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トリカゴの中で彼らは永遠の幸せを願った②

ニアさんは新しいオモチャを見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

からかいに来たのは一目瞭然であった。


「どっちから告白したの!ねえねえ!!ライル!?それともアスカ!?」

「……僕ですよ。」

「へー!ライルやるじゃーん!!!アスカもずっと待ってたんでしょー?フェロモン出てたから分かったよ!」

アーレス星人というのはフェロモンを感じ取れるのか?

というかアスカはそんなにもフェロモンを出していたのだろうか?


「いいなー!ウチも恋愛したーい!!!」

「……ゼクトはだめなんですか?僕から見れば格好いいと思いますけど。」

「嫌だ!こんなの!狼じゃん!」

いや、アンタ下半身虫だろ、というのはここにいる全員が思ったに違いない。


「言ってくれるではないかニア。我の方こそお断りだ。」

ゼクトも売り言葉に買い言葉で反論する。

こんなのと言われたのが気に障ったらしい。


「失礼な!ウチは可愛いでしょうが!!」

「……上だけ見ればな。」

ゼクトはチラッと下半身を見てそう言った。

僕らも同じ事を思っていたが口には出していない。


「プリチーな足でしょ!ほら!六本もあるんだよ!お買い得みたいなもんでしょ!?」

「良くわからんが、我は好みではない。六本ならちょうどいいのがいるではないか。」

なんとなく次の言葉が分かる気がする。

多分僕が思い浮かんだ人と一致しているだろう。


「六腕のキマリスがいるだろう。アイツなら上半身が腕六本だ。お前は足が六本。お似合いだな。」

「いやだよあんなの!キモイ!」

ここに居ないからってなかなか辛辣な事を言うんだなニアさん。

キマリスさんは喋った事がないが、腕が六本あったのだけは覚えている。

The異星人って見た目だったから覚えていただけだ。


「まあまあ、ニアさんは綺麗だと僕は思いますがね。」

ニアさんが喚き散らしているとゼノン副長がやって来た。

騒ぎすぎてうるさかったのだろうか。


「ああ、別にうるさいとか思ってないから気にしなくていいよ。で、ニアさんの恋愛事情が何だって?」

ゼノン副長もそういう話は好きらしく、会話に混ざりに来たらしい。


「あ!あの時気絶した人!良いこと言うじゃぁん!ウチは可愛い!そうでしょ!?」

「あ、ああそう思うよ。僕はね。まあ好みは人それぞれって言うしもしかしたらニアさんの事が好きになる人間が出てくるかもしれないよ。」

「えー!楽しみー!!あ、でも貴方みたいにタバコ?ってやつを吸ってる人は無理かなー。臭いし。」

告ってもいないのに振られたみたいになったゼノン副長は肩を落としていた。

ただ励ましに来ただけなのに逆に傷つけられる結果となってしまった。


他の人とも話しておこうと僕はその場を後にし、ザラさんとロウさんの所へ足を運んだ。

昔からの仲らしく2人でお酒を飲んでいた。


「おう、ライル。楽しんでるみたいだな。お前らの声がこっちまで聞こえてきてたぜ。」

「すみません、騒いでしまって。」

「構わねぇよ。そういう場だろ?今は。」

ロウさんとザラさんは静かにお酒を飲んでいたせいか、僕らの騒いだ声が聞こえていたらしい。


「でもお二人が静かにお酒を飲んでるって珍しいですね。」

「んー?まあね。ここにリオンもいたらなーって話してたとこよ。」

リオンさんは前哨基地を攻めた時、狙撃によって死んだ。

僕みたいな新入りからすれば対して思い出もないが、2人からすれば長い付き合いだったそうだ。

少しだけお通夜みたいな空気が流れた。



「まあしんみりするのも柄じゃねぇしな。楽しい話でもしようや。聞いたぜ?お前アスカとくっついたんだって?」

