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防御魔法ってなんなの! と思ったけど、使ってみるといろいろと優秀でした!  作者: ももがぶ
第一章 さようなら日本、こんにちは異世界
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第16話 スッキリしたい

「いつの間にか寝ちゃってたんだ」


 少年は崖に掘った横穴の中でいつの間にか寝てしまっていたようで、気が付けば回りは真っ暗だった。


「それにしても暗いなぁ。電気なんかないし、こんな穴の中で火を使うわけにもいかないし。ん~」


 少年は腕を組んで暫く考えていたが、「あ、そうだ」と何かを思い付いたようだ。


「『結界』の色を変えられるのなら、白くすれば多少は灯りの代わりになるんじゃないのかな。ま、モノは試しだよね。『結界』と」


 少年は出した結界の色を真っ白に塗り潰すが思っていた結果とは違ったようで「駄目か」と呟く。


 確かに結界自体の色は真っ白にはなったが、回りを照らす程ではなくなんとなくそこにあるということが分かる程度だった。


「じゃあ、いっそ『光れ』ばと……うわっ眩しい!」


 少年が結界自体が光ればいいのにと考えると結界全体が眩く光り出し、思わず目を閉じるが、それでも瞼越しに明るいのが分かる。


「もう、眩しすぎ。もうちょっと抑えて……うん、この位ならいいか」


 少年は結界の明るさを調整すると、「これは『照明』だな」と新たに名前を付ける。


「さて、起きたのはいいけど……したくなるよね。さて、これは問題だぞ。外でするのはいいけど、こう真っ暗じゃ怖いし、している途中で何かが出て来るのも怖いし、やっぱりこの中でするしかないのかぁ~う~ん、困ったな。あ、そうか!」


 少年は横穴の奥に行くと新たに一メートル四方程掘ると今度はその場所のほぼ中央に二十センチメートル四方の穴を垂直に掘り下げる。


「結構、掘ったけどこれだけ掘ればいいだろう。さて……あ~そうだよ。これじゃ駄目だよ」


 少年はこれでようやく出来ると思ったが、これだけじゃ無理だと感じたが、それを作る材料を今から取りに行くことは出来ないし、またどうしたものかと考える。考えた結果、「考えることないじゃん」と呟く。


「そうだよ、何も考えることはなかったんだよ。僕にはこれがあるんだから『結界』!」


 少年はいくつか結界を作るとそれらを組み合わせることで簡易的な便器を作り、それをさっき掘った穴の上に置くと「これでよし!」とほくそ笑む。


「じゃあ、さっそく……あ、どうしよ。拭くものがないや。どうする? どうしよう? あ、そうだ。もう、考えることもなかったじゃん。でも、ちょっと不安だな。けど、しょうがないか」


 少年はこれで出せると意を決して履いているものを下げると便座に座り「ふん!」と息むと「ふぅ~」と安堵した表情になるが、直ぐに「くさっ!」と顔を顰める。


「よし、ここまでは想定内だ。落ちつけ、落ち着くんだ。先ずは『クリーン』と。けど、ホントに大丈夫だよね」


 少年は紙の代わりにと思い付いたのが、『クリーン』を使うことだった。ただ、自分ではどうやっても確認することは出来ない。だから、上手くいったかどうかはパンツに着いてなければOKだと思うことにした。


「さてと、残るのはこの臭いの元だよね。これだけ掘ったのだから、ちょっと埋めれば大丈夫だよね」


 少年は用を足した穴に土を被せると「これでよし!」と軽く手を払う。


「あ~でも、まだ臭いが残っているな。まあ、入口を閉じちゃっているのもあるか。でも、開けるのもな~ん? もしかしたら、出来るかも。ま、モノは試しだよね」


 少年はそう言うと自分を包んでいる防御魔法に対し「臭いをカット」と念じてみると、なんの臭いも感じなくなった。


「うん、やってみるもんだね。なんにも臭わないや」


 思っていた通りの結果になり、少年は思わずほくそ笑む。


「やっぱり、この『防御魔法』って結構、凄いんじゃないかな。もう少し色々試してみようかな。ふぁ~……やっぱ、明日にしよう。もう、眠いや。お休みなさい」


 少年は出すものを出してスッキリしたのか、襲ってきた睡魔にそのまま身を任せると、ベッドの上で横になり、静かに寝息を立て始めた。


『ちょっと、ミルラ様! どうするんですか。もう、気付き始めてますよ』

『何ですか、そんなに慌てて。いいから、落ち着きなさい』

『落ち着いていられますか!』

『もう、だから何をそんなに慌てているのですか』

『慌てますよ。ミルラ様こそ、何をそんなに落ち着いているんですか!』


 女神ミルラに食ってかかる様に文句を言っているのは、女神ミルラの部下である下級神の一人だ。


 その女神が異世界で暮らしている少年、池内直樹をどうするのかと女神ミルラに対し激しく責め立てている。


『へえ、意外と上手く使いこなしているようですね。ふふふ、可愛いのが着いていますね』

『ええ、そうですね……って、そうじゃありません!』

『だから、先程から何をそんなに慌てているんですか。見たところ、何も問題ないじゃありませんか』

『いいえ、問題だらけです!』

『そうでしょうか?』


 女神ミルラは人差し指を顎に当て少しあざとく答えてみせるが、下級神は『私には無意味です』と冷たくあしらわれる。


『もう、ノリが悪いわね。他のは、結構これでごまかしが効くのに』

『そんなの、上辺だけしか知らない(ひと)にしか通じませんよ。大体、私が何年、ミルラ様に付いていると思っているんですか』

『……覚えてないわね』

『ええ、そうです。もう千年単位の話ですからね。って、問題はそうじゃなくて、少年の方ですよ。ホントにどうするんですか!』

『どうもしません。だって、こちらからは様子を窺うことは出来ても直接的な干渉は出来ないのですから』

『だったら、少年に警告を与えるとか何かあるでしょ』

『警告?』

『ええ、そうです。もう、勝手に魔法を改変するなとかそう言うことをお願いします』

『うん、嫌』

『え~じゃ、どうするんですか! このまま異世界ヒャッハーしちゃったら、どう責任をとるつもりですか!』

『そんなことあの子はしないわよ』

『そんなの分からないじゃないですか! 大体、ヒャッハーするのはああいうちょっと気の弱いいじめられっ子ですよ! 絶対にしますって! 大体、なんで異世界に行かせたんですか!』

『だって、これから起こることを知られたら嫌じゃない』

『それって、あの少年を因子にしたことですか?』

『そう、それ』

『ハァ~』

『もう、そんなに溜め息吐いていると幸運も逃げ出すわよ』

『誰のせいだと……ハァ~もう嫌だ! もう、何年も転属願いを出しているのに!』

『あ~それ、私が握りつぶしているから無駄よ』

『え~どうしてですか!』

『だって、誰も私の下で長く保たないんだもの。あなたは私にとって、とても貴重なの。うふっ』

『いやだ~もう絶対に止めてやる~!』


 下級神が走り去るのを見ながら、女神ミルラは異世界で気持ち良さそうに寝息を立てている少年の様子をジッと見ながら願う。


『どうかヒャッハーしませんように』と。


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