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真実は思っていたより残酷で⑭

「協力者は死んだか……。」

最初の弾丸が腹部に命中してしまい、絶命してしまった男。

名前も知らず、ただ僕らに協力したばっかりにこんな事になるなんてとても残念な気持ちになる。


しっかりと弔ってやりたかったが今はそんな余裕はない。

彼の亡骸を壁際に寄せ、目的の部屋の前へと進む。


「扉は鍵がかかっているみたいだな。」

物理的な鍵ではなくアイオリス山で見たような電子鍵と呼ばれる類いの物だろう。


サウズの刃を扉の隙間にねじ込み強引に開ける。

ギシギシと音を立てて開き、中を覗くとシンプルな部屋だった。

あまり調度品等はおいておらず、机と椅子、そして本棚があるだけだった。


「探せ、急がなければ恐らくここに入ったことはバレているはずだ。」

アレン隊長の指示により各々部屋の中で散らばり目的の本を探す。


なぜ司令官はこの部屋にいないのか。

少し気になったが、多分指揮する部屋にいるのだろう。


部屋の外ではけたたましくサイレンの音が鳴り響いていた。

強引に部屋へ侵入した事で警報が作動したらしい。


「まずい!隊長!早くしてくれ!他の兵士がやって来たぞ!」

扉の前に張り付いて見張りをしていたロウさんから激が飛ぶ。

そちらに目線を移すと確かに遠くから複数人がこちらに向かって来ているのが見えた。


「外の連中はなーにしてんだか。もっと騒いで引き付けといてもらわないとアタシらがやばいじゃん。」

ザラさんは外で陽動を行う討伐隊の文句を垂れる。

そもそも戦力差がある以上長く引き付けるのは酷な話だろう。


ロウさんが少しでも時間を稼ぐ為、敵兵士に向かって変形した手首の銃口から弾丸を浴びせる。

しばらく部屋を物色していると、一冊の本を見つけた。

”地球との交信記録及び火星での生態観察”

オルザが見たという本は恐らくこれに違いない。


「隊長!!見つけました!多分この本です!!!」

「”地球との交信記録及び火星での生態観察”か。これで間違いはなさそうだ。」

「見つけた!?じゃあ早くズラかりましょう!もう長く持たねぇ!!」

つい本を捲って見たくなるが、今はそんな時ではないことを思い出し開きかけた本を閉じる。


「突破口は開くぜ!!!」

ロウさんはそう叫ぶと、両手両足が変形し4つの銃口が現れる。

凄まじい数の弾丸を放ち、最後にはロケット砲の砲弾も撃ちこんだ。

廊下の先は瓦礫と化し、辺りには煙が充満する。

その煙に紛れ僕らは来た道とは別の道を走った。


後ろから追いかけて来る様子がないところを見ると先程のロケット砲が効いたらしい。


「まずい、前方二体。恐らくアンドロイド。」

アスカが小さく呟くと、前方から光線が飛んできた。


「回避!!!!」

間一髪避けれたのは日頃の訓練のおかげだと思った。

先程まで自分がいた場所を見ると焼けただれ廊下の地面は抉れていた。

当たっていたら無事では済まなかったであろう威力に冷や汗が出る。


「ロウ、ザラは後方警戒。アスカ、来い!!!」

「「「了解!」」」

アレン隊長は自分以外で一番動きがいいアスカを指名し前方の二体を片付ける選択を取った。

残念ながら僕ではまだアスカに敵わない。

本当なら僕が守らなければならないはずなのに。


2人はジェットスラスタを起動し、狭い廊下を駆けた。

アンドロイドは無表情のまま、銃口を向ける。

連射で放たれたレーザー光線は2人を貫かんと迫るが、死と隣り合わせで戦ってきた者にとって直線で迫る脅威等避ける事は容易かった。

一発も当たることなく接近した2人はサウズで心臓を貫いた後首を切り落とす。

事切れたアンドロイドはその場で地に伏しピクリとも動かなくなった。


「ふん、所詮は機械か。この程度なら討伐隊でもなんとかなるだろ。」

アレン隊長はそう言うが、天才2人を基準にするのは辞めてほしいと僕は心の中で叫ぶ。

彼らだからこそ、精鋭中の精鋭だからこそ簡単に回避できるが、光速で飛来するレーザー光線を見て躱すなど常人の動きでは不可能だ。

ライルの事をさんざん化け物扱いする彼らだが、彼らもまた普通の人からすれば化け物だった。


「ここを出れば一度何処かに身を隠す。流石にこのまま逃げ切れるほど軍司令部は甘くはないだろう。」

アレン隊長の言う通り、想定していたよりも軍司令部の反撃は少ない。

もっと数で潰しに来るかと思っていたが、実際はそうでもなかった。

それとも僕らならアンドロイド二体で片が付くと思われていたのだろうか。


そんな僕らが外に出て見た光景は地獄だった。

目に映る場所、至る所に討伐隊と思わしき遺体が転がっていたからだ。

陽動をしていた彼らに一体何があったというのか。


軍司令部に潜入する前はあれほど騒がしかった喧噪も、今では嘘だったかのように静かだ。

「ちっ。やってくれたな……。」


そう、軍司令部は中に潜入した彼らよりも外の殲滅を第一にしたらしい。

討伐隊の遺体と共に転がっていたアンドロイドの数がそれを物語っていた。


数体ではなく軽く見ただけでも数十体のアンドロイドが事切れて横たわっている。

恐らく陽動をしていた討伐隊に襲い掛かったアンドロイドは100体を超えていただろう。

本部の中に居た時、ここは戦場だったことだろうことは想像に難くない。



アレンやライル達は近くの空き家となった場所に隠れ、ほとぼりが冷めるのを待つ事に。

本来の作戦であれば、外に出てすぐ信号弾を放ちガロンらに電磁障壁への攻撃を開始してもらう予定だったが、現状それは難しいと判断したアレンは身を隠す選択をした。

陽動の討伐隊は半壊、もしくは壊滅状態だろう。


「機工隊は多分だが、ガロン殿と共にいるだろう。俺達は軍司令部の奴らに見つからず彼らと合流しなければならない。」

「彼らに何も伝えていませんが、どうやってサインを送りますか?」

「大体想像がついてるだろ。あっちにはガロン殿もいる。新兵のリッツやリコだけじゃないからな。」

「討伐隊も無事ならいいけどね~。」

「あっちにはゼノンがいる。テッドと共に動いているはずだ。そう簡単にやられる奴ではないことくらい良く知っているだろ。」


軍司令部へと攻撃を仕掛けたその日は、身を隠したまま夜を明かす事となった。

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