第13話 今日はここまで
防御魔法の使い方をなんとなくだけども理解しながら歩き続けた年は、やっと水辺へと辿り着いた。
「やった、川だ! 遠かったな~」
少年は目の前を流れる川を見て、感動を覚える。
「でも、問題は……」
そう、少年が考えている様にせっかく見つけた水でもその水が飲めるか飲めないのかを確認しないといけない。だが、それはどうやって確認すればいいのかとまた、少年は腕を組んで考え込んでしまう。
やっと見つけた水辺なのに、飲めないほどの水質ならばまた他所を探す必要がある。では、それはどうやって行えばいいのかと少年は考えた。考えた結果、出たのは「うん、防御魔法に任せてみよう」だった。
少年は目の前の川に近付く。
向こう岸までは五メートルほどあり、とても飛び越えられる幅ではない。そして水質だが、川底がなんとなく透けて見えることから、それほど悪くはないだろうと思われる。時折、陽光に鱗らしき物を反射させながら泳ぐ魚っぽい何かも確認出来た。
「じゃあ、先ずは水質調査だよね。では、『結界』」
少年は『結界』と口にすると、目の前にほんのりと赤く色づいた五十センチメートル四方の半透明の箱が現れる。この『結界』は防御魔法を発動させる際に攻撃対象物を『守れ』と言うのも変だと思い、少年が『結界』と発動キーワードを作り出したものだ。
「でも、このままじゃ水が入らないから天板はいらないよね」
そう、少年が考えると目の前に浮いている箱の上部が解放されたので、少年はそれを川底へと移動させる。
「それにしても考えるだけで移動させられるってのは便利だよね。あ、そろそろいいかな」
少年は川底へと沈めた半透明の赤い箱を目の前に浮かせる。
「じゃあ、ここからが本番だね」
少年は箱の天板を閉じると『鑑定』と呟く。すると、箱の中が一瞬光り少年の目の前には半透明のボードが表示された。
「お~出来たよ。やってみるもんだね。え~と、何々……ん~このままじゃ飲用には向かないか。やっぱり生水は危険ってことだね。でも、僕は諦めないよ。こんなこともあろうかと次の手はちゃんと考えているからね。せ~の『浄化』! うん、成功かな」
浄化した後に鑑定してみると、今度は『飲用可能』と出ていた。「よし、これで飲み水は確保と……でも、保管は?」と更なる課題も出て来たが、少年はまたもや『モノは試し』とその飲料水と化し結界魔法で閉じられた箱をそのまま、鞄の中へと入れてみると『ヒュン』と鞄の中に消えた。
「さて本当に入っているのかな」と鞄の中に手を入れれば、『飲用水百二十五リットル』と頭の中に浮かんできた。
「うん。これで水は大丈夫と。じゃあ、次はご飯と行きたいところだけど、その前に寝る場所を探さないとね。多分だけど今はお昼過ぎくらいだろうから」
少年はコップほどの結界を作り出すと、さっきと同じ手順で浄化を済ませてから口を着ける。
「ゴクッゴクップハッ……あ~おいしい! よし、探すぞ!」
喉を潤した少年が次に欲しいのは寝る場所だ。さっきみたいな好戦的な生き物に襲われたくないと、出来ればこの川の側で用意出来ればと辺りを見渡した時に崖が目に入る。
「あ! いいかも」
少年はマンガや物語で見たように崖に横穴があることを願いながら崖の方へと進む。
「ふ~近くに見えたのに結構、遠かったかな。でも、川からはそれほど離れていないみたいだし、なんとかなるかな。で、問題は……」
崖に辿り着いたはいいが、少年が期待している横穴らしきものは視界に入ってこない。
「参ったな。でも、今から他を探そうにも日が暮れるまでそんなに時間ないよね。ん~あ!」
少年は横穴がないことに少しガッカリしたが、直ぐに何かを思い付いたようで結界を細く細くより細く成形すると、それを崖の表面に差し込んでいく。
「思ったより固いか? でも、僕の結界は問題なく入ったみたいだね。じゃ」
少年は差し込んだ結界の正面から離れると『解放』と唱えると、それまで圧縮されていた結界が元の大きさに戻ろうとして崖の内部から破壊する。
「お~上手くいったね。じゃあ、瓦礫は鞄に入れればいいか。後は、もう少し広げればいいかな」
少年はさっきと同じ要領で崖に横穴を成形しつつ瓦礫を片付けながら、幅二メートル、高さ二メートル、奥行き五メートルほどの空間を確保した。
「これだけの広さがあればいいよね。念の為に入口に『結界』を用意してと」
少年は入口を結界を塞ぐと横穴の一番奥へと進む。
「じゃあ、ここにベッドを置けばいいかな」
少年は鞄から瓦礫を取り出すと、幅1.2メートル、長さ1.8メートル厚みを二十センチメートルほどの結界で包み込み圧縮すると、そこには表面がつるつるの岩で出来たベッドが出来上がる。
「固いのはしょうがないけど……いや、ちょっと待てよ。『結界』と」
少年は作ったばかりのベッドの上に同じ大きさの結界を用意すると「柔らかくなれ」と念じてみると、その結界はほどよい柔らかさを持つマットレスの様に変化した。
「うん、やってみるもんだね。最初は『防御魔法』なんてと思ったけど、これって意外とチートかも」