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トリカゴの中で彼らは真実を知った②

「なんだこれ……。」

空いた口が塞がらないとこういう事だろう。

読んでいる途中から気分が悪くなった。

僕らは全員作られた人間?

最初に火星へと送り込まれた人達は全員殺された?

読んでいていい気分には到底なれない内容だった。


「ハハッ笑えるね。アタシ達は作られた人間なんだってさ。……ふざけるな!!!」

初めてザラさんが怒っているところを見てライル達は驚く。


「何だよ!遺伝子操作って!処分って何なんだよ!!何様のつもりだ!!!アタシ達は道具じゃない!!!今まで何のために戦ってきたのか……分からなくなっちゃうじゃないか……。」

誰も口を開かない。

ザラさんの言う通りだからだ。

ゼクトの言っていた意味がわかった。

人類の罪……これの事か。

地球にいる人達は神にでもなったつもりなのだろうか。


「胸糞悪い内容だな……。人間を作ってその駒で火星侵略だと?ふざけやがって……。」

「ゲームのつもりなんだろうぜ……狂ってやがる。」

シュラーヴリ帝国が一体何をしでかしたというのか。

火星に送られたのはシュラーヴリ帝国の者だけなのだろうか。

もっと詳しく知る必要がある。

そう思い、ライルは続きを捲った。

続きは少し毛色が変わっていた。



――ここからは未来の者達に送る――

これを読んでいる者へ。

今これを読んでいるということは、真実を知った時だろう。

しかし未だ謎が多いはずだ。

だからこそここに残しておく。


これは地球の話だ。

我らが祖国、シュラーヴリ帝国は過去に覇を唱えたことがある。

他国を滅ぼし地球を統一する為に。

これが我が国1つ目の罪。

今思えばその時の皇帝がそんな事をしなければ今の未来は無かったことだろう。

しかし覇を唱えるということは他国全てを敵に回すという事だ。

地球の半分を支配下においたであろう時、敵国は協力体制に入った。

悪の根源、シュラーヴリ帝国を打倒するために。

案の定、帝国は破れ当時の皇帝は処刑された。

そして他国に絶対服従を条件に国を残すことを許された。

いわば使い勝手のいい奴隷だ。これを読んでいる者からすれば滑稽だろう。

君達は我々科学者の手によって記憶を改竄されている。

だからこんな話は知らないはずだ。


属国と成り果てた我が国は、火星侵略を任される事になった。

それもそうだろう、自国の民を無為に死なせるわけにいかない。

ならば帝国を使えばいいじゃないかと、満場一致で決まったらしい。

もちろん反対することなど許されず、命令されるがまま遺伝子操作の実験を開始した。

これが帝国2つ目の罪。

アルファと呼ばれる人体実験の末に生まれた強化人間だ。

しかしそう上手く行くはずもなく、アーレス星人を打倒するに至らなかった。

月日は流れ新たな強化人間を生み出した。

それが君達の先祖に当たる、ベータだ。

生身でアーレス星人と戦えるなど、もはや人間兵器だ。

使い所のなくなったアルファは全て処分された。

処分という名の死を与えた。


そして3つ目の罪。

君達の先祖、ベータの記憶を改竄した。

こんな悪行が後世に渡って知られるわけにいかないからだ。

君達にはこの星が火星だなどという疑問は持たないようにした。

最後に4つ目の罪。

火星の資源を奪う為に、地球外生物の虐殺を選んだことだ。

これは我が国だけでなく人類の罪だ。

和平の道を選び共に繁栄する未来を選べば良かったのに、人類は根こそぎ奪う事を選んでしまった。


この星に送られた者達は正確には全てが帝国民ではなく、滅んだ国や帝国の味方に付いていた国の者達も混ざっている。


君達は何も知らないだろうからついでに書いておこう。

地球には何十億という人間が存在している。

もしも復讐を考えているのなら辞めておいたほうがいい。

どれだけ強かろうが数の暴力は脅威だ。

勝ち目はない。


実際にこの星で生まれた私は何も出来なかった。

祖父のように偉大な科学者にすらなれなかった。

だからこそこの本を残す。


軍司令部の幹部連中は全て、他国の言いなりだ。

この本は今までの歴史と真実を記している。

処分されることはないだろうが、厳重に保管することだろう。


いつかこの本をベータの子孫が見つけることを願う。


著者、ドワイト・ドルクスキー


そこで本は終わっていた。

もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。

地球の事、僕らの先祖の事、そして帝国の愚行。

何故覇を唱えたのか。

何故軍司令部が持つような技術を提供しなかったのか。

謎はまだ多いがあらかたの真実は知れた。

ゼクトの言っていた人類の罪というものがどういうものかも。


「ライル、貴方は復讐したいと思ったの?」

ずっと黙って読んでいたアスカが口を開く。


「いや、分からないな……。正直まだ実感がないというか。」

「ここに書かれていることは多分本当の事でしょう。私は憎いわ。ここにいる私達の事など知らぬふりをして平和を享受する地球の人達が。」

「アスカに同意見だな。俺も地球で呑気に過ごすカス共を駆逐してやりたい。」

アスカとアレン隊長は復讐をしたいと考えているようだった。

ただ、復讐は新たな火種を生むだけだ。


「アタシ達はただの駒か……馬鹿みたい、真面目に侵略者と戦うんだって訓練に明け暮れた日々はなんだったんだろうね。」

「復讐するなら俺も乗るぜ。」

ここにいる全員が復讐を望んでいる。


とりあえず今はゼクトの所へ行くのが先だ。

もしも地球にいる本当の敵を討つというのならば、アーレス星人の協力は不可欠だ。

僕らだけでどうにかできるほど甘くはないだろう。

そもそも軍司令部ですら手こずったのだ。

地球と戦うというのなら、それとは比較にならない相手になるだろう。


「ま、今は置いておけ。とりあえずこのトリカゴから脱出するのが先決だ。」

「はい。」

隊長の言うとおりだ。

今は何も考えないでおこう。

ここから逃げれなければ復讐なんてできたものではない。


脱出する為に、僕らは作戦会議を始めた。

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