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アイオリス山脈②

「潜入だと?儂は何も聞いておらんぞ。」

「当たり前だ、我以外に誰も知らん。」

「おいおい、そんな事してんなら内部から人間共を絶滅させれるじゃねぇか、何故やらない!」

「我は、もう争う事を辞めたいのだ。だからこそ人間の情報を掴む為リクリットを潜入させている。」

「こちらはもう何万何十万と死者が出ているんだゾ。」

「それは人間も同じ事だと何度言えば分かる。とにかく理由は説明した。納得しようがしまいがこれは決めたことだ。後1週間もあれば到着するとリクリットから連絡は貰っている。馬鹿な真似はするなよ?」

ライル達をここアイオリス山脈に呼んだはいいがガルムらが勝手な事をして、新たな火種を生まぬよう睨みつけながら警告する。


「じゃあさ、ちょっといたずらするくらいならいいかなぁ?」

「頭が悪いと喋り方も頭が悪そうになるのはなぜなんだ?」

「はぁ~?これがウチの喋り方だし、気に入ってるし~、バカはあんたでしょガルム。」

「なんだと!!ニア!!!!」


個性的な話し方をするのは、蒼炎のニア。

体長は2メートル程と特殊個体の中では比較的小さい。

人間の女性的な顔をしているが肌は青く下半身は昆虫のようになっており六本の脚がある奇行亜種だ。

身体の中で高熱の炎を作り出す事ができ、口から青い炎を吐くことから蒼炎と呼ばれるようになった。


「いたずらだと?程度によるぞニア。」

「ちょっと物陰から脅かしてみるくらいならいいでしょゼクト。」

「まあ、それくらいなら構わんが、人間からしてみればお前の見た目はより化け物だ。間違って切り掛かられても知らんぞ。」

「ええ~レディに対して化け物ってひどくなぁい?だからこそじゃん!絶対人間達ビビるよ~!あ~楽しみになってきちゃった!」


ニアは特殊個体の中では珍しく非好戦的だ。

人間にさほど嫌悪はもっておらず楽しければそれでいいという、変わった価値観をもっている。

ただし、見た目は醜悪な化け物なので人間と相いれれるとは思えないが。


「とにかく一週間後だ。くれぐれも馬鹿な真似はするなよ、特にガルム。もしかすればこれで永久の停戦となるかもしれんのだからな。」

「へいへい、分かったって。俺も馬鹿じゃねぇからな。これ以上無益な争いが止まるってんならお前に賛同してやるよ。」


今回このアイオリス山脈に来るのはライルが属する殲滅隊と聞いている。

もしもガルム下手を打てば、アレンとかいう人間の特殊個体が黙っていない。

潜入しているリクリットに聞いた限り今まで出会った精鋭と呼ばれる人間の中でも群を抜いて強そうだ。

ガルムも決して弱くはないが、無事ではいられないだろう。


部屋を出ようとするゼクトにニアが近づいて来る。

何か伝え忘れかと、振り向くと耳元に口を近付け小声で話しかけてきた。


「ゼクト、ウチとかここにいる奴らはいいけどさ、死神のエイレンは気を付けたほうがいいんじゃない?あいつの身内が確か前哨基地で殺されたんでしょ、人間にいい感情を持ってるとは思えないけど。」


死神のエイレン。

この会議場にも現れなかった特殊個体。

アーレス星人からしても異端、というほかないエイレンは危険な存在だ。

骸骨の顔をしておりいつも黒いローブを羽織っている。

前哨基地で殲滅隊に殺された愚者のトールはエイレンにとって腹違いの弟であった。

故に人間に復讐心があることは確実。

それに、異端と呼ばれるには訳がある。

殺す事に愉悦を感じる特殊性癖の持ち主でもあるからだ。

こんな危険な存在がライル達と出会えば、確実に衝突するだろう。

戦闘能力も高いのが厄介さを引き立てる。


「確かにエイレンは危険だな、ニア何かあれば止めろ。我はそこまで目を向けれん。」

「ウチが止めんのぉ?無理だよ~あいつめっちゃ強いし暴れられたらガルムでもぶつけないと止められないよ。」

「それで構わん。ガルムをぶつけろ。とにかくエイレンの動きには注意しておけ。」

「りょか~い。」


ニアにエイレンの動きを見張らせる事を伝え自分の部屋へと戻る。

アイオリス山脈は見た目が山に見えるだけで内部は超高度な技術をふんだんに使った秘密基地になっている。

ゼクトは体表のトゲを器用に動かし、扉のスイッチを押し自室へと入った。


自室に置かれている端末には各所からの指示願いの催促が大量に届いていた。

煩わしそうに横目でそれを眺め、適当に返事を送る。

もちろんそれも体表のトゲでだ。


アーレス星人にとっての司令官の立場になりもう数百年が経つ。


彼らアーレス星人は人間と大きく違う所がある。

それは寿命だった。

人間は長くても100年前後といったところだが、彼らは1000年を生きる。

ただし繁殖力は低く数はそう多くない。

長く生きているからこそ、人類が到底及ばない超越技術を持っていた。


ならば何故人類との戦争で圧倒しながらも反撃を許してしまったのか。

それはひとえに戦略、という概念がなかったからだ。

アーレス星人は個々の力こそ強いが協力し戦略を立てるという事はしない。ただひたすらに各個人が戦う。

人類は個々の力こそ弱いが、複数で協力体制を取り戦略を張り巡らせれば、無類の強さを誇る。

今でこそ、ゼクトが指揮を取り戦略という概念が生まれたが、それもここ数十年程でアーレス星人に身に付いたものだ。

ゼクトが指揮を取り始めた数百年前は戦略という概念を理解できず、まとまることが出来なかった。

人類の言語を知り、技術を知る。

そしてそれを生かして最新鋭の兵器を開発する。

それが今の超越技術に繋がっていた。

人間なくては今のアイオリス山脈の秘密基地はなかったであろう。


手を取り合う事さえ出来れば、互いにもっと栄え文明はさらなる飛躍を遂げていただろう。

そう思うと、この戦争は早く終わらせたほうがいいと願うゼクトであった。

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