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アイオリス山脈①

アイオリス山脈。

地表から数千メートルにも及ぶ山は何処からでもその姿を捉えることが出来るだろう。

しかしそれはただの山脈ではない。

そこにはゼクトらが本拠地を構えていた。


「どういうつもりだ!ゼクト!!」

真っ白な広い空間の真ん中には大きな楕円の机が置いてある。

それを囲うように特殊個体は顔を合わせている。

その中でも一際目立つ体躯をした特殊個体がいた。

身体の表面は紅く、体長は3メートルほど。

発達した腕や足の筋肉が強さを際立たせる。

鬼の顔をもち、人間と同じ二足歩行の特殊個体だ。

その赤鬼が冒頭怒りに満ちた顔で叫んだ特殊個体であった。


「どういうつもりとは、なんだ?赤鬼のガルム。」

「我々アーレス星人にとってこのアイオリス山がどんな場所か理解しているのか!対人類最大の拠点だぞ!!!そんな所に人間を招くとはどういうつもりだと聞いているんだ!!!」


他の特殊個体はガルムとゼクトのやり取りを黙って聞いている。


「何とか言ったらどうだ!ゼクト!!!」

「ガルム、忘れたか?我らアーレス星人にとって力こそ全てだ。我が全ての権限を持っている。分かるな?我が決めればそこに反論の余地はない。」

「何だとぉ!?そんな横暴があってたまるか!!!」

「これは代々決められてきた事だ。個にして最強。その者は種族の生き死にを左右する権利がある。」

「人間を呼び寄せて何も問題はないと!?お前には失望したぞゼクト!」

「ならばまたここで再戦といくか?ガルム。」

「ぐっ!つえーからって舐めやがって!!!」


彼らアーレス星人は人間のように大統領や王がいる訳ではない。

ただどの個体よりも強い者が頂点に立つ。

実にシンプルだ。

ゼクトはどの個体よりも強い力を持っていた。

故に誰も逆らう事はせず、命令に従う。

まれにガルムのような強気にでる個体も存在はしたが、決闘ののちボコボコにされて終わりだった。


「辞めないか二人とも。」

ガルムがゼクトに食って掛かる様を静観していた一体の特殊個体が声を上げる。


「ゼクト、お前に勝てる者などおるわけがなかろう。それはもう数百年前に証明されておる。しかし何の説明もなく人間をここに招くというのはいささか横暴すぎるのではないか?せめて理由は教えてくれんか?」

「グラン爺がそう言うのも分かっていた。だから説明しようとしていたのだがな。そこの阿呆が説明より先に食って掛かるからこんな無駄なやり取りが発生したのだ。」


アーレス星人の中で最も長く生きている熊のような体躯をもつ特殊個体。

深緑のグラン。

身体は熊そのものであり体表面は深緑の肌をしており体長は5メートルにも及ぶ。

ゼクトが台頭するまでは彼グランがアーレス星人の頂点であったほどに強い。

そもそもアーレス星人には人間のように白人種、黒人種などのように種族が複数ある。

二足歩行型の人型種、四足歩行型の獣種。人とも獣とも似つかない姿をしている奇行亜種。

三種の種族の中から極稀に特殊個体が生まれ、その者たちは人間の言葉を理解できるほどに知能が発達している。

ガルオンと呼ばれる、特殊個体ではない者達。

それらは人間にとって咆哮しているようにしか聞こえない発声しかできないが、その咆哮が意思疎通を図る手段であった。

今ここに集う特殊個体は全て人間の言葉を理解し、対話する事が可能な個体だけだった。


「ふむ、ならば儂にも分かるように説明してくれんかの?ここアイオリス山脈はアーレス星人にとって最後の砦であり最後の居住地区でもある。そこに危険分子を招こうと言うのだ、理由がない訳ではあるまい。」

「そうダ、この侵略戦争は元々人間が始めたものダ。故に我らは被害者でもあル。」


少し言葉がたどたどしい個体は、六腕のキマリスと呼ばれている。

体長は3メートル程、六本の腕を持ち灰色のゴツゴツとした岩肌が目立つ奇行亜種だ。

言葉がたどたどしいのにも理由があった。

この白い会議場での会話は全て人間の言葉で交わされている。

戦いで最も重要とされるのは情報だ。

人間という敵をよく知ること事こそ勝利を掴むとの理由で特殊個体は全て人間の言葉を使って対話を行うようにしていた。

キマリスは特殊個体にしてはあまり頭がよくなく人間の言葉は不慣れであった。


「まずこの侵略戦争を始めたのは人間からだった。それは我も周知している。というより当事者であるからな。しかし今の人間共は昔より数を減らしてはいるが過去の事を何も知らぬ。知らぬまま戦わされているのだ。そんな彼らにも真実は知る権利はあるだろう。」

「その真実を伝える役目をお前が引き受けたとでもいうのかの?」

「そうだ。我はこの醜い争いの引き金となった中心的存在。故に彼らへと真実を伝える役目は適任だと思うが。」

「それならアイオリス山脈じゃなくてもいいだろうが!危険を犯してまで伝える事か!?」

「ここだからこそ、だ。ここには何がある?我らアーレス星人にとっての最高の設備が整っているだろう。これを見せそして真実を伝える必要がある。」

「馬鹿じゃねぇのか?わざわざ敵に情報を与えてどうするんだよ、死んでいったガルオンは数十体ではすまねぇんだぞ!」

「それは人間にも言える事だ。何も知らずただ我々と戦い力及ばず死んでいく。そんな間違った常識はここで修正すべきだ。」

「ただ懸念点が1つあるじゃろう?人間にここを知られてしまう事だ。戦争が始まった時の事を覚えておらんのかゼクト。戦略兵器を使われればここすら危ういぞ?」

「核か。分かっている、だからこそ招く者は選んだのだ。誰彼問わず呼ぶほど我は愚かではない。」


元々アーレス星人も沢山存在していたが、人類側の核兵器の使用によりその数は激減してしまった。

もしもここアイオリス山脈にも核兵器を使われれば、アーレス星人は死滅してしまうだろう。

それを恐れ、ガルムはゼクトに対して反発していたのであった。


「それに逐一人間側の情報は入手している。」

「何?どうやってじゃ?」

「人類側に我らの同胞、数年前から擬態のリクリットを潜入させている。」

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