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トリカゴの外で③

右目だけが青くなる者は皇族の血筋?

なんだそれは。

そもそも皇族なんているのか?

小さい頃からこの国は軍司令部が実権を握り、動かしていると教えられた。

過去には皇族もいたそうだが、侵略者の猛烈な攻撃により人類のほとんどが殺された際に皇族も巻き込まれ死んだと歴史書で学んだ。

というより右目が青くなるのは皇族だけ、なんて話も聞いたことがない。


「皇族の血が絶える直前、国の行く末を頼まれた将軍がいた。国を任された将軍は軍司令部を国の根幹としトリカゴを築き上げ今がある。と教えられたはずだ。それは誤りだ。実際は皇族の血が絶え、国の象徴は消え去った。このままいけばこの国は近いうち滅ぶ、それを避ける為仕方なく軍司令部で実権を握り今がある、というのが正しい歴史だ。本当の事が民衆に知られれば、暴動が起きかねん。民衆は皇族最後の頼みであったから軍司令部が実権を握る事を享受したのだ。」

そんな歴史があったなんて知らなかった。

確かに他言すれば軍司令部に殺されるというのも意味が分かった。


「話は戻るが、皇族である証。それが右目だけに発現する青眼、レインのそれは明らかに皇族の証だろう。」

「待ってください、もしそれが本当ならこの国の姫様って事ですよね?ならなぜ隠す必要があるのでしょう?」

アリアの言う通りだ。

本来であれば、皇族の血筋だと公表して国の象徴となればいいだけの話。

コソコソする必要なんてないはず。


「ここからは推測でしかないが。恐らくレインは皇族であることを公表すれば実権を握る軍司令部に殺されると思った可能性がある。皇族が現れたとなれば、国の実権はレインに移るからだ。それを嫌がる者に殺されると踏んだのだろう。」

「確かにそれは有りえる話です。ではそれならば何処に情報を持って帰るのでしょうか?」

「この地球の何処かに生存している国があり、そこに匿われている可能性。だがそれならばわざわざ皇族をスパイ代わりにする必要性はない。これ以上は何も分からん。本人に聞く以外はな。」


結局の所、本人しか分からない内容すぎて全てが推測にすぎなかった。

仲間と思っていたのは僕たちだけだったのだろうか。

それも全て神のみぞ知るといったところか。


「それともう一つ。」

「まだ何かあるんですか?」

もう頭の中はいっぱいいっぱいだ。

これ以上厄介事を口にしないでほしい、とは言えないので黙って話を聞く。


「軍司令部は何かを隠している。これは私、アレン、ゼノン全員が感じた事だ。最初に君達に嫌疑がかけられていると言ったがあれは嘘だ。できるだけ本当の事を喋って貰いたかったからああ言っただけだ。安心したまえ。」

「そ、それは良かったです。安心出来ました、が軍司令部が何かを隠しているというのは?」

「今回の件を軍司令部に報告を上げたが、大して調べる様子や動揺する様子も見られなかった。通常運行といったところだ。本来であればこれは別組織からのスパイ行為。軍の情報漏洩などあってはならない事だ。それなのにもかかわらず何もしないというのはおかしい。何かを知っているのだろう。」

「そこでお前達に提案がある。」

アレン隊長が話に割り込み提案があるとは、嫌な予感しかしない。


「お前達の中で1人、軍司令部を探ってもらいたい。我々隊長格となると下手には動けん。」

「なっ!軍司令部を調べろということですか!危険です!もしもバレれば!」

「殺されるだろうな。だから提案と言ったんだ。それくらい察しろ。」


アレン隊長は簡単に言うが、事はそんな簡単ではない。

軍司令部に入り込み、情報を得るなど危険極まりない行為だ。

失敗すれば死は真逃れないだろう。

誰もやりたがる奴なんていないはずだ。


静まり返る部屋の中でただ一つの声だけが聞こえた。

「……あ、あの、ボ、ボクがやります……。」

ずっと無言を貫いていたオルザであった。


「だめだ!オルザ!下手すりゃ死ぬんだぞ!?」

「ライル君、心配してくれて、あ、ありがとう。でもこれはボクに向いてる任務だと、思うんだ。」

何故、と言いかけたが直前で飲み込む。

分かっていた、潜入や諜報といった事が一番向いているのはオルザだと。


「いいよ、言ってくれても。ボ、ボクは影が薄いだろ?だ、だから諜報活動には向いていると思うんだ。」

「オルザ……。」

「それに、ボクだって殲滅隊なんだ……万が一戦闘になっても逃げきれる。かもしれない。」

「でも!」

あまり目立ってはいないが、殲滅隊に入れるだけの実力はある。

適任ではあるだろう。

しかし、仲間を死地に追いやるような気がして、僕はそれが嫌で仕方がなかった。


「アレン隊長、ボクが、やります。」

「すまん、これは俺からの死刑宣告に等しい。それを受けてくれたお前の勇気に敬意を表する。ありがとう。」

「い、いえ、やり遂げて見せます。か、必ず軍司令部の隠し事を暴いてみせます。」

「頼んだぞ。」



その後、僕らは部屋を出された。

オルザだけ残ったが、これから諜報活動の詳細を詰めていくのだろう。

「オルザ……。」

もしかしたらもうこれが最後になるかもしれないと思ったら、目に涙が浮かぶ。


「ライル、私達は兵士よ。オルザが適任とされる任務を受けれる事に感謝するべきなのよ。」

「分かっている、それくらい。ただ、仲間を失うかもしれないと思うと……。」

「オルザを信じなさい。今でこそ貴方は強くなったけど、訓練時代貴方より優秀だったのはオルザの方よ。」

訓練時の成績では僕が5位でオルザは4位だった。

今ではそこらの討伐隊隊長に引けを取らない実力がある。

仲間を信じるべきだと頭では分かっていても、身体は正直だ。

涙を浮かべる事は何も間違っていない。


ただ無事に僕らの元へ帰ってくることを願う事しかできなかった。


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