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真実は思っていたより残酷で⑫

外が騒がしい。

夜中にしては騒がしすぎると、テッドは目を覚ました。

窓の外を見ると至る所で煙が上がっている。

何者かの襲撃かと思われたが、どうも侵略者の攻撃ではなさそうだ。


監視の兵士が24時間ずっと部屋の外に待機しているせいで詳細が分からずもどかしい思いをするが、もしかすると助けが来たかもしれないと、外出用の服に着替えておくことにした。


一応部屋の外にいる兵士に何事か確認したが、教えてくれるはずもなくただ変な気は起こすなと注意勧告を受けただけであった。




「確認してきたぜ。」

ロウさんが先行して討伐隊の兵舎を見てきてくれたおかげで敵の人数が分かった。

兵舎入口に4人。

テッド大隊長の部屋は3階だ。恐らくその部屋の前にもいるだろうと予想しても全部で10人もいない。


「問題はないな、全員遅れるなよ。」

アレン隊長が先陣を切り、僕らは続く。

勝負はあっという間だった。

先程までは不殺の戦いを強いられていたが、今回は違う。

殺す為に戦ったのだ。

そうなればもはや軍司令部の兵士など殲滅隊の敵ではない。

アレン隊長と共に突撃してから10秒後には討伐隊兵舎の前に事切れた兵士の遺体が四つ転がった。


「な、貴様ら!!!なんのつもッ」

兵舎から飛び出てきた兵士の言葉を遮るように、アレン隊長のサウズが喉を切り裂いた。

血飛沫を上げ、首を押さえながら倒れていく兵士。

目の前で人が死んでいく様を見るのは初めてではないが、ライルは何とも言えない気持ちになる。

なぜ同じ人間同士で争わなければならないのか。

彼ら、軍司令部の人間と僕らと違う事なんて真実を知っているか知らないかの違いだけなのに。

そう思うと少し可哀そうに思えてならなかった。



「これで討伐隊兵舎を守っていた兵士は全て片付きました。」

念の為とロウさんが兵舎に入り残存兵がいないか確認したあと、戻ってきてアレン隊長にそう告げた。


解放された討伐隊の人たちは僕らにとても感謝していた。

それと同時に軍司令部への反発は大きく、共に戦う事を勧めると二つ返事で返ってくる程であった。



「テッド、無事だったようだな。」

「そちらこそ。アレン、助かったぞ。」

「礼を言うにはまだ早いぞ、俺達の目的は軍司令部の中だ。」

簡単に掻い摘んで説明だけしたが、何も疑問に思わずテッド大隊長含む全ての討伐隊が協力してくれる運びとなった。

中に忍び込むのは数人だが正面から攻撃を仕掛けてもらう必要があり、それを討伐隊に任せる事に。

正直命の危険は少なからずあるが、それよりも軍司令部に反撃したいという気持ちが大きいらしい。


「陽動だろう?我々討伐隊がその任務受け持った。アレン、気を付けろよ。」

「誰にモノを言ってやがる。お前こそ老いぼれたせいで満足に戦えなかったとか抜かすなよ。」

テッド大隊長はここにいる誰よりも年上のはずだが、アレン隊長は流石と言うべきか誰に対しても同じ態度だった。


軍司令部に侵入する前にまずはリコの班と合流する必要があり、事前に取り決められていたポイントまで急ぐ。

リコの方が早かったようで、僕らが到着した時には既に待っていた。


「おお!!ライル!!!無事だったんだな!」

「リッツこそ。」

リッツが笑顔で駆け寄ってくる。

お互いに固い握手を交わすと、アレン隊長が僕の横に並んだ。


「リッツ・グラストンだな。協力感謝する。」

「い、いえ!!お役に立てたようで良かったです!!」

僕の時に見せた顔ではなく、とても固い表情だ。

やっぱり目標にしている人物と言葉を交わせば皆こうなるのだろうか。

隊長はオルザにも潜入任務の時の礼をする。

ピンピンしているところを見ると、少し安心した。



「ほう、なかなか良さそうな人材が揃っているじゃないか。」

リッツの後ろから渋い男の声がする。

皆の視線がそちらに向くと、僕とアスカ以外はとんでもない者を見たというような表情を見せる。


「まさか本当だったとはな。ガロン殿、俺が殲滅隊隊長のアレンです。よろしく頼みます。」

「ふむ、いい顔付きじゃないか。元遊撃隊副長ガロンだ。俺は軍属から抜けた身。そんなに畏まる必要はねぇ。」

「そうは言ってもこればかりは勘弁して頂きたい。貴方は我々のような兵士の中では英雄の次に有名で憧れている者も多いのです。」

珍しくアレン隊長が敬語を使っている。

誰もが憧れそして目標にしていた遊撃隊。

その副長が今目の前にいる事が信じられないのかザラさんは自分の頬をつねっていた。


「ライルきゅん、なんでそんな平然としてんの?」

「まあ近所に住む八百屋のおじさんだったので。」

元遊撃隊の人間が八百屋のおじさんをやっていた事を知ると二度びっくりしたのか、ザラさんはぽけーっと口を開けてしまった。


「それで、後は計画通りに動くってわけだろ?リコから聞いたぞ。俺達は逃げる際の足掛かりを作ればいいんだろ?」

「そうです、合図をするので電磁障壁に攻撃を加えて頂きたく。」

「任せておけ。お前達こそ軍司令部に入り込むんだ、俺の知り合いを連れて行け。」

そう言って後ろに控えていた男をアレン隊長の前へと押しやる。


「どうも、中に入る際に案内をさせて頂きます。ただし戦闘には参加出来ませんので。」

戦闘に参加出来ないとはどういうことだろうか?

アレン隊長も同じ感想を抱いたのか、その男に質問をする。


「戦闘に参加出来ない理由とは?」

「私は一応軍司令部で勤務しています。ですので脅されたという体で今回は協力させて頂きます。」

多分ガロンさんが無理を言ったのだろう。


「こう言ってはなんだが、協力するだけでもリスクは伴うぞ?」

「十分承知しております。ただ、私は軍司令部に忠誠を誓っている訳ではありませんから。」



ガロンさんの知り合いに協力してもらい、軍司令部の建物の詳細を教えてもらう。

荷物の搬入に使う入口があるらしく、そこからなら入り込めるそうだ。

ただし、見張りは必ずいるそうでそこは必ず突破しなければならないと。


ガロンさん達と別れ、アレン隊長を筆頭に精鋭と協力者を伴い建物へと近付く。

近くの物陰に身を隠し、搬入口を観察すると確かに見張りが3人ほどいる。

ロウさんがその3人に腕を向けると、手が変形し手首の当たりから銃口が覗く。

パシュッと、小さい音だけが3度聞こえたかと思うと、見張りの兵士は全員地に伏していた。

サイレンサー付きの銃だったらしい。


「よし、行くぞ。」


そうして僕らは軍司令部本部という名の伏魔殿へと足を踏み入れた。

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