真実は思っていたより残酷で⑩
「ライルーーーーー!!!アスカーーーー!!」
遠くからリコの声が聞こえてきた。
懐かしい友の声を聞き少し嬉しそうな顔を見せるアスカ。
ただ僕らの周囲は剣呑な雰囲気が漂っている。
皆がサウズを起動し、いつでも飛び掛かれるよう構えているからだ。
「とうちゃぁぁぁく!!!しんどー!疲れたー!」
「あ、ああ。久しぶりだなリコ。」
「ほんとにね!アスカも元気そうで良かったよ!」
「ふふ、リコも変わらないわね。」
しばし久しぶりの再会に頬を緩める。
しかしそれも束の間、リコはすぐにキリっとした顔つきになりアレン隊長に近づいていく。
「お、おいリコ!!」
止めてもリコは歩く足を止めない。
誰もがやはりそうなのかと、サウズをリコに向ける。
「アレン隊長!私は討伐隊第九小隊所属、リコ・グラストンです!伝達がある為私一人で来ました!」
「ほう、続けろ。」
リコとは思えない真面目な顔付きでアレン隊長に向かって話し始めた。
「現在トリカゴ内では討伐隊及びテッド大隊長が拘束され身動きが取れなくなっております。」
「何だと!?」
やはりトリカゴ内で何かあったようだ。
「それとアレン隊長はご存じとの事を聞いていますので続きを。殲滅隊所属オルザ・ル・ルインが潜入成功し情報を奪取。しかし戦闘にて負傷。それを察したテッド大隊長からの信号弾を見て私と兄のリッツが軍司令部へと潜入。そこでオルザと出会い手当をし3人で逃げ隠れました。現在匿ってくれている人物は元遊撃隊副長ガロン・バルムンクです。」
「ま、待て待て待て!!!情報が多い!!オルザが負傷!?それにガロンだと!?」
誰もが聞いていて混乱していた。
そもそもオルザの話はここではアレン隊長、ゼノン副長、僕らの同期生しか知らない事だ。
「リコ!もっと詳しく説明してくれないか!?」
アリアがリコに詰め寄る。
「アリア、今は隊長への報告中だよ。一介の兵士が割り入っていいタイミングじゃない。」
「ぐっ……確かに……。」
リコから正論が飛び出し、目を見開いたアリアはすごすご下がった。
「リコ・グラストン。もっと詳細に報告を。全員サウズは戻せ。こいつは敵ではない。」
「よろしいのですか?隊長。」
「そもそも敵なら今の情報を俺達に伝える事はしない。」
それもそうかとゼノン副長もサウズをしまう。
よく話を聞くと、どうやらオルザの見た地球との交信記録と書かれた本は僕らの求める本に間違いなさそうだった。
このままだと殲滅隊も拘束されると予想したガロンさんがリコをここに寄こしたらしい。
それにリコが軍司令部で見てきた情報はあまりにも突拍子のないものばかりだった。
見たこともない兵器に一瞬で瀕死の傷が治る薬。
そして命の宿らない機械でできた兵士。
どれもアイオリス山で見た高度な技術が使われているであろう代物だった。
「それで、今帰るとまずいっていうけど僕らも帰らない訳にいかないんだ。」
アイオリス山であった死神の話をすると、BBが死んだあたりで悲しそうな顔を見せた。
どちらに向かっても危険しかなく、どうするべきかと悩む。
するとリーが前に出て案を出した。
「ではワタクシの隠れ家を使いましょう。」
「隠れ家?」
「ええ。皆さんも知っての通りワタクシはアーレス星人。そして10年間も潜んでいたのです。魔導隊の隊長になった後もアイオリス山と連絡を取る必要がありましたのでね、地下に拠点を築いていたのですよ。」
「そこでは、20人も滞在できるのか?」
「数人が限界です。」
また新たな問題に行き詰まる。
どうしたものかと考えていると今度はゼノン副長が名案を出した。
「じゃあ前哨基地を我々の拠点にしちまいましょうか。」
「そこにいる他の隊の者達はどうする。」
「知ってもらいましょう。真実を。そして軍司令部に付くか僕らに付くか本人に決めさせたらいいでしょう。」
「ふむ、それしかないか。他に何か案がある者は?」
誰も発言しない。
もうそれしか方法がないからだった。
「では進路を前哨基地に向ける。リコ、お前はどうする、着いてくるか?」
「合流したら戻ってこないって伝えてあるのでこのまま着いていきます!」
殲滅隊第一班第二班そしてリコ、リーを含めた僕らは前哨基地へと向かう事となった。
道すがらリコと話すことに。
「リコに教えてもらってよかったよ、もし何も知らず帰ってたら何も出来ず動けなくなっていた所だ。」
「ふっふーん。リコに感謝しなさい!」
「それよりオルザが無事でホッとしたわ。」
「でもリコ達が見つけてなかったら死んでても可笑しくなかったよ!」
リコの笑顔を見るとこっちまで笑顔になれる、不思議だ。
笑ってする話ではないのだが、それでもつい笑ってしまう。
話に花を咲かせていると前哨基地が見えてきた。
近づくと門が開く。
車両ごと基地内へと入り、アレン隊長はすぐに前哨基地の指揮官を探す。
「おい、ここの指揮官は何処にいる?」
その辺にいた兵士に聞くと、司令塔と呼ばれるとこにいるとの事。
基地内で一番高い建物となっている。
アレン隊長、僕、アスカ、リー、リコの5人で指揮官に会う事に。
「これはアレン隊長、お久しぶりです。」
部屋に入ると指揮官がアレン隊長と握手する。
ここの指揮官を任されているのは討伐隊第一小隊隊長、ウィード・クライン。
戦闘能力は殲滅隊に劣らないほど。
だからこそ前哨基地を任されている。
「ウィード久しぶりの再会だが、大事な話がある。」
「それは後ろにいる方達も関係する話ですね?」
ウィード指揮官は後ろに控えている僕らに目を向けそう言う。
「そういう事だ。」
15分ほどかけて今までの話を全て伝えると、ウィード指揮官は顔を手で覆ってしまった。
「それは全て本当の話ですか?」
「ああ、残念ながらな。お前もその目で見ただろリーののっぺらぼうになった姿を。」
話す内容が本物だという証拠にリーを連れてきていたのだ。
いきなり目の前で変形しだした時は腰が抜けかけていたが。
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