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邂逅④

ゼクトの話によると、未だ死神のエイレンは姿を消したままだそうだ。

同じように、40人近いアーレス星人やガルオンなども姿を消したという。

人間に対して、かなり大きな憎しみを抱えた者ばかりだろうとの事で、現在捜索中らしい。

姿が見えないのは不気味だが、何よりもエイレンの目的が分からないのが恐ろしい。

ゼクトは念の為、全員に注意喚起を行う。


「死神のエイレン。見た目は黒いローブに骸骨の顔をしていて武器は大鎌だ。能力としては自分の姿を透明にしゆっくり近づき暗殺する事を得意としている。気配も読みにくく目を付けられたら最後、確実に殺される。極めつけは殺すことに快感を覚える狂気的な行動が目に余る。その為奴は死神と呼ばれているのだ。」

透明になる能力は正直言って厄介すぎる。

見えなければどれほど体を鍛え動体視力を上げても意味がない。

この力のせいでBBさんは殺されたのだ。

それを全員知っており、背筋に冷や汗が流れる。


「そのエイレンとかいうやつはアーレス星人の中でも厄介者なのか?」

アレン隊長に反応したのはガルムだった。


「厄介者どころじゃねぇぜ!!あいつは何度も監獄に閉じ込められてやがる生粋の犯罪者だ。今までどれだけの同胞を殺してきたのかも分かんねぇくらいにな。」

ガルムは拳を握りしめ苛立ちを露わにする。

タチが悪い事にエイレンも特殊個体だという事だ。

戦闘能力は人間の比ではない。

流石にゼクトやガルムといった戦闘特化型には負けるだろうが、ニアさんやグランならば勝てないと言わしめる程には強いらしい。



エイレンについては周知しておくということのみで終わった。

どのみち対策を練ったとしても何処にいるのかも分からない現状あまり意味がないからだ。

ただし行動する際は必ず数人一組で動く事は必須と言えた。

万が一遭遇しても反撃のチャンスがあるからだ。



「ではこれで会議は終わりだな。行動開始はどうする?もう始めるか?」

「早い方が良いじゃろう。軍司令部も馬鹿の集まりではない。時間が経てばそれだけ人員も増える可能性が高いしの。」

グランの一押しによりこれから前哨基地へと帰る事に決まった。

アーレス星人も共に出発する。

持てる武器は全部用意した。

アーレス星人の使う武器はほとんどが近接武器になる。

ニアのように中距離への攻撃が可能な特殊個体は珍しい。



出発後、先頭を走っているのはアレン隊長と共に乗る僕らの車両だ。

一番最後尾にアーレス星人が走って着いてくる形となっている。

そうでなければ勘違いした前哨基地の仲間が攻撃し始めてもおかしくないからだ。

ただしゼクトだけは先頭車両と並走している。

そもそも車と同じ速度で走れるガルオンというだけで脅威でしかない。


途中で挟む野営では何人かの隊員が数人のガルオンと酒を飲み交わしたりしている。

言葉を話す事はできなくともこちらの言葉をある程度理解はしているようだった。

リコは相変わらずニアと一緒にいる。

ガルムは筋肉に自信がある隊員に大人気なようで、ガルムの周辺だけはむさくるしい空間になっていた。



アスカと夜空を眺めながら、温かいお茶を啜っていると後ろから近づく足音がする。

振り返ればそこにはゼクトがいた。

「どうした?」

「2人でいるのに悪いな。少し話がしたかった。」

確かになかなかタイミングがなくて2人で話す事がなかったなと思い、頷く。

アスカもいていいというので3人で話すことになった。


「まずは共に戦える事を感謝する。我はずっと諸悪の根源を討ちたかった。だが、我らのみでは難しい。だからお前達が協力してくれて感謝している。」

「それは僕らも同じだ。僕らだけでは軍司令部に反撃するなんて絶対出来なかったしな。君らアーレス星人の戦力は期待しているよ。」

「ククク、任せておけ。こと戦闘において我らは最強だ。銃弾程度では身体に傷をつける事すら敵わぬ。」

こんなことを言いに来たのだろうか?

そんなはずはない。

こんなどうでもいい会話はあくまでその場の空気で喋っただけだろう。


「本題はなんだ?聞きたい事でもあったんだろ?」

「……そうだな。お前は我を憎んでいるか?お前の家族を奪い四肢を切り飛ばした我を。」

憎んでいないといえばウソになる。

だがそれは相手も同じ事。

お互いに奪い奪われの関係だった故の仕方のない事だった。


「今は共通の敵が出来た。それでいいじゃないか。仲良く手を取り合ってって訳にはいかないけど、共に戦場を駆けるくらいならそんな関係で十分だろ?」

「確かにな。我は謝る事はせん。だからお前も謝るな。これは約束だ。我々は沢山の人間を殺した。そしてお前達人間は我々を何も知らずに殺し返した。ただそれだけだ。」

ゼクトが言いたかったのは多分こうだろう。

お互い譲れないことはある、実際に命の奪い合いをしたのは事実だ。

過去は水に流してなんて綺麗事は言わず、胸にしまい続けておけと言う意味合いだろう。


アスカと僕は強く頷いた。

ゼクトも満足したのか少し微笑んだ気がする。


しかしその場を去ろうとしたゼクトの足が止まった。

「ん?ライル、お前そのネックレスは何処で手に入れたのだ。」

急にゼクトが僕の首元を見てそんなことを言う。

一体なんだというのだろうか?


ニアさんが昔戦場で拾ったが、綺麗だった為ずっと大切に保管していた事。

そしてそれを僕にくれた事。

もしもこのネックレスとゆかりのある人がいたのならその人に渡してあげてほしいと一言添えられた事をゼクトに話す。


するとゼクトは朗らかな表情を見せた。

何かおかしなことでもあったのかと思い問いかけたがそうではなかった。


「まさかもう一度そのネックレスを目にすることが出来るとはな。」

「なんなんだよ。このネックレスがどうしたってんだ。」

「そのネックレスはな、カイルが妻のニナに送ったネックレスなのだ。ニナはアルファとして戦場に送られた。その時に戦死したのだろうが落としていたんだろうな。それを幼かったニナが綺麗だと思い拾ったのだろう。まさかそれが巡り巡ってお前に渡っているとは。」

ゼクトは懐かしむような顔をする。

カイルと共に生きてきた記憶を思い出しているようだった。


「それはお前が持っておけ。いや、どうせならそこの横にいる女にプレゼントするのもいいかもしれんな。カイルは大切な人だからこそ奮発して綺麗なネックレスを送った、と言っていたぞ。」

ククク、と笑いを堪えながらその場を去って行った。



僕と赤い顔で俯くアスカはその場にしばらく残っていた。

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