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真実は思っていたより残酷で②

「そんな……奇跡のような鉱石があるのかい!?」

「火星の地面を100メートルも掘ればゴロゴロ出てくる。だからエネルギーに困ることはなかった。」

アルマイト鉱石。

聞いたことはなかったがそんな石が存在するのであれば、どんな者だって飛び付く。


人類は愚かにもこの世界全てにおいて頂点に立っていると思っている。

だからこんな考えが思いついたのだろう。

ゼクトからアルマイト鉱石の話を聞いた20年後、人類は火星への侵略を開始した。

アルマイト鉱石という莫大なエネルギー源を求めて。


ゼクトは何も知らされていなかった。

ただ、アーレス星人と交流を持ちたいと聞き、人類を引き連れて火星へと帰還することになっただけだった。

それが侵略とは思わずに。


「まあこれが侵略戦争の発端といえる出来事であるじゃろう。どうかね?人類の諸君。君達の先祖が犯した罪は重かろう?」


グランの語りが終わると、殲滅隊はみな口を閉ざしていた。

何も言えるはずがない。

今まで侵略者と呼び殺してきたアーレス星人は被害者だったのだ。

知らぬ事とは言え、無闇に殺してきた罪は消えない。


「信じられんのも無理はないが、これを見てみるといい。」

ゼクトは呆然とする僕らに向かってカイルが遺したと思われる冊子を投げ渡した。


開いてみると先程グランが語ってくれた内容がそのまま書かれている。

筆跡も、歴史書に載っていたカイルのものと一致する。

紙の劣化具合といい、当時の物だ。


「じゃあ、ここは……僕らが地球だと思っていたここは……。」

「疑うまでもない、ここは火星。我々アーレス星人の住まう星だ。」

「そんな……今まで何のために戦ってきたんだよ!!」

「我に怒鳴られても困るな。」

「お前に怒ってるわけじゃない!!ただ、何も教えず戦わせてきた先祖に怒っているんだ!!」


みな一様に顔が暗い。

こんな所まで来て、一体何を聞くというのか。というスタンスだったが、蓋を開けてみればとんでもない真実を知ってしまったからだ。


「なら、お前達は俺らのような奴を憎んでいるんだろ。」

「少なからず憎んでいる奴はいる。だが全てではない。そもそもこれはお前達の先祖が始めた事だ。お前達にその憎しみをぶつけるのは間違っているだろう。」


ただ、アルマイト鉱石を手にする為だけに戦争を起こすなんて間違っている。

狂っているとしか思えない。

人ではないとはいえ、同じ世界に生きる命だ。

それをただ資源を奪う為だけに殺す?

そんな判断を下した先祖に腹が煮えくり返る思いだ。


「我がこの話をお前達に伝えたのは、カイルからの願いであったからだ。これから先何も知らない人間が生まれてくる。その者の中で信頼できると思った者がいたのならば、この本を見せてやってくれと。」

「そうか。ゼクト……お前はカイルに信頼されていたんだな。」

「ふむ、そうだな。我とカイルは良き友であった。お互いに相手を思いやり、敬う。そんな間柄であった。」

「これから僕達はどうしたらいい……先祖が犯した罪を償えばいいのか?」


人間は愚かな生き物だとよく言うが、ここまでとは思わなかった。


「その話には続きがある。」

「なに?」

「その本には侵略戦争の発端になった事しか書かれてはおらん。その先を知りたければ軍司令部にあるもう一冊の本を探せ。そこに真実はある。」


確かに疑問はいくつかある。

何故僕らは何も知らず今までいたのか、何故軍司令部は隠す必要があったのか、何故僕らの先祖に当たる人達が火星侵略に選ばられることになったのか、どうやって火星まで大量の人を運ぶことが出来たのか。

それを知るには軍司令部が持っている本を見るしかないとゼクトは言う。

ゼクト自身は知っているような口ぶりではあったが、自らの目と耳で真実は知るべきだと教えてくれなかった。


ただし、それは簡単な事ではない。

ここにいる20数名程度で軍司令部と敵対すれば戦いにすらならないだろう。


「お前達はここで真実の一部を知った。もう知らないフリは出来んぞ。真実の全てを手に入れろ。そして全てを知った時、もう一度ここに来るがいい。お前達の選択を聞かせてもらう。それまで我らはここから動かぬ。」

「いいのか?僕らはあんたらアーレス星人からすれば憎き敵だ。」

「もう、我は争いたくはないのだ。何も知らぬ子供達と。」


ゼクトは少なくとも500年以上生きている。

そんな彼から見れば僕らは子供だ。

彼は元々優しく争いなど好まない純粋な者だったに違いない。


「良いのか?今の俺達は武器を構える資格もない。今なら人類の切り札ともいえる我々殲滅隊を屠れるチャンスだぞ。」

「我は手を出さん。お前達が全ての真実を知りそれでも事を構えるというのなら別だが。」

「そんなつもりはない。なら俺達の目標は軍司令部にある本の奪還か。こんな事を言うのもなんだが、手伝ってはくれないのか?元凶に鉄槌を食らわせれるぞ。」

「軍司令部と真っ向からぶつかると?ククク、やはり何も知らぬのは罪というものだ。良いか、お前達は確かに強い。ただそれはあくまで個人でのレベルだ。相手は軍だぞ。それに少しだけ教えてやるがお前達が思っているより軍司令部は強力な兵器をいくつも所有しているぞ。」


流石に手伝ってはくれないみたいだが、少しでも軍司令部の情報を僕らに伝える所を見る限り、やはりゼクトは味方となってくれているようだった。


「それに。既に手伝っているではないか。なあ擬態のリクリット。」

誰に問いかけているのか?全員がゼクトの視線を追うと1人の人間に辿り着く。


「もうネタバラシですか?ゼクト殿。」

全員の視線の先にいたのはリー・オウレン魔導隊長だった。


「リー……さん?」

「いえ、ワタクシの名はリクリット。擬態のリクリットでございます。」

言い終わるか否かでリーの体はぐにゃりと変形しのっぺりとした顔の白い人型になった。


「うわぁぁぁ!!!」

「ば、化け物ぉ!!!」

軽くホラーだったせいで、少し騒ぎになってしまった。


「ば、化け物……確かにワタクシは貴方方から見れば化け物かもしれませんがそんな直接言われると傷つきます……。」

僕は何にも気づかずずっと一緒に車内でお喋りしていたせいで余計に不気味に感じる。


「ワタクシ、擬態のリクリットはご想像通りアーレス星人の特殊個体です。ワタクシの能力は擬態。何にでも化けることが出来るのですよ。この能力のおかげで10年前から誰にもバレた事はありませんでしたね。」

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