第三章 エピローグ
戦艦級輸送船バルバトス、艦長はヴァイン・ノクティス。乗組員は殲滅隊とゼクト、ニア、ガルム、キマリス。その他約3000人。
輸送船イカロス、艦長は擬態のリクリット。乗組員は機工隊と討伐隊から数部隊、アーレス星人250人、その他約3000人。
輸送船アポロン、艦長はハイア・ノーラン。乗組員は討伐隊。アーレス星人250人とその他約3000人。
戦闘用アンドロイドは各船300体ずつだ。
指揮艦だけは400体積まれている。
戦力の分散という意味ではバランスが取れていた。
既に火星を飛び出し、早3日。
初めて見た宇宙は広かった。
辿り着く事の出来ない宇宙の果ては何処にあるのか見当もつかないほど広大だった。
飛び上がった時は本当にこんな鉄の船が浮くのかと誰もが半信半疑であったが今はもう慣れた。
ヴァイン曰く地球まで大体半年はかかる見込みだそうだ。
アルマイト鉱石を大量に積んでいるおかげで燃料に困る事はなく常に最高速度で船を飛ばせるとヴァインは喜んでいた。
船内は広かった。
一隻に3000人以上が乗っていても窮屈さを感じない程に広い。
各々が訓練に打ち込んだりずっと宇宙を眺めたりして一時の平和を楽しんでいる。
ただやはり全員の不安は地球に着いた時だ。
ヴァインから聞いた話によると、地球が目視で確認できた時、宇宙では至近距離になるそうだ。
故に地球を目視で確認できた時には既に敵の懐の中と言う訳だ。
いつレーザーが飛んでくるかも分からない、それが恐ろしいとも言っていた。
輸送船には最低限の装備はある。
前方に取り付けられた二基の砲は500㎜レーザー砲、それと全方位実弾掃射自動機銃。
そして船を守る電磁障壁だ。
僕らからしてみればとんでもない兵器ではあるが、ヴァインに言わせればくそ雑魚武器らしい。
分かりやすく説明してくれたが、ジェットスラスタとサウズを持った僕らに竹槍で突撃してくる一般兵士くらいには差があるとの事。
確かにそれを聞けばなかなか無謀な挑戦に思えた。
しかし、そんな僕らにも唯一地球の守護艦隊に大打撃を与える兵器がある。
それが戦艦級輸送船バルバトスだ。
今僕も乗っているこの船だけは特別製であり最新鋭の戦艦と同等以上の戦闘力を誇る。
戦艦に輸送能力を取り付けた巨大な船だ。
兵装も素晴らしく、拡散粒子砲が前方後方合わせて4基。
自動追尾型対実弾兵器の多段ミサイルが40基。
遠距離型電磁誘導砲が10基、大型対艦ミサイル砲が10基。
他にも色々説明されたが何が何やら分からず覚えていない。
なにより凄いのは主砲だ。
前方に取り付けられた巨大な主砲の名前は大型荷電粒子砲。
型落ちの戦艦程度であればまとめて貫通するほどの威力だそうだ。
ただし威力が大きすぎる為燃料の消耗も激しい為連射は出来ない。
だがこの船には関係のない話だ。
今はアルマイト鉱石をこれでもかというほどに積んでいる。
主砲を連発しても尽きないほどに。
この船を先頭に突破する作戦だ。
それでも不安が残るのは、相手も似たような兵装を積んでいるからだ。
電磁障壁が防げるのは主砲2発分。
それ以上は物理装甲で耐えなければならないらしく限りなく被弾を抑えて突破しなければならない。
出来る事ならどの船も落とされず全員無事に地球の大地を踏みたいが、簡単にはいかないだろう。
何しろ戦艦10隻を相手にするのだ、被弾は真逃れない。
ただヴァインは不敵に笑いながらもう一つ作戦があると言っていた。
もう仕込みは終わっていると言っていたが何の事かは誰も分からなかった。
夜眠れず船内の通路で窓の外を眺めていると、誰かが近づいてくる気配がした。
ふと横を見ると近づいて来ていた人物はアスカであった。
「眠れないの?」
「ああ、どうも宇宙ってのが慣れなくてさ。ほら、この窓の外を見てみろよ。この窓から一歩外に出れば僕らは死ぬ世界らしいじゃないか。なんだかそれが怖くてさ。」
宇宙と言うのは人間が生身で生存する事は出来ない空間だと聞いた。
空気がなく呼吸は出来ないし、そもそも一瞬で体の熱を奪われて死に至るらしい。
それにずっと暗闇しか見えないといつ朝なのかすら分からない。
そんな環境でぐっすり眠れる方がどうかしている。
「ふふ、私もよ。でも不思議な感覚よね。ちょっと前までアーレス星人の事を侵略者と呼び殺し合いをしていたのに、今は一緒の船で宇宙とか言う意味の分からない世界にいるんだもの。地球に向けて動いてるらしいけど、風景が変わらないのはちょっと味気ないわね。」
アスカは少し微笑みながら僕の隣に座る。
僕もアスカと同意見だ。
地球だと思っていた大地は火星の大地だったし、人類の敵は人類だったり。
今までの常識が通用しない事ばかり起きていて頭がパンクしそうだ。
「でも、ずっと暗闇が続いているのも悪くないわ。何も考えず見てられるもの。それにまさかこんなに平穏な日々が来るなんて思ってもいなかったから。」
「確かにそうだよな。これから戦地に向かうってのに、少なくとも半年は何もなく平和に時が過ぎていくんだもんな。」
「ええ、それに貴方と一緒にこうしてられるのも嬉しい。」
そう言ってアスカは僕の肩に頭を預けた。
僕もアスカの方に手を回す。
傍から見れば、これから戦うっていうのになんだそのゆるゆるした態度はって怒られそうだけど、今だけはこうしていたい。
少しだけ、幸せを噛み締めたいんだ。
僕らは無言で窓の外を見続けた。
どれほど経っただろうか、アスカが寝息を立て始めた。
どうやら僕の肩に頭を預けたまま眠ってしまったらしい。
僕もアスカと一緒にいるからか眠くなってきた。
大切な人と過ごす一時がこれほどまでに心地いいとは思わなかった。
僕らが起きたのはそれから数時間が経った後であった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
物語が中盤に差し掛かりました。
やっと地球へと足を踏み入れる所まで来ましたね。
最初に考えていた物語の折り返し地点まで書けました。
まだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします!
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