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真実は思っていたより残酷で①

「なぜお前がこんなものを持っている、答えろ黒狼のゼクト!!!!」


アレンの激昂によりその場には緊張感が走った。

ゼクトから渡された冊子に書いてある言葉は”著者カイル・ドルクスキー、未来の人類へ”と書かれていたからだ。


「落ち着くがいい人間の特殊個体よ。名前は確か……アレンだったか。」

「そんなものどうでもいい、さっさと俺の質問に答えろ。」

「焦るな、なぜ我がその冊子を持っていたか、それは我が彼の友人であり良き理解者であったからだ。ただ、それがこの戦争の引き金になったがな。」


何を言っているのか良く分からない。

かの有名なカイル・ドルクスキーの良き理解者?

あまりに突拍子もない話に誰も着いていけない。


「ゼクト、端的に話されても分からない。もっと分かりやすく説明してくれ。」

「む、我の話はそんなに難しいものか?」

ライルは難しいというより理解できるように説明してくれと言い掛けたが口を閉ざす。

それはゼクトの後ろから何者かがこの部屋に入って来たからだった。


「ゼクトよ、お前の話はいつも分かりにくい。彼らが来る前にも説明が足らず揉めたところであろう?その続きは儂が話そう。」

巨大な緑の熊が現れ、人間の言葉を発した。


「な、なによあれ!!!でかすぎでしょ!!ってか熊!?」

ザラは口を大きく開けて、熊らしき侵略者を見上げそう声を上げる。


「むう?そこの女よ。儂は地球に生息する熊ではない、深緑のグランという。」

「深緑のグラン……話し方といいなんか年寄りくさいなぁ。」

「と、年寄りじゃといかんのか!!!!」

年寄りはグランと名乗る侵略者にとって禁句だったようだ。


「ご、ごごごめんなさーい!!!」

あまりの迫力にザラさんは僕の背中に隠れた。

なるほど、僕を盾にしたと。この恨みは忘れない……。


「おほん、すまぬ。少し声を荒げてしもうたわ。改めて、儂は深緑のグラン。アーレス星人においてもっとも永き時を生きる者だ。」

「なんだグラン、我が説明しているところを……邪魔をするなと言っていたはずだぞ。」

「ゼクトよ、お前はいつも説明が足らん。儂が説明した方がこ奴らも理解しやすいであろう。後ろに下がっとれ。」

納得いかない顔をしていたゼクトだったが、しぶしぶといった足取りでグランの後ろに下がる。


「さて、何から話そうかの。では長くなるが侵略戦争の発端となった出来事から話そうかの?」

そうしてゆっくりと分かりやすく丁寧に説明してくれた。


今より約500年前。

人類は火星に生命体が存在する事を発見した。

すぐさま探査機を送り込み、人類はアーレス星人と呼ばれる生命体を写真に収めた。

なんとしてでも地球に連れ帰り調べたい。

科学者や研究者の探求心は凄いもので、たった数年で生命体を捕獲し連れ帰る事の出来る自動制御型捕獲宇宙船を開発。

地球を飛び出した捕獲船は火星へと降り立った。

しかし、人間は火星に行く事が出来ない、その時代には火星に人間を送り込むことの出来る技術はなかった。


火星に降り立った捕獲船は入口を自動で開放し、生命体自ら乗ってくれることを待った。

何日も何日も。

すると好奇心旺盛であろう生命体が捕獲船に飛び乗った。

それが全ての始まりとも知らずに。


何も知らない生命体は地球へと帰還する船に揺られ、ただ時間が過ぎるのを待った。

地球に帰還した船から顔を出した生命体を待っていたのは白衣を着た者と物騒な筒状の何かを持った者達であった。

言葉は分からなかったが、毎日見たこともない景色や物を見ることができて楽しかった。


白衣の男はその生命体に名前を付けた。

ゼクトと。

生命体はとても喜んでいた。

そのゼクトを調べていくうちに火星にも文明がある事を知ってしまった。

人類は何とか意思疎通を図れないか試行錯誤し言葉を覚えさせ言葉による意思疎通を可能にした。


「ゼクト、僕の名前はカイル、カイル・ドルクスキーだ。言葉が分かるかい?」

「わ、かる。おのれはゼクト。おまえ、は、かいる。」

「んー己って一人称で使われるのはなんだか気味悪いなぁ、もっと他にないかい?」

「わ、れ。われはゼクト。」

「まあいっかそれで。とにかくこれで意思疎通が出来るようになったぞ!!!みんな!火星の事を聞くことが出来る!!」


その一大ニュースは瞬く間に地球全土へと広がっていった。

火星に住む他の生命体の事、火星の文明レベル、火星特有の資源はあるか、など聞きたい事は無限にあった。

それら全てを聞くには信頼を得ることが大事と考え、カイル1人にゼクトの事は任せる事とした。


1年が経ったある日、言葉を巧みに操れるようになったゼクトにカイルは質問をした。


「ゼクト、君は何歳なんだ?」

「我は、今100歳前後だと思う。」

「100歳!?じゃあ君達アーレス星人は長命種なのかな?」

「うむ、我はまだ若い。人間で言えば小学生程度。」

「そ、そうかい。子供なのにその喋り方はどうにかならなかったのかな……。」

「長生きする者は千年を超える。」

「そんなに!?それは凄い!!なら文明レベルは地球と比較にならないんじゃないか!」

カイルは心躍った。

たった100年程しか生きれない人間ですら空を飛び海を潜り遂には火星に船を送り込むことすらできた。

1000年も生きる生命体ならば遥か未来の技術レベルなのではないかと想像したからだ。


「残念ながら、人間には及ばない。」

「ええ!?何故何だい!?」

「我々アーレス星人は個々の強さが全て。協力して共に技術を発展させるなど考えたこともない。」

「そんな……勿体ない……そんなに長命なのに協力したくないからって文明レベルが低いままじゃ……。」

「ただ、この地球にはない技術がある。」

「何だって!?」

カイルは一度は落ち込んだものだったが、地球にはない技術と聞けばそんな気持ちなど一瞬で吹き飛んだ。


「アルマイト鉱石。カイルに分かり易く例えるが人間の拳大アルマイト鉱石1つで飛行機と呼ばれる鉄の船が飛ぶ。莫大なエネルギーを持つ火星にしか存在しない鉱石だ。」


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