ロウさんはニヤつきながら僕に問いかけてきた。

恥ずかしかったが、そうですと答えるとザラさんがキャーキャー言い出した。


「えー!ライルきゅん遂に!?遂に大人の階段を登ったの!?」

「い、いやまだそこまでしてませんよ!」

「まだ!?てことはこれからってこと!?」

ザラさんみたいな人にバレたら絶対にうるさいと思ったが案の定だった。

どっちから告白したのかとかどんなシチュエーションだったのかとかキスはしたかとか根掘り葉掘り聞かれてしまった。

無視するわけにもいかず、しどろもどろながらも答える。


「あの……見晴台のとこで……僕から……そのキスも……僕からです……。」

「えー!ロマンチックぅ!やるじゃーん!!」

くそ恥ずかしかった。

内緒にしておきたかったが、ゼクトがからかってきたせいで意外にも大きい声で騒ぎすぎた。

そのせいでバレてしまった。


「ま、いいじゃねぇか。お前も大切な人が出来たって訳だ。守ってやれよ?男はいつでも女を守るってもんだ。」

「はい!!」

「幸せになりなよ。っていってもこれから戦地に向かう時に言う言葉でもないか!2人の事ずっと応援しておくよ。結婚式には呼んでよ?アタシが盛り上げてあげるから!」

結婚はまだ現実味がないからか、あまり意識はしていなかったが人から言われると、ちょっと緊張する。

その時が来たら僕はうまくプロポーズ出来るだろうか。


会話も程々に切り上げ今度はガロンさんの所へと行く。

ガロンさんはアレン隊長と2人で酒を飲んでいた。


「お疲れ様です。」

「ん?ああライルか。お前あのアスカと付き合ったらしいな。聞こえてきたぞ。」

もうどこに行っても言われるな。

どんだけ僕の声は響いていたんだ。


「まだガキだったお前らがなぁ。歳を感じるぜ。」

「ガロンさんもまだそんな歳じゃないでしょ。」

「バカ言え。もう昔ほど身体は動かせねえよ。」

全盛期程ではないにしても未だ僕らに訓練をつけれるくらいには動けるガロンさんだが自分では衰えたと思っているらしい。


「俺の時代はジェットスラスタなんてなかったからな。生身でアーレス星人と戦っていたんだ。今のお前ら以上に身体を使っていたんだよ。それに比べれば今の俺なんてせいぜいお前らレベルって事だ。」

せいぜいで殲滅隊と互角にやり合えるなんて恐ろしい身体能力だ。

いや、ベータの身体能力としてはガロンさんのような人が本来の能力を引き出していると言えるかもしれない。


「ガロン殿、ライルもいるから今聞きますが、勝てると思いますか?」

アレン隊長は真剣な表情でガロンさんに問い掛けた。

僕がいるタイミングで聞くのはどういう意図があってのことだろうか。


「地球にさえ降り立てばなんとかなると思うぜ。お前らよりもヒョロいやつだろ?地球人ってやつは。それなら問題はねぇよ。ただ……降り立てれば、の話だがな。」

やはりガロンさんも同じ意見だった。

正面切っての戦いなら負ける気はしない。

だが宇宙船での戦いとなると僕らは役に立たない。

それを危惧しているようだ。


「そうですか。俺も同じです。あのヴァインが上手くやってくれると信じるしかありませんね。」

僕らはただ乗っているだけになる。

宇宙船同士の戦いとなれば出番は殆ど無いに等しい。

図らずも敵視していた男に託すしかない現状であり、3人はもどかしい気持ちになっていた。


「ま!今は、今だけは楽しもうや。酒が飲める機会なんて次はいつになるか分からねぇからな。」

「そうですね、ライルお前も飲め。」

「あ、はい。いただきます。」


そして夜は更けていく。

永遠の幸せを願い平和な世界を手に入れる事を誓い僕らはグラスをぶつけ合った。

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