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真実は思っていたより残酷で④

廊下にでると長くだだっ広い通路が続いていた。

横に入る廊下も複数あり、適当に動けば迷ってしまいそうだ。


「ライル、怖くないの?」

「怖くないって言ったら嘘になるけど少なくとも全部が全部僕らに敵対してるわけじゃないんだからさ、まあマシかな。」

「そう、私は怖いわ。あんな話を聞かされたばかりよ?私なら復讐する。」


確かに、あの話を聞かされたらそう思うのも無理はない。

僕だってゼクトの立場なら許さなかっただろう。

ゼクトのような心の広い者なんて人間にはいない、と思う。


しばらく歩くと微かにタバコの臭いが漂ってきた。

少し先に右に入る廊下が見える。

多分あそこを曲がればすぐだ。

そう思い、歩く足を早めた。



「どーーーーーーん!!!!!!」

曲がり角を曲がろうとしたその時、目の前から青い化け物が大声を出しながら突然現れたのだ。


「うわぁぁああああああ!!!!!!」

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

廊下にマリスの素っ頓狂な声とアスカの悲鳴が響き渡る。

アスカが驚く様を初めて見たライルは二度びっくりさせられる。


「な、な、なんなんだ!?」

アスカは目を手で覆い、座り込んでいる。

後ずさり、目の前に現れた化け物をよく観察する。

もしかするとゼクトのような特殊個体かもしれない。

見た目で判断するのはよくないことだ。


背丈は2メートル程で肌は青く顔は人間の女性で下半身は六本足の昆虫。

しっかり化け物だった。


「うわぁぁぁぁ!!!化け物ぉぉぉお!!!!」

化け物だと再認識した僕はまた叫んでしまった。


「ちょっとー!レディに失礼ねぇ。ウチが化け物だなんてこーんなプリチーな顔をしてるのに!!」

すると、目の前の化け物から似つかない声が聞こえてきた。

可愛らしい女性の声だ。

よく見ると確かに可愛い顔をしている。

でも肌は青いし下半身は昆虫。

頭がおかしくなりそうだった。



「君達が今日来たっていう人間ね?いやぁ成功成功!今日は3人も脅かしちゃったなー!たのしー!」

3人?ここには2人しかいない。


「あっ!!その……僕らの前に男の人が来ませんでしたか……?」

「そうそう!その人はここにいるよー。」


青い化け物が足をどかすとそこにはゼノン副長が気絶して倒れていた。


「いやぁまさか気絶するなんて思わなくてさーごめんごめーん!」

「いえ……あの殺してません……よね?」

どうしても聞かずにはいられなかった。


「失礼ねー!ウチはどっちかというと好意的な方だよ?人間を殺すなんてちっとも楽しくなーい!」

間の伸びた喋り方に若干イラっとするが顔には出さない。

こんな可愛らしい声でも見た目はしっかり化け物なのだ。

怒らせるとやばい気がする。


「えと、僕はライルです。あ、貴方は?」

「ん?あー!君がライル君かー!ウチはニア!!蒼炎のニアって呼ばれてるよーん!」

「え?知ってるんですか?」

「だってゼクトがずっと君の話するからさー名前覚えちゃったよ。」

「な、なるほど。それでニアさんはここで何を?」

「見てわからない?あの部屋から出てきた人間を脅かして楽しんでるんだー!びっくりしたっしょ?」

「心臓が口から飛び出るかと思いました。」


そう言うと、ドッキリ大成功がよほどうれしかったのか目に見えて喜ぶのが分かった。


「んで?そのうずくまってる子は?」

「あ、こいつはアスカって言います。こんなビクビクしてる姿は初めて見ましたけど……。」

「ライル……もういない?」

目で覆っているせいか、何も見えていないであろうアスカから問いかけられる。


「いやいるよ目の前に。ってかアスカもびっくりすることなんてあるんだな。」

「虫は……苦手なのよ……。」

ああ、そういうことね。

ニアさんは下半身が虫のそれだ。

目を開けてしまえばまた悲鳴があがることだろう。


「虫ぃ?ウチは虫じゃないよ!!!確かに地球の虫に似てるみたいだけど顔はプリチーでしょ!ね!ライル君!!!」

ニアはそう言うとライルに顔を近付けてきた。


「そ、そうですね。ニアさんは可愛いと、思います。多分。」

「だよねー!!!ゼクトも見た目が化け物だなんて言ってくるしさー女心ってやつを分かってないのかねー奴は。」

ゼクト、こればかりはお前と同じ意見だ。


「ライル?何だか可愛らしい声が聞こえるけど、誰かいるの?」

耳は聞こえているアスカが目を覆っている手を放そうとする。

ニアさんは声だけ聞けば、女の子だからだ。

声だけ聞けば。


「ま、待て!!!アスカ!!!まだ手は離さない方がいいと思う!!!」

「え?」

しかし遅かったようだ。

手を離したアスカの目の前には満面の笑みを浮かべるニアさんの下半身がある。


「あっ………………」

アスカはその六本足を直視してしまい気絶した。

ニアさんは2メートルはある。

故にしゃがみ込んだ状態だと足しか目に入らないのだ。


「あらーまた気絶しちゃった。ライルは平気なのにねー。あ、ライルって呼ぶね!」

「平気ではないですが……ああはいどうぞ。」

「仕方ない、ウチが運んでやるかー。あの部屋でいいんでしょ?」

ゼノン副長とアスカを器用に二本の足で担ぎ上げる。

今目を覚ましたら再度気絶する事になるだろう。


「ってそのまま部屋に行くんですか!?」

「ん?そうだよ。ライル一人で運ぶのは無理でしょ。それに気絶させちゃったのはウチだし。」

青い肌をした六本足の化け物がいきなり部屋にやってきて2人を担いでいるところを見れば悲鳴があがるだろう。

しかしライルは考えた。

そもそも部屋の外に行かされたのはアレン隊長の横暴によるもの。

ならば同じ目に合わせればいいだけだと。


「行きましょう!ニアさん!!!!」

「お?急に元気になるじゃん。いこいこ!!!」

1人と1体は足並み揃えて部屋へと向かいだした。


「あ、てかさーライル、コイバナしよコイバナ!!」

「は?」

いきなりすぎて、目が点になる。


「え?コイバナじゃん!人間の女子ってコイバナ好きなんでしょ?ライルは誰か好きな人いる?」

何故か始まったコイバナ。

ニアさんは思ってたより人間らしい特殊個体のようだ。

見た目だけ化け物なのがとても惜しい。


「えーっと、誰にも言わないでくださいよ?……その、担いでる女の子です。」

「え!?このアスカって子!?ウソー!!マジで!いいじゃーん!!!!」

「ぼ、僕にだけ聞くのはずるいですよ!ニアさんは誰なんですか!?」

「んーいないかなー。あ、でもしいて言えばライルの事気になったかもー。割と好き?みたいな?」


…………その好きは捕食対象に向けた好きでしょうか?とは聞けないライルであった。

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