釜だろう?一度でも興味を惹かないと来てくれ無いだろう」


そっか、いろいろ考えてくれたんだ。


「ありがとう、シロッコさんがウチに来てくれてよかった」


「あ、そうだ!もらった銀、全部使ったから、売ってくれ!」


ウソ?!10個もあげたんだよ?


「もう無いの?!」


「おう!帝国でいろいろ見たり聞いたりしたから、作りたい物が多くて直ぐ無くなっちまった!」


私はアイテムボックスから銀の延べ棒をあるだけ出す。12本か。


「あげる!恥ずかしい看板のお詫びに」


「いいのか?!本当にもらうぞ?」


「いいよ。金庫ここね、入れておくよ」


看板屋さんが表から呼んでいる。

看板がついたみたいだ。

シロッコさんの指輪を1つ渡してデザインしてもらった看板は、とてもオシャレで目を惹く。【紫証銀細工工房】の看板は真似する人が多いんじゃないだろうか?


「そうだといいな!」


「シロッコさん、昼ご飯食べよう」


「おう!リョウちゃんのメシか?あの子付き合ってる奴いる?」


「犯罪者め」


「待て待てまだ俺は27才だ!犯罪者とは何事だ!」


「だって、リョウちゃん16才くらいだよ?彼女達の国では20才が成人!」


「ここはヘキサゴナルだから、もう成人でいいだろ?」


「リョウちゃんに私が聞いて駄目だって言ったら諦めてね!」


「何故一度しかチャンスが無い!何度か与えられるべきだろう!」


愛の銀細工職人、ここに爆誕?


「リョウちゃんのどこが好きなの?」


「料理上手で綺麗な黒髪黒目の可愛い子なところだ!笑顔が可愛い」


食堂内でそんなことを話しているとリョウちゃんがビッシリ文字の書き込まれた大きな板をお好み焼きと一緒にシロッコさんに渡した。


〖アドバイスしちゃダメだからね?〗


リョウちゃんに大きな釘を刺されてしまった。

隣からシロッコさんがもらった板を覗いているとメイドさん達に温かい内に食べなさいと怒られた。

 今日は麺が載っててパリパリに焼かれていて美味しゅうございます。

 リョウちゃんが再び来てお好み焼きの半分にマヨネーズを乗っけた。


〖味変。ルークシード様はこんな大きなの食べるの大変でしょ?〗


〖ありがとう!リョウちゃん。ところでリョウちゃん何才?〗


リョウちゃんの後ろにヘブンズマンティスの幻影が見えた。


〖女性に年を聞くのはすごく、失礼なことなの!ちなみに何才だと思う?〗


〖16才〗


リョウちゃんは笑い転げている。


〖やあ、ね!私26才のおばさんよ!ふふ、日本人は若く見えるって本当なのね〗


〖じゃ、シロッコさんが1才上だね〗


〖あら、若く見えるのはお互い様ね!結婚はしなきゃいけないと思ってたの。でも、言葉が通じないでしょう?諦めてたんだけど、ここは1つ頑張って見ようじゃないの!〗


〖勇者達と一緒に召喚されたの?リョウちゃんは〗


〖私一人だけ年を取ってるから不思議なんでしょ?私は先生だからね!何処ぞのお貴族さんちに1人で放り込まれたの。ロトムくんに〗


お好み焼きにマヨネーズをかけた部分を食べる。


「うわ!美味っ?!」


隣からフォークが伸びて来てお好み焼きの4分の1を持って行く。

 それをみたリョウちゃんにトレーで成敗されていたシロッコさん。


〖いいよ、リョウちゃん。全部は食べられないから〗


〖運動量が違うのだから、もっと食べなきゃダメ!シロッコさんは、座って作業でしょう?太るわよ!太ったらイヤ!付き合ってあげない!〗


「シロッコさんが太ったら付き合ってあげないって言ってるよ?」


「俺、太ったことないから大丈夫。付き合ってくれるの?」


蛇みたいに丸飲み方式で食べるシロッコさん。胃腸も丈夫なんだね。


〖その板全部読んだら、私に挑戦してもいいわ〗


挑戦?なんか、リョウちゃん好戦的なんだね。びびるよ!

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