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邂逅⑦

トリカゴに戻る車内では、会議室で聞いた話をより詳しく聞く事になった。


輸送船イカロスとアポロンは数百年前の船であり、今の船と比べるまでもない旧式である事。

輸送船には攻撃能力が備えられているが戦艦級と比較すると話にならない程に差があるという事。

数ヶ月後に送られてくる戦艦級輸送船だけが高性能であり、地球へ進軍する際の主力機になるとの事。

攻撃力はトリカゴの壁を数発で消し飛ばす程だそうだ。

中に搭載されているアンドロイドも最新式であり軍司令部が保管しているアンドロイドよりも更に強力であるらしい。


分かりやすく言うと、たった3隻の船で10隻からなる艦隊を突破できなければ、地球の大地すら踏めずに死ぬ事となる。

なかなかハードな作戦だ。

しかし僕らは今までも苦しい戦いを生き抜いてきた。

その経験を活かすことが出来れば、何とかなるかもしれない。


そんな話をしているともうトリカゴが見えてきた。

後はヴァイン総司令官の仕事になる。

どうやってトリカゴの皆を説得するのかは知らないが、ゼクト曰く、ノクティスの血を引いているのならば容易い、らしい。

それほどまでにディラン・ノクティスは人の上に立つことに長けていたそうだ。


トリカゴに着いた僕達は、滞在組のビリー隊長らと合流し経緯を説明する。

ビリー隊長はおもしれぇと乗り気なようで、この戦いに終止符をうってやるぜ、なんて事も口走っていた。


僕等が暴れ回って壊れた建物などは既に修復が終わっていた。

アンドロイドをフル稼働し、街の復興に力を入れたらしい。

僕らに真実が漏れた事で既にヴァイン総司令官は覚悟が決まっていたようだった。


しばらく兵舎で寛いでいると、トリカゴ全体に音声が響き渡った。

スピーカーという物らしく、ヴァイン総司令官の声が何処に居ても聞こえてくる程の声量になるらしい。


「トリカゴに住む者達よ、私の名前はヴァイン・ノクティス。火星侵略先行軍総司令官である。火星と聞きなんの事か分からないだろう。空を見てくれたまえ。」

誰もが上を見上げる。

僕らも兵舎の窓から外を眺めると、空中に大きな映像が浮かび流れ始めた。

確かこれはホログラムという技術だと事前に説明を受けていた僕らは分かるが、知らない者からすればいきなり空に見たこともない動く写真が流れているのだ。

恐ろしい事この上ない。


その映像は、地球が侵略され街が破壊されていく映像だった。

侵略者らしき者も描かれているが、アーレス星人とは全然違う見た目をしている。


「今見てもらっている映像は、君達の先祖に見せた偽りの映像だ。まあ動く写真のような物だと思ってくれたらいい。まず大前提としてここは地球ではない。火星である。」

口を開けて呆然とする者、驚愕した表情で固まる者、理解できず首を傾げる者、窓から見ていると人々は様々な反応を見せている。


「もっと簡潔に言おう。我々は地球からこの火星に送り込まれ地球は侵略を受けたと騙されて火星に住まう者達と殺し合いをさせられていた。それも数百年ずっとだ。このまま黙って地球の言いなりでいいのか?いや!そんな事許容できるはずもない!!!今こそ立ち上がるべきだ!!……かくいう私も地球の者から脅されて君達に真実を隠していた。しかし!!もう我慢できない!!我々トリカゴに住まう全ての者よ!!手を取り合い地球へと反撃しようではないか!!!侵略者と呼ぶ彼ら地球外生命体も被害者なのだ!何も知らぬまま殺し合っていた歴史はここで終わりにしようではないか!お互い殺し合ってきた事実は消える事はない。だがその憎しみや復讐心を全て地球にいる諸悪の根源にぶつければいい!!!立て!!我らはただ無為に死んでいっていい命ではないという事を示せ!!地球の奴らに鉄槌を!!!!」

吹っ切れたのだろうか。

ヴァインは無茶苦茶言ってるな。

とにかく全ての元凶は地球にあります、と。

だから共に戦いましょうと。

そう言いたいのは分かるが、勢いで押し切った感が否めない。


兵舎の窓から見ていた他の仲間達も苦笑いを浮かべていた。

ただ何も知らない街に住む人達は拳を掲げ大声で叫んでいる。

勢いで押し切っても何とかなるもんだな、と教えられた気分だった。


「我が言っていただろう?ノクティスの血を引いているのなら容易だと。ディランも有無を言わせないやり方が得意だったのだ。」

ゼクトは横で丸まりながらそんな事を言う。

最初から勢いで押し切るだろうと分かっていたようだ。


「後は時間が解決してくれるだろ、ヴァインの準備がいい所を見ると前からこういった事態に陥った際の用意はしていたように思えるな。」

「ククク、だから奴が総司令官なのだ。トップを務める者であるならば常に複数の手を用意しておくのが常識だからな。」

アレン隊長にそう返したのはゼクトだ。

ゼクトもアーレス星人を束ねるトップの立場だ。

同じような考えを持つことが多いのだろう。


「とりあえず、なんとかなりそうですね。数か月後に輸送船が来るとか言ってましたしそれまでにトリカゴの住人を戦えるようにしないといけませんね。」

僕がそう言うと、ゼクトはクツクツと笑う。

何が可笑しいのか、と思いゼクトの方を見るとやれやれといった表情をしていて余計に腹が立つ。


「何だよ、笑う所なんてあったか?」

「ライル、軍司令部は兵器を大量に保管しているんだぞ?使い方さえ分かれば十分戦えるだろう。近接戦闘になるような事があれば我々の出番だという事だ。それに思い出してみるがいい今までの会話を。トリカゴに住む全ての者はベータ、すなわち遺伝子改造を施された強化人間だぞ?訓練などせずとも最初から地球にいる者など相手にならんよ。そもそも近接戦に持ち込めるかどうかが怪しい所ではあるがな。」

すっかり忘れていた。

この星にいるほとんどの者は強化人間である事を。

僕らが当たり前に出来る事が地球にいる人達には出来ない。

大体ジェットスラスタの加速に耐えられる方がおかしいのだ。

生身でいきなり100キロ近い速度に加速する装置を付けて自由自在に飛び回り戦う。

それが僕らの常識だが、常人であれば気絶ものだそうだ。




じゃあ待てよ?

レインとルナはずっと行方不明になっているが、真実を聞いた後では捉え方が変わってくる。

あの二人、地球からやってきた普通の人間である可能性が高い。

ではなぜ僕らと同じような身体能力を持っていたのだろうか。

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