真実は思っていたより残酷で⑪
15分ほどかけて今までの話を全て伝えると、ウィード指揮官は顔を手で覆ってしまった。
「それは全て本当の話ですか?」
「ああ、残念ながらな。お前もその目で見ただろリーののっぺらぼう姿を。」
話す内容が本物だという証拠にリーを連れてきていたのだ。
いきなり目の前で変形しだした時は腰が抜けかけていたが。
「では私の小隊と機工隊には伝えておきましょう。」
「頼む、俺は殲滅隊第三班に話をしておく。」
ウィード指揮官もやはり軍司令部の秘密主義にはうんざりしていたようだ。
前哨基地にいる全ての者に話をした後、ウィード指揮官と僕らは一緒に立ち入り禁止の扉の前に立っていた。
前哨基地を守る電磁障壁のエネルギー源がこの部屋にあると言われており、軍司令部直属の部下以外は入れないとなっていたが、今ではもうそんなルールも守る必要はない。
「やるぞ。」
アレン隊長の一刀により扉の鍵は破壊される。
中に入ると案の定、アルマイト鉱石が置かれていた。
青白く発光しており、その光が天井の穴を突き抜けて電磁障壁を形作っているようだった。
大きさは人間とほとんどサイズは変わらない。
「これがアルマイト鉱石か。凄いな、たったこの程度の石一つでここまで巨大な障壁を長い間維持できるんだからな。」
みな息を飲むほどに美しい光に目を奪われる。
これだけ凄まじいエネルギーを生む石だとしれば、地球に住む人間が奪いたくなるのも分かる気がする。
結局話を聞いて、軍司令部に付く判断をした者は誰一人いなかった。
現在、前哨基地には僕らも含めて約50名ほどがいる。しかしたった50人だ。
これだけの戦力で軍司令部と真っ向からぶつかるのはリスクしかない。
ガロンさんの内部にいるという味方が何人いるかもわからないが、まずはトリカゴ内で囚われている討伐隊の開放が優先だろうという結論に至った。
討伐隊全てが加われば、一気に250名を超える戦力になる。
それだけあれば、なんとか戦えるかもしれない。
軍司令部にどれだけの機械人形があるか知らないが、流石に250体も用意はないだろう。
問題はいつトリカゴを目指すか、だった。
出来るだけ早い方がいいと言う者と時間をおいてからの方が戦いやすいと言う者で別れてしまう。
ただ、討伐隊が満足に食事等が与えられているか分からない以上急がなければならない。
「いいか、お前ら。第一に討伐隊の開放。そしてその後攪乱を頼む。その間に殲滅隊の中でも精鋭だけで軍司令部本部へと潜入する。目標を奪取すればすぐに脱出。食糧班は大量の食糧を車両に積み込め。だが家族は街にいる者も多いだろう。その者達は前哨基地へと連れ帰りはしない。そもそも軍司令部も一般市民には手を出さないはずだ。民がいなくては国が成り立たないからな。」
「私含めた討伐隊第一小隊の半分がこの前哨基地に残る。彼らのいない間前哨基地を守るのはたった数名。何もない事を祈るがもし万が一軍司令部からの攻撃があれば、我々でここは死守する!」
「夜のうちに行動開始するぞ、今これより準備に取り掛かれ!!!」
「「「了解!!!!」」」
僕とアスカは潜入担当、リコはガロンさんと合流し電磁障壁に対して攻撃を加えてもらう事に。
前哨基地に帰るタイミングで電磁障壁が展開されれば閉じ込められてしまう。
しかし攻撃をし続ければいずれエネルギーが尽き電磁障壁は消える。
元々ゼクトの襲撃により、電磁障壁はかなりエネルギーを消耗している為その作戦が可能となった。
本来であれば攻撃をし続けた程度でエネルギーが枯渇することはない。
図らずともゼクトに感謝することになった。
夜も深まり、哨戒班と思われる兵士が壁の上で見張りをしている。
しかしここ最近侵略者の姿を見ることがめっきり減ったせいか兵士達のやる気はなさそうだった。
見張りとして立ってはいるが真面目に務めを果たしているかと問われればそうでない事は見て分かる。
トリカゴで守られていた僕らがトリカゴに阻まれる。
そんな今の状況は面白くない。
しかし今や愚痴っていられる状況ではない。
意を決し信号弾を星の海へと放った。
それを合図に各所から同じく信号弾が放たれる。
まるで、花火が上がるかのように色とりどりの信号弾は薄っすらと空に光を灯した。
実はこれも作戦の1つだ。
トリカゴから脱出する際は強引に電磁障壁を破るつもりではあるが、入る時も同じ手段を取るのは悪手。
外を照らす複数の信号弾を見れば、哨戒の兵士達は嫌でも確認しなければならない。
近付く危険をより早く察知する役目を果たすために。
その際に電磁障壁は一時的に解除される。
そこを僕らが突入する、といった流れだ。
信号弾を放ってからしばらくすると青白い電磁障壁は解除されたようで少しずつ薄くなりやがて消えた。
「今だ!!全員!!!作戦開始ぃぃぃ!!!」
アレン隊長の号令で次々とジェットスラスタでトリカゴへと接近する。
まるで、矢の雨が降るかのように。
「な、なんだ!?」
「何かが来るぞ!!」
「全員戦闘準備!!」
哨戒の兵士達も僕らに気付いたようで、各々サウズを起動し始める。
僕らには1つの枷が科せられている。
それは、軍司令部の者以外は絶対に殺してはならない、だった。
哨戒の兵士達も僕らも同じ被害者だ。
何も知らず戦わされているのだ。
そんな同志達を殺すわけにはいかない。
それがアレン隊長の命令であった。
殺傷性の高い武器で、殺すことを避けて戦うことは至難の技と言われるが、そこは殲滅隊の出番だ。
相手の兵士が構えたサウズのみを狙って剣を振り下ろし、叩き落とす。
離脱する際に背中に背負ったガスタンクに傷を付ければもうその兵士は追ってこられない。
それを可能とするのは殲滅隊だけであった。
「くっ!!何者だ!お前達は!」
「悪いな、寝といてくれや。」
ロウさんに首の後ろを叩かれた兵士はそのまま地面に倒れる。
上手く気絶させたらしい。
「兵士達は片付けた。後に続け!!」
討伐隊と機工隊は陽動の為街の各所へと散らばって行く。
僕らの目標はまず討伐隊の兵舎だ。
討伐隊の兵舎を守るのは軍司令部の者。
つまり、隊長から殺傷が許可されている者達であった。
ブックマーク、評価お願いいたします!
誤字脱字等あればご報告お願いします。