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邂逅②

アイオリス山に着いた時、既に入口でゼクトが待ち構えていた。

遠くから僕らが来るのを見ていたのだろう。


彼は無言で開いた入口に向かい僕らに背を向けた。

着いてこいと言っているようだ。

僕らは顔を見合わせたがとりあえず彼に従いアイオリス山の基地へと入って行った。


中に入るとまた前回同様白い大きな部屋に通された。

リコやリッツにとっては初めての場所だ。

ワクワクが勝っているのか辺りをキョロキョロ見回している。

しかしそれもゼクトが他のアーレス星人を連れてくると、静かになった。

まあ中身はともかく見た目は化け物ばかりだし、少し気後れするのは分かる。



「ここに来たという事は選択したのだな?今後の道を。」

開口一番にゼクトが僕達に問いかける。

アレン隊長に渡していた司令官の私室にあった本を渡すと、ゼクトは無言で受け取り中を確認した。

初めて読むのか、じっくり目を通すゼクトは次第に顔つきが変わっていく。


途中まで読みいきなり本を口で咥えて放り投げた。

何事かと全員に緊張が走るが次の言葉にまた僕らは悩まされる事となった。

「なんだこれは!!!!こんなもの真実とは到底言えんわ!!!!」


ゼクトが怒りに満ちた顔をしているせいで、数人の隊員が顔を青くしていた。

気持ちはわかる。

黒狼のゼクトが暴れればここにいる全員でも止められるか怪しいからだ。



「これを、これを司令官の私室で見つけただと?ディラン!!!奴はこんなものまで用意していたのか。……お前達に分かりやすく教えてやろう。これは嘘と真実が混ぜられているぞ。」

嘘と真実と聞き、殆どの者は首を傾げる。


「待ってくれゼクト!!!僕らはどれが嘘でどれが本当なのか分からない。もっと分かるように教えてくれ!」

たまらず僕は叫んだ。

ゼクトの言っている意味は分かるが、嘘と真実の判断など到底出来ない。

当時を知っているのはゼクトだけだ。


「これを読んだのだろう?そこになんと書いてあった?カイルは老衰で死に?くっくっく、ふざけたことを書いてくれる。これが我の目に入れば怒り狂うと分かって書いたのかは知らんがそれは真っ赤な嘘だ。カイルは我の目の前で殺されたのだ。」

「でもここには老衰で亡くなったとしか書かれていないけど……。」

「ディラン、当時の総司令官だった男の指示だろう。恐らく未来の人類に自らが犯した罪を知られたくなかったからか?ディランは我の目の前でカイルを撃ち殺したのだ。我は命からがら逃げきり今に至るが我を逃がしたばかりにカイルは死んだ。それが真実だ。」

カイル・ドルクスキーが殺されたと聞き一同に動揺が走る。

人類の至宝とも呼ばれた男を殺すなんて考えられない。

当時の総司令官とカイルの間に何があったのか。

ゼクトは悲しそうに本当の真実を語ってくれた。


「我は戦争が起こる直前まで人間と共に歩んでゆける未来を想像していた。だがそれはただの幻想だった。ある日我の元にカイルが現れた。悲壮な顔を見せながらな。我は問うた。何故泣いているのか、と。カイルは言った、今まで騙していた、すまない。と。そこで初めて知ったのだ、火星に来たのは同盟でもなんでもなくただ資源を奪う為に侵略しに来たのだとな。だが我は悲しみに暮れる暇は与えられなかった。我に本当の事を教えたカイルに詰め寄ったのだ、ディランという総司令官が。我からみてもディランとカイルは良き友に見えていたのだが、奴は、ディランは!カイルに拳銃の銃口を向けた。カイルは人類を裏切り我に真実を伝えた。それが許せなかったのだろう。最後の最後までディランは引き金を引く事を躊躇っていた。だがカイルが銃を懐から取り出した時、もう後戻りは出来ないのだと知ってか、ディランは……引き金を引いた。…………これが我の知るカイルの最後だ。決して老衰などではない。我が盟友は心半ばにして死んだのだ!」

怒りとも悲しみともとれるゼクトが語った言葉。

明らかに嘘をついているようには見えない。

しかし、その言葉を信じればいいのか、司令官の私室に置いてあった本を信じればいいのか、僕らには判断がつかなかった。


ガロンさんはずっと黙ったままだ。

思うところはあれど、今はそれを口にすれば協力関係を築こうとする現状を壊しかねないとでも思っているのか、だんまりを決め込む。


「まさか我がお前達に真実を伝える事があるとは思っていなかったのだろう。だからそんな嘘の入り混じった真実を偽装した本を用意したのだ。」

「……話は分かった。恐らくお前の言う内容は本当なんだろう。だが、その時お前が反撃に出ればカイルは死ななかったんじゃないのか?」

アレン隊長はゼクトに当然の疑問である質問を投げかけた。

ゼクトほどの戦闘能力があれば銃弾など弾き鋭い爪を振るう事だってできたはず。


「すまない……我はまだその時今ほどの力はなかったのだ。400年以上も前だぞ、我は子供だったのでな。反撃する勇気も力もなかった。カイルの死は我の責任でもあると言える。」

悲しそうに俯き、当時の記憶が蘇ってきたのか薄っすらと目に涙を浮かべている。


「我は人間が憎い。いや、地球からこの火星に侵略することを決めた者共が憎い!!お前達もそう思わないのか?先祖は好き放題身体を弄られ戦闘に特化した人間に作り変えられた。記憶は書き換えられ軍司令部の良いように使われ、消耗品のように使い潰されていく。」

ゼクトの本当の目的は地球へと反撃する事にあったらしい。

だが、彼らアーレス星人だけでは到底叶わぬ目標でもある。

だからこそ僕らに目を付けた。

復讐を誓った者ならば、協力することが出来るかもしれない。

そう思ってわざわざ自分達の巣に人間を呼び寄せた、とそう言っていた。


「簡単には決められない。少し席を外してくれ。これは人間の問題でもある。我々だけで話をさせてくれ。」

アレン隊長のお願い通りアーレス星人は全員部屋を出ていった。


ゼクトらアーレス星人が部屋から出たのを確認するとアレン隊長は口を開く。

「さあ、始めようか。人類の未来を決める最後の選択を。」

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