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真実は思っていたより残酷で⑤

みんなが滞在する部屋まであと少しといったところで、またも別の特殊個体が僕の前に姿を現した。


「あん?なんで人間がこんな所うろついてやがる、ってニアもいるじゃねぇか。」

「お、ガルムじゃん。何してんの?」

「俺が聞いたんだろうがそれ!先に答えろや!俺はブラブラしてただけだ。」

「ほお、ブラブラと。ふっふ、人間がどんな奴か見に来たんでしょー?隠さなくていいじゃん!ねーライル。」


現れたのは赤い鬼だった。

言葉遣いは悪いが、なんだか悪そうなやつには見えない。


「ライルです。」

「お?お前がライルか。なんでニアと一緒にいんだよ。こいつ俺なんかよりよっぽど化け物だろ見た目が。」

あああ、思っても口に出してはいけないことを……。


「ああん!?ウチはプリチーだろうがよー!ライルだって可愛いって言ってたもんねー!はーあこれだから赤い木偶の坊は。」

「なんだと!?やんのかてめぇ!!!」

「お、落ち着きましょう……僕は鬼の姿、カッコいいと思いますが。」

なんだか雲行きが怪しくなってきたので、とりあえず目の前の赤鬼の見た目を褒めておく。

まあ実際、鬼の姿はカッコいいと思う。


「お、なんだおめぇ分かるやつだな。ま、ゼクトが気に入ってるだけはあるってことか。俺は赤鬼のガルムだ。」

「よろしくしなくていいよライル。粗暴で雑。力だけはあるから厄介なんだよねー。」

「ニア、てめぇは何か言わねぇと気が済まねぇのか?」

お互い言葉遣いが荒くはなるが、そんなに仲が悪いようには見えない。


「まあいい、ちょろっと人間を見ておきたかっただけだ。あばよライル。」

そのまま来た道を戻ろうとしたガルムの足は止まった。

前方に何かいる?


「エイレン……こんな所に何しに来やがった……。」

「うわ、最悪~。ライルはウチの後ろにいなよ?」

黒いローブに骸骨の顔。

いきなり音もなく現れたこいつが死神のエイレンか。


「私はただうろついていただけだ。」

「ああ?こんな何もない所をか?ここには何もねぇ、あるとすれば人間共を収容してる部屋があるだけだ。嘘つくならもっとマシな嘘をついたらどうだ?」

「そのニアの後ろにいる人間。私の弟は誰が殺した?」

弟?

死神のエイレンとは初対面だ。

奴の弟なんて知るわけがない。


「ライル、無視していいよ。」

「あの、ニアさん。あいつの弟って誰の事を言ってるんですか?」

「愚者のトール。お前は知っているはずだ。」


エイレンの口から出てきた名前は以前ゼクトから聞いた名だった。

確か前哨基地に援軍として駆け付けた巨大な特殊個体だ。


「トールは頭悪いから殺されただけでしょ。あれだけゼクトが前哨基地は放棄するって言ったのに無駄に戦うから。」

「無駄ではない。人間共に好きにさせるつもりか?この火星で。我らの故郷で。」

「昔の話じゃん。今のこの子達もいわば被害者ってやつだよ。何も知らずに戦っていたんだから。」

「知らなかったでは済まされん。現に弟のトールは人間に殺された。答えろ人間、誰が殺した。」

エイレンからは痛いほど殺意が伝わってくる。


「僕らは何も知らずに戦っていました。だから襲ってくる特殊個体と殺し合いをしました。僕ら仲間も死んでいます。」

「黙れ。貴様ら人間がいくら死のうと関係ない。答えろ、さもなくば……」

「さもなくばなんだ?てめぇがその鎌を構えた瞬間俺がてめぇをぶちのめす事になるぜ?」

僕を隠すようにガルムが立ち塞がった。


「ガルム、貴様も人間に絆されたか。」

「いいや?ただお前は前から気に食わねぇんでな。ここで殺しておいてもいいだろ?異常者エイレンさんよ。」

「もちろんウチも援護するから、やけどで済めばいいけどねぇ~?」


ガルムとニアの二体の特殊個体を相手にするのはまずいと思ったのか、殺意を散らしたエイレン。

死神のエイレンは見た目というか、確かに強そうな気配はする。

しかし、僕の目の前にいる赤鬼のガルムも同じく強者のオーラがある。

お互いほとんど互角の強さではなかろうか。

そこに加えてニアさんも戦うとなればエイレンが負けることは必至。


「貴方とは相いれなさそうだけど、答えますよ。愚者のトールを殺したのはアレン隊長とゼノン副長、人間の中でも特に戦闘能力の高い2人です。貴方でも苦戦を強いられる相手です。」

「アレンにゼノン……覚えたぞその名前。ククク私が苦戦を強いられる?人間に?身の程を弁えろ下等生物が!!!!」

「ちっ、やる気かあいつ。」

爆発的に殺意が伝わってきたが、すぐに収まる。

やはりここで戦う事は得策ではないとふんでいるようだ。


「いずれ、貴様も殺すがその2人に伝えろ。お前達は何があろうと私が殺すと。」

それだけ言うと、霧のように消え目の前からいなくなった。


「面倒な奴に目を付けられたもんだなライル。あいつは俺らアーレス星人の中でも異端だ。殺すことに愉悦を感じるゴミカス野郎だからな。気を付けておけ。万が一戦闘になりそうなら俺かゼクトの所まで走れ。あいつと互角にやり合えるやつなんてそんくらいしかいねぇからな。」

「そうだね~ウチのとこに駆け付けられても流石にエイレンには勝てないかな~。ま、ライルも一緒に戦うってんならなんとかなるかもだけど。」

「あ、ありがとうございます。」


ガルムも意外と優しいらしい。

いざとなったら助けてくれるそうだ。

ニアさんは強そうに見えるがそうでもないのだろうか。


「ウチはほら、レディでしょ?だから戦うのこわーい。」

嘘っぽいな。

多分この人も化け物らしい戦闘能力がありそうだ。

そんな話をしながら歩いているといつの間にか目的地の前に到着していた。


「あっ!ついたよ!この部屋でしょ?さあ入ろうか!」

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