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惑星守護艦隊②

「公共チャンネルにて通信ありました!恐らく惑星守護艦隊からと思われます。」

唐突に響くアスカの声。

通信網を担当していたからか、別の艦からこの船に向けて信号を送って来た事が分かったらしい。


「私が出る。全体音声で応答しろ。」

ヴァインは真剣な顔付きで見守っている。

アスカが応答ボタンを押すと少しノイズが流れすぐ後に男の声が聞こえてきた。


「こちら惑星守護艦隊。戦艦級輸送船バルバトスだな?火星から逃げてきたのか、それとも地球側を裏切ったのか、どちらだヴァイン・ノクティス総司令。」

明らかに僕らを疑っている。

このままだと遠距離での戦いが始まってしまうが、ヴァインには何か策があるようだ。


「ヴァイン・ノクティスだ。現在アーレス星人からの攻撃が激しく緊急離脱をしてきたところだ。イカロスとアポロンには出来る限りのアルマイト鉱石を積んできた。命からがら逃げてもよかったが流石に手ぶらでは帰れんのでな、大量の資源は持って帰って来たというわけだ。」

「しかし火星から何の連絡もなかったと聞いているが?」

「さっきも言っただろう、アーレス星人の攻撃が激しかったと。連絡を入れる暇なんぞなかったよ。」

「……皇帝陛下に確認をとる。それまでそこを動くな。」

「勘弁してくれないか?こっちは急いで火星を発ったんだ、食料も心もとない。出来るだけ早く地球に戻りたいのだがな。」

「規則だ。こっちも急いで確認を取ってやる。通信終了。」

そこで男の声は聞こえなくなった。

ヴァインの言っていた策というのは言葉で丸め込む事だったようだ。

ゼクトらを悪く言うようで申し訳ないと謝っていたが、ゼクトは別に構わないといった態度だ。

今は悪く言われようが無事に地球へと降りる事が先決だ。

ゼクトもそれを分かっていたのだろう。


もう一度通信が来るまでの時間はとてつもなく長く思えた。

今にも極太のレーザーが飛んでくるのではないかと、ずっと黒い海を見続ける。


しばらくすると通信が繋がった。

「こちら惑星守護艦隊。確認が取れた。しかしその言葉を鵜呑みにするほど愚かではない。地球へ降下する前に中を臨検したい。」

この返しは想定していたようでヴァインは平静を装い返答する。


「いやそれは辞めた方がいい。火星独自のウイルスがある可能性も捨てきれんからな。いつも地球へ降下すると即座に消毒をしていたのだろう?君たちが中に入れば感染してもしらんぞ?」

「……それは、恐ろしいな。いいだろう、しかし横に張り付かせてもらうぞ。流石に単独降下は認められん。」

「それはもちろん構わんよ。3隻全て左右挟み込むように張り付かせておいてくれ。そうすれば君達としても安心なのだろ?」

ヴァインは上手く誘導したようだ。

これで惑星守護艦隊はバラける事になった。

戦力分散という意味では最高の結果だろう。


「やはりノクティスの血か。口が上手いものだ。」

「……それは褒めているのか分からんが礼は言っておこう。」

ゼクトは昔を懐かしむような声色で話していた。

ディランの事を思い出しているのだと思う。


通信が終わり速度を落としたまま進んでいると前方に6隻の戦艦らしき船が見えた。

あれと戦う事になっていればと思うと恐ろしい。

明らかに兵装が違いすぎた。


「なんだよあれ……このバルバトスみたいなのが何隻もあるじゃねぇか……。」

「ちょっと戦力に差がありすぎ。」

ザラさんやロウさんも司令室の窓に張り付いて見ていた。

誰もが地球の技術力の高さに驚いているようだった。


「よく聞け。あれが現在の地球の戦争兵器だ。今までの戦い方などろくに役に立たないと分かっただろう?」

「ああ、サウズがどうのこうのってレベルじゃない。俺達は何百年も前の技術だけで生きてきたがあれを見ると馬鹿みたいに思えてくるな。」

アレン隊長は呆れていた。

巨大な戦艦が数隻列をなして近づいてくるのを見れば自分たちがどれだけ技術の制限を受けていたのか身に染みてわかる。


「もうじき接触する。操船は自動操縦から手動に切り替える。それは私がやろう。」

ヴァインが操縦席に座るといくつかのボタンを押して操作し始めた。


「こちら戦艦級輸送船バルバトス。左舷右舷兵装格納良し。航路確認。速度は100ノットに固定。」

「こちら惑星守護艦隊2番艦ツヴァイ、速度100ノット了解。左舷へと取りつく。」

「こちら惑星守護艦隊3番艦ドライ、速度100ノット了解。右舷へと取りつく。」

ヴァインが素早く情報を伝達しそれを受け取った守護艦隊は応答しながら真横に付いた。

時間同じくしてイカロスとアポロンにも2隻ずつ取りついていた。


「こちら1番艦アインス、先導する。着いて来てくれ。」

最初に通信で聞こえた男の戦艦が先頭を行くらしい。

多分この艦隊の隊長なのだろう。



後はこのまま地球へと降下すれば僕らの出番だ。

ハッチを開いた瞬間最高速度で駆け抜ける。

多分ハッチの外にいる人達は僕らを見たと同時に死んでいる。

ベータでもなければアルファでもない。

ただの人間が急に飛び出してきた僕らに反応できるはずもないからだ。


全員装備を付け始めた。

もう茶化したり笑顔を見せる奴なんて一人もいなかった。

誰もが堅い表情をしている。

これから戦地へと赴くのだ。

気楽に考えている者など一人もいないだろう。


装備を取り付け始めていると、通信が繋がった。

アポロンからの緊急通信らしく、大きなアラートが鳴っている。


「何事だ!?」

ヴァインが叫んだ。

聞いたことのないアラート音に誰もが動きを止めている。


「きっ!緊急伝達!!!!輸送船アポロン船内で暴動が発生!!!ハイア艦長は重傷!!通信室ももう長くは持ちませっっ!!うわぁあ!入って来た!!やっ辞めろ!!……ガハッッ……しに……がみめ……」

聞こえてきたのは焦りが混じった男性の叫びと断末魔だった。

ただ最後に聞こえた言葉で僕の頭の中では繋がった。


「死神のエイレン……ゼクト!確かエイレンは40名ほどで逃げて行方が分からないって言ってたよな!?」

「そうだ……奴め。アポロンに乗り込んでいたのか。ヴァイン!他の乗組員を逃がさねば皆殺しにされるぞ!!!」

アポロンには精鋭が少ない。

人数で戦力分散していたおかげで一番多く乗ってはいるが殲滅隊のような精鋭がほとんど乗っていない。


「あっちにはウィード・クラインがいる。討伐隊第一小隊の隊長だ。殲滅隊と同等の戦闘能力がある。」

「その男に賭けるしかない……今ここで助ける事は出来ん。そもそも周りは守護艦隊だらけだ。」

ヴァインは悔しそうに拳を握りしめていた。

ハイア・ノーランは長い付き合いのはず。

重傷ということは長くは持たない事を示していた。


「我々はこのまま前進する。悔しいが助ける事は出来ん。己でなんとかしてもらうしかあるまい。」

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