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邂逅⑥

「さて、この本に記された真実を見て、どう考える。ヤツの言うように軍司令部も巻き込んで全軍で地球へと矛を向けるのか、否か。」

アレン隊長が全員を見回しながらそう語る。

全員の顔は苦々しい表情だ。

無理もないだろう、復讐を誓った相手から協力を願い出て来られたのだ。


誰もが口を閉ざしていると1人が口を開いた。

ガロンさんだった。


「俺は構わん。俺達を使い捨てのコマのように扱った地球にいる者共が最大の敵だと言うのならば、そいつらを叩く事こそ俺達の悲願だろう。よく言うだろ、昨日の敵は今日の味方ってな。」

割り切ったのか、協力する事を選んだガロンさんだったが、僕も同じ意見だった。

ガロンさんに賛同すると、みな同じなのか反対意見は出なかった。


「決まりだな、共通の敵地球人共に反旗を翻す時だ。ゼクト、お前は一番根深い憎しみを抱えているんだろ?どうなんだ。」

「……我はディランをこの手で殺してやりたかった。しかしもう生きてはいない。子孫であるヴァインを殺せば我も奴らと同じだ。……いいだろう、我も戦力となろう。我の意見はアーレス星人全ての総意だと思え。」


話が纏まった所でヴァインを呼び寄せる。

会議室に入ってくるヴァインの表情は固かった。

ここで殺されるかもしれないと思えばそんな表情にもなるのは仕方がない。


「ヴァイン、協力する事に決まった。トリカゴ全戦力とアーレス星人の全てを使えば勝率はどうだ。お前は地球の技術や戦力を知っているんだろう?」

アレン隊長が問いかける。

彼にしか分からない事も多く、戦いに勝つには相手の事を良く知らなければならない。

ヴァインは協力してくれると分かってホッとした顔を見せたが、質問に対しては苦々しい顔付きで答えた。


「全ての戦力を集めたとしても勝率は恐らく2割から3割。個々の戦闘能力は勝っているが、いかんせん数が多いのだ。私も今の人口を詳しく知らんが数十年前で総人口は80億を超えていた。」

80億という途方もない数字を聞いて、全員唖然とする。

そもそも地球にそれだけの人間がいることすら知らない僕らからすれば青天の霹靂だった。


「それに、技術力はもはや数十年前の比ではない。ゼクトの知っている地球の技術なんぞ過去の遺物レベルだぞ。今では当たり前のように人工知能が搭載された兵器が乱立している。」

人工知能も良くわからない僕らにヴァインは説明する。


「君達も見ただろう。あのアンドロイドを。あれは人工知能が搭載されており登録した命令に従い行動する。もちろん機械だ、痛みも感じなければ感情もない。ただ相手を殺す為だけに行動する。それが人工知能の恐ろしい所だ。」

「軍司令部にはソレがどれほどある?」

「約200体……だったが、先の戦闘で数が減っている。100体程だと思ってくれていい。」

戦力に加えるにしては心許ない数字だ。


「地球にはそれがどれほどある?」

当然の疑問である。

あんな強力な兵器だ。

流石に数は用意できないだろうと踏んで、予想では多く見積もって1000体と見ていたアレン隊長は念の為にヴァインに質問する。


「各国に約1000万体のアンドロイドが配備されていると聞いたことがある。」

1000万……またもや途方もない数字だった。

それに各国と言った。

そこに疑問を持ったゼノン副長が口を開いた。


「各国と言ったね?一体地球にはどれだけの国があるのかな?」

「四大国と小さい国がいくつか、そして我々の祖国シュラーヴリ帝国がある。攻めるのであれば帝国を味方に付けたほうがいいだろう。」

「待て待て、祖国を味方に付けるだと?その国が我々をこの星に送り込んだ怨敵ではないのか?」

「本にも書いてあるが、正確には違う。四大国がシュラーヴリ帝国にそう指示したのだ。帝国は過去に覇を唱え地球統一を果たそうとした経緯がある。その時に負けたせいで数百年近く他国の言いなりだ。」

倒すべき敵は他国だということか。

帝国もいわば被害者。

過去を遡れば数代前の皇帝がやらかしたせいともいえるが、過去の罪の清算を何も知らない我々子孫に強いるのは間違っている。


「甘い蜜を吸いすぎたせいか、ずっと帝国は奴隷のような扱いだ。今更辞めることもしないだろう。だから倒すべき敵は四大国を率いるバルトステア王国だ。」

バルトステア王国。

ヴァインの話によると地球至上最大の国家として栄えたシュラーヴリ帝国の次に強大な国家がバルトステア王国らしい。

帝国が衰えると、地球最大の国家はバルトステア王国となった。

バルトステア王国以外の国も逆らうことはしない。

シュラーヴリ帝国を目茶苦茶にしたのもバルトステア王国が主導となり行った事。

それを知っているからか、他の国は大人しくしているようだ。


「問題は地球に突入する前だ。惑星守護艦隊がいるはずだからな。そこを突破する必要がある。」

惑星守護艦隊というまた聞いた事のない単語が出てきた。

強力な攻撃能力を備えた船であり、それが数隻宇宙空間という場所に浮かんでいるとの事だ。

もうヴァインが何を話しているのか全然理解が出来なくなってきた。

唯一ついて行けてるのはゼクトだけだ。

僕らは宇宙という存在も知らなければ、そんな巨大な鉄の船が浮かぶという概念もない。


それでも話は続いていく。

1から全て教えていたら時間がいくらあっても足りないらしい。


「こちら側で使えるのは輸送船2隻。それと数ヶ月後に来る輸送船がある。今後の事を見据えて緊急を要すると伝えた。恐らく攻撃能力も備えた戦艦級の輸送船が送り込まれてくるはずだ。中には暴徒鎮圧用にアンドロイドが複数体搭載されている。そのプログラムを書き変えればこちらの戦力にもなる。」

ぜんっぜん分からない。

戦艦級の輸送船ってのもどんなものか分からないし、プログラムって言葉も分からない。

ゼクトだけが、こうなる事を予想していたのならばノクティスの血は引いているようだ、とか言っているが何の話か分からない。

ゼクトの話しぶりから予想するに、ディランというのは相当優秀で頭が切れる人物だったのだろう。

その血を引いているという意味で、多分ヴァインを褒めたようだ。


「ただし、輸送船イカロスとアポロンは数百年前の船だ。今の船とは性能が違いすぎるという事は理解していてくれ。」

「ヴァイン、恐らく我以外誰も話を理解しておらん。トリカゴに戻る道中説明してやってくれ。」


ゼクトのフォローにより、僕らは全員ヴァインから再度説明を受ける事に決まった。

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