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第二章 エピローグ

ライル達が軍司令部本部から逃げ出して3日が経った。


司令官は恐れていた事がついに起こったと、顔を青くし椅子に座っていた。

「司令、外の討伐隊は半分ほどが片付きましたが残りは何処かに隠れたようです。まあこのトリカゴ内にいるのは分かっているので見つけるのも時間の問題ですが。」

「そんなものどうでいい。それよりも私の部屋にあったある本が持ち去られた。」

「本?ですか?それは大事な物だったとか?」

「大事な物……そうだな、大事な物だ。この国の歴史と真実が記された大事な本だ。」

外で騒いでいた連中など、司令官からすれば大して問題ではなかった。

それよりも、ベータと呼ばれる彼らにあの真実を知られた事だ。


「まだ見つからんのか?この本部に入り込んだネズミ共は。」

「はい。アンドロイドも使って捜索しておりますがなかなか見つからず。」

「急げ。私は本国に連絡をいれる。一度地球に戻らなければまずいことになるぞ。」

「地球にですか?資源の回収でも頼むのですか?」

「もはや今は資源どころではなくなった。奴らベータが、我らに牙を突き立てる事になるぞ。」

ベータという言葉が理解できず、副司令は首をひねる。

それもそのはず、強化人間の事を知っているのは総司令官ただ1人。

帝国の愚行などは知っているが、強化人間の事に関してはあまりに非人道的である為、総司令官以外には知らされていなかった。


「それにしても、何を思ってこの本部を襲ったのか……理解に苦しみますね。」

理解に苦しまないのは総司令官だけ。

ここで言うべきか悩むが、やはり教える訳にいかず1人悩む。

ベータが反旗を翻す理由は多々あるからだ。

彼らの怒りから逃れるには本国から船を出してもらい、一刻も早く地球へと帰還する必要があった。

「まあいい、お前達は捜索を続けろ。私は本国に連絡をする。」

「了解です。」

副司令に指示だけ与え、司令官は自室へと戻った。




「こちら、火星侵略先行軍総司令、ヴァイン・ノクティスです。応答願います。」

しばらく間をおくとノイズが聞こえ返答が聞こえてくる。


「こちら、シュラーヴリ帝国地球外通信室です。連絡は必要最小限とお伝えしておりましたが、何かありましたでしょうか?」

女の声がする。

いつも連絡をする際に聞こえてくる声だ。

確かこの女は爵位を持った女だったはず。

だから総司令官といえども敬語を使う。


「緊急事態が起きました。至急本国から輸送船を送っていただけませんか。」

「輸送船を送るには莫大なコストがかかります。理由を教えて頂きたく。」

「ベータに真実が漏れました。辛うじて抑えておりますが時間の問題かと。」

「ベータに真実が漏れた?それは確かに急を要しますね。分かりました、輸送船を手配します。」

「助かります、では通信を終わります。」


手短に通信を終わらせたのも、あまり長くは使えないからだった。

いくら技術が高くなったとはいえ、地球と火星の距離との通信をタイムラグほぼ0で行うのは難しい。

数分間が限界だった。

それを超えればタイムラグは酷くなり会話をするのが難しくなる。

だから司令官は手短に終わらせたのだった。


「ふう、なんとか輸送船を手配してくれるようだな。どれだけ急いでも数ヶ月はかかる……急いでくれ……。」

自室で独り言のように呟くその言葉は誰にも聞かれることはなかった。




隠れ潜むライル達は未だ動けずにいた。

アンドロイドがそこかしこに闊歩しており、出歩く事すらままならない。

民衆は、異様な出で立ちをしたアンドロイドを見て不審な顔をするが、ただそれだけだ。

確実に軍司令部の物だというのが明白であり、それに関わればろくな事にならないと知っているからだ。


「どうするべきか……このままここにいてもいつかは見つかる。リクリットは何処に居る。」

「分かりませんね……本部に潜入する前は一緒に居ましたがいつからか何処かに姿を消したようです。」

擬態のリクリットの隠れ家に行くことが出来ればなんとか安全を確保できると思ったが、今彼が何処に居るかは分からない。


ガロンさん達とも未だ合流は出来ておらず、目立った動きもない。

全員が上手く隠れているようだった。




――地球――


「レイナ第1皇女様がお見えになられています。」

「通せ。」

近衛兵がそう言うと低く渋みのある声で男は部屋に入れる許可を出す。

豪華絢爛な扉が開かれ1人の女性が入ってきた。

右目は青く、美しい出で立ちは皇族のあるべき姿を体現していた。


「お父様、レイナ・シュラーヴリただいま地球に帰還しました。」

「遅かったな。」

「衛星で少し休暇を取らせていただきましたので。」

「そうか、改めてよく無事に戻ったなレイナ。」

その男は厳しい顔つきを少し緩め、父親らしい表情を見せる。


「ルイはどうした?」

「彼女も父親の所に顔を見せに行っていますわ。」

「そうか。それで、どうだった火星は。」

少し苦い顔を見せたレイナはすぐに元の表情に戻ると口を開く。


「火星では友達が出来ました。彼ら、ベータは普通の人間です。どうか地球に帰らせてあげることはできないのですか?」

「……そうか。レイナすまない……それは私の一存ではどうにもできん。」

「何故ですか!お父様はこの国の皇帝!貴方が是とするならば誰も反対することはないでしょう!?」

レイナは怒りに満ちた表情で男に迫る。


「すまぬ。お前も知っての通り我が国はもはや属国。他国の権力者に賛成を貰わなければ何も出来んのだよ。」

皇帝と呼ばれたその男は少し俯き悲しそうな顔を見せた。


「レイナ、我が国の先祖の悪逆非道な行いはまだ帳消しになったわけではない。未だ償い続けなければならないのだよ。分かってくれ……。」

「……分かりました。ですがこれだけは言わせて頂きます。火星に居たベータ達、ライルやアスカ、他にも沢山。みんなとても良い人達でした。それをわかっていて下さい。」

「ベータにはとても申し訳ないと思っている。しかし今私が動けばまたこの国は虐げられる。もう過去の力は存在しないのだから。」


今地球の権力は無きに等しい帝国の皇帝は他国の傀儡に近しい。

自分の意志で何かを決める事など、出来なくなっていた。


「それで、レイナ。火星では正体がバレる事はなかったのだな?」

「はい、火星では偽名を使っておりましたから。レイン・クリストファーという過去に存在したアルファの名前を。」

ブックマーク、評価お願いいたします!

誤字脱字等あればご報告お願いします。


まだまだ続きます!やっと二章が終わりました。

それはそうと登場人物も割と増えてきたので、誰が誰か把握するのが大変です、、、


ここまで読んで頂きありがとうございました!では第三章でお会いしましょう!

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