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真実は思っていたより残酷で⑬

「一体何の騒ぎだ!」

軍司令部の総司令官はずっと鳴り止まぬ爆発音や喧騒に苛立っていた。

寝ていた所を叩き起こされ、部下に連れられて各所に設置された隠しカメラの映像が壁一面に映し出される部屋へと案内された司令官は何が起きているか分からなかった。


「司令、壁外調査の部隊が反旗を翻した模様です。」

「何だと?」

副司令にそう言われ、映像を注視しているとそこかしこにジェットスラスタで飛び回る討伐隊と思わしき人影が映る。

しかし司令官が討伐隊は武装解除させ部下に監視させていたはずだと憤るが、殲滅隊に突破され今では200人を超える兵士が街中で暴れまわっていると副司令に言われると、イライラではなく顔色が曇った。


「馬鹿な!何故こんな事になった!」

「分かりません。何とかしなければこのままだとここ軍司令部本部にまで火の粉が降りかかるかと。」

「部下を総動員させよ!」

総司令官は苛立ちよりも焦りが目立つ表情をしているが、何をそこまで恐れる必要があるのかと副司令は訝しむ。


「司令、お言葉ですが所詮は壁外調査の部隊。我ら直属の近衛部隊を使えばすぐに制圧できます。」

「馬鹿か貴様は!」

総司令官はそう怒るが、そんな意見が出るのも仕方がなかった。

彼ら軍司令部の者からすれば、討伐隊や殲滅隊はあくまで手足のように動く都合のいい兵士の集まり。

だからこそ近衛部隊で制圧出来る程度と考えている。


しかし総司令官は違う。

彼らの本質を。

彼らの脅威を。

彼らの力を。

恐れていた。


「アンドロイド共も全て起動しろ!この本部に1人たりとも入れるな!侵入者排除のシステムは全て起動するんだ!」

司令官の焦り方と迫力は副司令から見れば気が触れたのではと思うほどであった。


「そこまでするのですか?」

「死にたくなければ言う通りにしろ!これは命令だ!何も聞くな!」

そこまで言うと総司令官は黙り込む。


その態度に少し苛立ったが命令を無視する訳にもいかず、副司令は命令を遂行する。


「何をそんなに焦る必要があるのか……まあいい、全員聞いていたな?完全迎撃システム起動。侵入者は必ず排除せよ。」


完全迎撃システム。

軍司令部本部を守る最後の砦。

万が一侵略者に壁を突破されても本部だけは守りきる最大の防衛機構。

その為に作られた完全自動型のシステム。


各所に設置された自動機銃は起動した事を示すランプが灯る。

侵入者を感知する為の赤外線レーザー光が本部内の至る所で斉射される。

対侵略者用の炸裂式弾頭が装填された自動砲台までも起動した所を見た軍司令部の兵士達は何事かと戸惑う。

今まで一度たりとも起動される事がなかった対反乱鎮圧用のアンドロイドまで全て起動しており、軍司令部発足以来の大事である事が見て取れた。




「おいおい、何かエライ事になってんな……。」

侵入した僕らを阻んだのは赤い光線が張り巡らされた廊下であった。

どういう物かは良く分からないが触れると確実にまずいであろうことは分かる。


「くっ、まさか完全迎撃システムを起動させるとは……よほど貴方方に見られたくない物があるようですね。」

協力してくれている軍司令部の者も苦い顔付きを見せる。


「私も恐らく敵と認識されていそうですね……もう軍司令部に戻る事は出来なさそうです。」

「……すまないな。我々に協力したばかりに。」

「いえ、もうこうなった以上私も腹を括りましょう。家族がいるので無謀な事はしたくないと思って軍司令部から抜ける事は控えていたのですが……。」

協力した方は家族の為に軍司令部で働いていたようだった。

不審な事は多々あったが、それでも口に出せば軍司令部から追い出されるか運が悪ければ口封じに殺されると踏んでずっと軍司令部に在籍していたらしい。


「付いて来てください、この壁を押すとほら、裏道を通っていけるんです。我々内部の者が動けるように作られた隠し通路ですよ。」

その男がおもむろに近くの壁を押すと、壁は反転し細い裏道が姿を現した。

もう何が何やら、この本部は忍者屋敷のようだった。


裏道を抜けると赤い光線が張り巡らされていないエリアに出た。

ここからは内部の者と出会う可能性が高そうだと、全員気を引き締める。


「司令官の私室に行くのですよね?それならこちらです。」

辺りを警戒しながら男に着いて行く。



「この廊下を曲がれば突き当りにあります。行きましょう。」

廊下を曲がると白い長く続く廊下が司令官の私室まで伸びている。

もしもこんな所で敵と鉢合わせすればたまったもんじゃないだろう。


「おかしいな……いつもなら私室の前にアンドロイドが控えているはずなのに。」

男は小さく呟き、少しずつ歩を進める。

僕らもそれにならってゆっくりと部屋に近づいていく。


ウィーン


機械音らしきものが聞こえた。

何事かと突き当たりの部屋に目を向けると、扉の前に銃らしき物が現れていた。

「何だあれは?」


僕らは見た事もないそれを注視し戸惑っていたが、明らかに動揺した男が汗を一滴垂らす。


「う、動かないでくださいよ皆さん……あれは動体感知型自動機銃Zー01です……。」

「ジーゼロワン?何だって?」

小さく呟いたせいか良く聞こえず、ロウさんが一歩踏み出してしまった。


「あっ!」


そんな声が聞こえた気がする。

気がすると言ったのは、その声に被せて銃声が鳴り響いたからだった。


協力者の男はゆっくりと前のめりに倒れ込んだ。

僕らは何が起こったか分からず、ただその様を呆然と見ている事しか出来なかった。


「な、何が起きたっての!?」

ザラさんが叫び、全員正気を取り戻す。


倒れ込んだ男の腹辺りからじわりと血が広がっていく。

それを見てようやく理解した。

あの機銃とやらに撃たれたのだと。


「くそ!!ロウ!!!!」

「了解!」

全身機械のロウさんが前に躍り出て、両手を機銃に向ける。

僕らは耳を塞いでその後ろに体を隠した。


それが功を成したのか、機銃から放たれる銃弾の雨はロウさんが防いでくれた。

お返しと言わんばかりにロウさんも銃弾を複数撃ち返し、次第に音が鳴りやんだ。


そっとロウさんの体から身を乗り出し前を確認すると壊れてバラバラになった機銃があった。

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