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邂逅①

ライル達が行動を起こして、1カ月。

彼らは既にトリカゴにはいなかった。

騒ぎに乗じて上手く逃げ出せたのか、今は前哨基地に集まっていた。


「これから、アイオリス山を目指す。流石にこんな前哨基地まで機械人形を送り込んでくることはないだろう。」

全員を前にしてそう言い切ったのはアレン隊長だった。

まあわざわざこんな所まで機械人形を送ってくるほど余裕はないはずだ。

トリカゴ内は僕らが暴れたせいで修復に人手を割かないといけないだろうし。


ゼクトに会って僕らが選んだ選択を伝える。

その為にもう一度アイオリス山を目指さなければならないが、前哨基地を完全に空にするわけにもいかず、滞在組とアイオリス山へと向かう組で分かれる事となった。


もちろんアイオリス山へ向かうメンバーには前回行った者達が入っている。

それに加えて今回はガロンさん、グラストン兄妹、テッド大隊長も一緒に行く事となった。

今後の作戦に支障が出ると困るといった理由でビリー機工隊長と数名の機工隊がトリカゴ内に残っている。

内部から動けた方が便利だからだそうだ。

ガロンさんは今のトリカゴ内に残るのは危険だと説得しようとしたらしいが聞かず、絶対に残ると言いきったらしい。

アレン隊長は後からそれを聞いて、ビリーらしいと少し笑っていたらしいがトリカゴ内で隠れて生きるのは簡単ではない。

ビリーなら上手くやるだろ、と言うだけだった。



アイオリス山へ向かう道中会話と言う会話はなかった。

たまに言葉を交わす程度で、すぐに沈黙が車内を包む。

僕らは遺伝子改造を施された強化人間であり、他国の言いなりで地球から送り込まれた者達の末裔だ。

それを知ってしまえば今まで何の為に戦っていたのか分からない。

アーレス星人にどんな顔を向ければいいか分からず、楽し気に会話する者など一人もいなかった。


もしもゼクトに出会っていなければ、ゼクトが行動を起こしていなければ今もまだアーレス星人を侵略者と呼び戦い続けていたのだろうか。

ここを地球だと思い込み、未来の為に戦っていたのだろうか。



沈黙を切り裂いたのは、リコだった。

「ねーライル。アイオリス山ってさ、ゼクトみたいなのがいっぱいいた?」

大事な話かと思えば割とどうでもいい話だった。

多分沈黙に耐え切れずに何か話題はないかと探して話し掛けたのだろう。


「いたよ、赤い鬼に青い肌をした昆虫の女性、後は緑の熊とかね。あー六本腕があるやつもいたな。」

「えー!!!なにそれなにそれ!!」

興味を持ったのかリコは食いついて来た。

ライルも暗い雰囲気には少し参っていたので、心の中でリコに感謝する。


「確か赤鬼のガルム、蒼炎のニア、深緑のグラン、六腕のキマリスだったかな?」

「なにそれ!二つ名みたいでかっこいー!いいなーリコもそんな二つ名欲しいなー。」

その会話を聞いていたからか、アスカが口を開いた。


「フフフ、貴方なら騒音のリコじゃないかしら。」

「えー!いいじゃーん!」

暗に騒がしい奴と言われているのに何故か喜ぶリコ。

馬鹿なやつではあるが、今はその騒がしさが助かっている。

アスカもそれを分かっているからか、冗談ぽく笑っている。


「え!てかさ蒼炎のニアって人?女性って分かる見た目してるの?」

「上半身だけならな。実際に見てみれば分かるよ、人間とは相容れなさそうな見た目だ。まあ人として見るなら割と話しやすくて気さくなお姉さんって感じだったかな。」

ニアさんの下半身を思い出すと、蘇る苦い記憶。

初めて出会った時は食われるのかと思ったほどだ。

リコも多分驚くだろう。


「そうね、確かにあの人はちょっと異質だったわね。顔だけ見れば綺麗な人なんだけど。」

アスカも思い出したのか顔を顰めている。

虫嫌いからすれば、出来るだけお近付きにはなりたくないだろう。


「どんな見た目だった?」

「下半身は昆虫だよ。」

「えー!かっこいー!!!」

リコの感性は狂っているようだ。

実際に出会った時どんな反応をするのか見ものだな。


そんな他愛もない会話をしていると少しずつ車内の空気も明るくなってきた。

同じ車内にいるガロンさんだけは難しい顔をしているが。

それは仕方のない事だ。

ガロンさんに限っては、黒狼のゼクトに慕っていた英雄レオンを目の前で殺されているのだ。

いくら人類が始めた戦争だと言えど簡単に割り切れるものでもない。

ガロンさんからすればゼクトは遊撃隊隊長の仇なのだ。



ただアイオリス山に行くのに、1つだけ懸念点がある。

それは死神のエイレンの事だ。

トリカゴに帰る時、襲ってきたが今回も恐らく隙を伺っているだろう。

力を貸してくれればとても心強い戦力になるが、多分無理だ。

彼からすればアレン隊長とゼノン副長が弟の仇なのだから。


お互い相容れない部分があるが協力体制など上手くいくものだろうか。

少し不安はあるが、アレン隊長を見ると目を瞑り堂々としていた。

不安などないのだろうか。

気になって聞いてみると意外な反応が返ってきた。


「不安?何を言っている。不安しかないだろう。それでもやらなければ我々に未来はない。だからアイオリス山に向かっている。お前はどうなんだライル。」

「不安はありますけど、ゼクトとなら上手くやれそうな気はします。そもそもカイル・ドルクスキーの盟友だというのなら、過去の事は水に流してくれそうです。彼も闘争は望んでいませんでしたから。」


もしもゼクトが好戦的なタイプなのであれば今この時はなかっただろう。

出会い方さえ違ければ……と何度思ったことか。

地球人が欲を出さなければ、火星と共に歩んでいける未来があったのに。

そう思ってならなかった。



そんな事を考えているとアイオリス山が見えてきた。

さあ、平和への未来に向けて一歩踏み出す時だ。

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