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トリカゴの外で⑦

「殲滅隊が帰還したぞ!!門を開けろ!!」


僕らが何一つ怪我なく帰ってきた事が、皆にとって喜ばしい事であり前哨基地内は歓喜に包まれた。


「このままトリカゴに戻る、お前達はまた基地内での任務になるが、悪いな。」

「いえ!我々も与えられた任務をこなすだけです!調査お疲れ様でした!」


アレン隊長は誰からも羨望の眼差しで見られている。

実際、基地内の別部隊の人からの労いの言葉をかけられる所を見ていたが明らかに目が輝いていた。


「ふぅー帰ったらケーキでも食べよっかなぁ!今回の任務も疲れたよぉ。」

「ザラ、また太るぜ?」

「うるさいなぁ!ロウ!たまには甘い物でも食べないとやってられないでしょ!」

「へいへい。」

今回の調査任務が終わると僕ら殲滅隊には3日間の休暇が与えられる。

僕もこの休暇を使って、両親の墓参りでもしようと思っていた所だ。


「ライル、貴方はこの休暇なにするの?」

「ん?ああたまには両親の墓参りでもしよっかなって。ゼクトに言われたからってわけじゃないけどさ。」

「そう、私も一度家に帰るつもりよ。貴方も墓参りが終わったら私の家に寄りなさい。」

「いいのか?」

「良いも何も、貴方が家に帰っても誰も居ないでしょう。誰からもおかえりって言われない事って寂しいと思うわ。」

「まあ、そうだな。じゃあ3日間世話になるよ。フィーネさんにもよろしく言っといてくれ。」

「ええ、久しぶりに顔を見せればフィーネも喜ぶわ。」



家への道を歩く。

久しぶりに自宅へ戻るが、風景は様変わりしている。

侵略者による破壊で建物等は建て直される事が多かった為だ。

両親の墓は僕の家とグラストン夫妻の家の間にある。

お供え用の花を持って、また歩く。


墓の前に誰かがいるようだ。

僕より前に誰かが手を合わせに来てくれたのだろうか。

小さく話し声がする。

邪魔にならないよう少し離れた所でその人の墓参りが終わるのを待った。


「お前達の息子は立派に兵士をやってるぜ。もうあの頃のイタズラ好きのガキじゃねぇ。今じゃ人類の切り札ってやつよ。」

誰だろう?

昔の両親に語りかけているような話し方だ。


「あいつらが壁の外に出る時は俺がこの地域を守ってやる。だから安心して眠れ。」


誰かが気になり、つい影から覗き込んでしまった。

「誰だ?そこで見ているやつ。コソコソしてねぇで出て来たらどうだ?」

気配を察知されたか、バレていたようだ。


「すみません、何か両親に語り掛けているようだったので邪魔しないようにと思って。」

「いらん気遣いをすんじゃねぇよ、ライル。」

振り返ってもいないのに何故僕だと分かったんだ?


「あの、何処かで僕と会ったことが?」

「ふっ、気づいてねぇのか。俺だよ。」

振り向いたその男は昔世話になっていた人だった。


「えっ!八百屋のおじさん!」

「よお、久しぶりだな。」

「あの、話してる内容ちょっと聞こえてしまったんですけど……。」

「ああ、聞かれちまったか。まあそういうこった。俺も昔お前の両親と知り合いだったんでな。」

「それにしてはえらく親しげだった雰囲気ですが。」

「まあそうだな、親友、いや戦友ってやつか?割と仲は良かったと思うぜ。」

「戦友?ですか?」

「お前まだ気づいてなかったのか。てっきりアスカと一緒にいるから気づいてるもんだと思ってたが。」

気づく?何の事だろう。


「あの、意味が分からないんですけど。」

「アスカと一緒にいたなら俺の事聞いてるんだろ?」

アスカと八百屋のおじさんが知り合いだとか?

そもそもアスカから八百屋のおじさんについて話は出たことがない。


「なんだ、何にも気づいてねーのか。いらねぇこと言うんじゃなかったな。」

「教えてくださいよ、気になるじゃないですか。」

「俺の名前はガロン・バルムンク。もうわかっただろ?」

待てよ?確かに聞いた覚えがある。

それもアスカからだ。

喉まで出かかっているのになかなか思い出せない。


「ま、お前ももういっぱしの兵士だ。ちゃんと名乗ってやるか。元遊撃隊副長ガロン・バルムンクだ。よろしくな殲滅隊第一班ライル・カーバイツ。」

「ああああああ!!!??ガ、ガロン副長が八百屋のおじさん!?」

何という事だ。

今まで行方をくらまし何処に行ったかも分からずじまいだったガロンさんがこんな身近にいるとは思わなかったぞ。

よく見ると右腕に包帯がずっと巻いたままだ。

サウズを隠しているのだ。

大きな怪我をして傷を隠す為に巻いてるものだとずっと思っていた。


「今まで気づかねぇってのもカンが悪いなライル。」

「いや気づきませんよ!そもそも僕は現役時代の貴方を見たことがないですからね!」

「あーそれもそうか。でもアスカは気づきそうなもんだがなぁ。」

「その頃と何か風貌が変わっているとか?」

「昔と違って髭は生やしているし、服装も汚らしい恰好だな。あ、喋り方もくそまじめな口調は辞めた。」

「そりゃ分かりませんよ。声だけで判断するなんて難しいですし。」

こんな身近にガロンさんがいたということを早くアスカに伝えなければ。

色々話もしたいだろうし。


「これからアスカの家に行くんです。良かったら一緒に行きませんか?」

「俺が行ってなにするんだ。」

「何って……こう久々の再会を喜び合うみたいなあるでしょう。」

「別に会わなくても死にゃしねーよ。それに、今更どの面下げて会えってんだ。」

ガロンさんは悲しそうな表情を見せ、俯く。


そうだ、確かアスカのお父さんが戦死した後隊長となったガロンさんだったが、今まで通りの戦い方ができず遊撃隊は解体された、と聞いていた。

遊撃隊そのものをなくす原因を作り、そのまま行方をくらましたガロンさんにとってアスカは顔を会わせずらい相手なんだろう。


「別にアスカは怒ったりしませんよ。それよりも貴方が無事でいることを喜んでくれると思います。」

「そうか……まあせっかくの機会だ。分かった、俺も連れていけ。」


久しぶりに両親の墓参りへ行くと思わぬ出会いがあった。

まさかこんなタイミングでガロンさんに出会えるとは思わなかった。

2人でアスカの家へと足を向ける。

アスカは久しぶりに会うガロンさんにどんな反応を示すだろうか。

少し楽しみだ。

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