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トリカゴの外で⑩

準備も整い外壁の門で集合した殲滅隊だったが、アレン隊長のそばに見慣れない人が立っていた。


「あの、隊長。その横にいる人って……。」

「おお、これはライル殿!お久しぶりですねぇ。今回は私も連れて行って頂くことになったのですよ!」


横にいたのは魔導隊隊長リー・オウレンだった。

「え?あの着いてくるって、アレン隊長、どういうことでしょうか?」

「こいつも軍司令部が何か隠している事を気づいていたらしい。今回俺達がコソコソ動いていたのを目敏く察知したこいつは図々しくも連れて行けと言い出したわけだ。」

「こーんな面白そうな事に加担させないなんて、アレン殿もなかなかお人が悪い。」

「でも魔導隊はどうするんですか?隊長……ですよね?」

「そんなものは部下に任せてきましたよ!何せ今回はもしかすれば人類の叡智が及ばない未知の技術を目にすることが出来るかもしれないではないですか!そりゃあもう魔導隊なんてどうでもよくなりましたよ!」


よくはないだろう、と目上の人に向かっては口が裂けても言えないがこの人はとことん変わった方らしい。

「ま、そういうことでこいつも連れて行かざるを得なくなった。変態的な武器は持っているが戦闘能力はあまり役に立たないと思え。」

「えええ!?ただでさえ未知の領域への遠征なのにお荷物が増えるじゃないですか!」

これを言ったのは僕ではない、ザラさんだ。

まあ僕の代弁者ともいえる。


「まあそこは殲滅隊の実力が試されるところではないですか!持参した武器はありますがあまり当てにはしないで頂きたいので。」

「こいつの持ってる武器は使う時が限られるほど特殊な物ばかりだ。前回の重力加速装置はデカすぎて持ってこれなかったようだしな。」

「流石にあれを1人で運用するのは無理がありますねぇ!」


これで僕らはお荷物1人抱えたまま遠征に行く事が決まった。

ただ、リーさんのような新技術に強い人がいればもし罠などが設置されてても気付いてくれるかもしれない。

いや、無理か。

新技術の装置を見つければそれどころではなさそうだ。

新しい未知の装置に抱き着き頬ずりする、そんな様が手に取るようにわかる。


出発前にひと悶着あったが、とりあえず無事に壁外に出ることが出来た。

かなり長い遠征になるだろうが、未知の領域への進出は心躍らない訳ではない。

少し楽しみな気持ちもある。


「前回ライルとアスカが落ちたあの墓地に着いたら一旦休憩だ。その後は暗くなるまでひたすら車を走らせる。」



退屈になるほど何も起きなかった。

多少侵略者が現れるかと思っていたが、影すら見えなかった。

あまりに退屈すぎて、リーさんと雑談して時間を潰すことにした。


「あの、聞いていいですか?」

「おお、ライル殿。何でも聞いて頂ければ。」

「じゃあ、えっと、何故軍司令部が怪しげな秘密を隠してるって気付いたんですか?」

「いい質問ですねぇ、それはですね、ある事がきっかけとなり軍司令部に疑問をもったのですよ。」

「きっかけ……ですか?」

「カイル・ドルクスキーが創り出した3枚の壁とそれを覆う巨大な電磁障壁を知っていますね?あの電磁障壁はこの国全てを覆っているのです。しかしそれだけのエネルギーは何から生み出されているか、気になったことはありませんか?」

確かにそうだ。

僕も昔からあれほど巨大な障壁を維持するのにどれほどのエネルギーが必要になるのか気にはなっていた。


「ワタシも気になりまして、何度も軍司令部にお願いしたのですよ、立入禁止区域への許可が欲しいと。それかせめてワタシのような科学者や研究者にはどのようなエネルギーが使われているのか教えて欲しいと。もしかすれば新たな技術の開発に役立つかもしれないですからね。まあ結果は如何なる理由があれど軍司令部が認めた者以外に教えることは出来ない、と言われましたよ。」

「そこまでして隠す必要が分かりませんね……。」

「そうでしょう?人類を守る大切な障壁を維持しているエネルギー源を知りたいと誰もが思うことです。隠さなければならないようなエネルギー源が使われてるとしか思えませんよ。」

「だから、今回の遠征に参加したのですね。」

「そうです、もしかしたら侵略者の技術が使われているかもしれませんからね。それを知ることが出来る可能性が少しでもあるのなら、参加しない選択肢はないでしょう。」


多分このトリカゴに生きるほとんど者達は違和感を覚えても口には出さない。

ただ今を平和に生きられるのなら、下手に口出しして生活が脅かされるくらいなら、何も知らず生きていたいだろう。


ただ僕らのような極一部の者が違和感を覚えそれを拭おうと奔走する。

このトリカゴは仮初めの平和でしかないと言うことを再認識するべきなんだ。

もしも侵略者が全力を上げて襲撃してきたら、トリカゴは1日も持たず瓦礫と化すだろう。

明日があるのは侵略者の気まぐれでしかない事を今一度考えるべきだ。


僕は巨大な3枚の壁、そして膨大な力を供給できるエネルギー源。

これは人類の技術ではない、と考えている。

前哨基地にあった砲台を見て確信に変わった。

障壁は青白い色をしているが、侵略者の使っていた砲台から放たれる弾丸も青白かった。

この事から、エネルギー源は同じではないかと考える。

軍司令部の一部は侵略者と繋がっており技術提供を受けているのではないか?

だが、もしそれが公となればこの国を維持出来なくなるだろう。

人類を滅ぼさんとする侵略者の技術で人類最後の砦を築いているのだから。

あくまで、これは僕の推測でしかないが当たってるかもしれない。

出来れば当たっていて欲しくはないが。

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