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新たな人生⑩

「全員分かったな、個々の持つ信号弾を同じタイミングで撃て。それと同時に俺とロウが一気に駆ける。」

「了解!!!」


作戦はこうだ。

第一班全員が信号弾を相手に向かって撃つ。

その煙に紛れて隊長とロウさんが飛び出す。

後は成功した合図を待つだけだ。


「ロウ、死ぬなよ。」

「何言ってんすか隊長。俺がそう簡単に死ぬとでも?」

「余計な言葉だった、忘れろ。」

「へいへい。」

軽く言葉を交わし、飛び出す体勢をとる2人。


今から死地へと飛び出すのに呑気な2人だ。

死が身近にあることに慣れてしまったのだろうか。


「撃て!!!」

合図と共に全員が引き金を引く。

信号弾の煙で辺りが見えなくなる。


「行くぞ!!!!遅れるな!」

「了解!」


目で追うのもやっとの速度で飛び出した2人は、上手く煙に紛れたようだ。

しかし侵略者とて馬鹿ではない。

むやみやたらと撃ってきた。

青い砲弾と狙撃を交わしながら、前哨基地へ接近していく。

500メートルなんてジェットスラスタを最大限に活かせば、ほんのすぐそこだ。

煙が晴れ、僕らが見えるようになった時には既に2人は基地の上空へと移動していた。


最高速度で駆け抜ける2人はまさに矢の如く。

人間あんな動きができたのかと思う程洗練されており、目を見張る光景だった。

これが殲滅隊の実力かと、見せつけられたのだ。

自分もああなりたいと恐怖から憧れへと変わる瞬間だった。



「ロウ!狙撃手は俺がやる!砲手を叩け!」

「やってやるぜ!機械仕掛けの人間を舐めるなよ侵略者共ぉ!」

左腕が変形し機関銃の銃身が出てきた。

右腕はロケットランチャーとでもいうのか、砲口をむき出しにした小型の砲台。


「食らいな。」

砲手は何もできず機関銃の餌食となり、右腕から放たれた砲弾は確実に指揮官らしき侵略者を木っ端微塵にする。

人間兵器とはよくいったものだ。

ロウの身体には幾千という弾丸と火薬が詰め込まれている。

故に諸刃の剣。

頭と心臓さえ無事であればとアレンは言うが、実際身体を傷つけられれば火薬に引火する恐れもある。

そうなれば、敵もろとも爆散することとなるだろう。


アレンは相変わらず人間を辞めていた。

普通の人間であれば、気絶するであろう速度で飛び回り狙撃を回避する。

速すぎて瞬間移動でもしてるかのように見えなくもない。


2人が飛び出して数分後、前哨基地の方で合図となる信号弾が上がった。

それを見て僕らは全員空中機動に入り、2人の援護をする。

1人の命と引き換えとなってしまったが、無事に前哨基地へと張り付くことはできた。


「アタシ達もやるよ!」

「任せろ!」

各々侵略者を各個撃破していく。

勘違いしないで欲しいが、本来侵略者と一体一では勝てないとされている。

それが可能となるのは殲滅隊の類まれなる実力あってこそだ。

だからこそ先陣を切らなければならない。

無駄な死人を出したくなければ。


第二班も離れた所で各個撃破していってる。

このまま行けば問題なく前哨基地は奪取出来そうだ。


しばらくすると機工隊が到着した。

「おお!流石アレン!無傷で奪取とは恐れいるぜ!」

「ビリー隊長!こんな武器初めて見ましたよ!」

「凄いわ!どうなってるのこれ!」

機工隊は侵略者の使っていた砲台に夢中になりあーでもないこーでもないとくっちゃべっていた。


「おいお前ら、まだ片付いてねぇぞ、うちみたいに死人を出したくなければ侵略者を全滅させろ。」

「なに?おいアレンどういうこった。」

「リオンが戦死した。」

「な!おいおいアイツ第一班の副班長だろ?そんなのが」

「狙撃だ。既に殺したが狙撃手が一体居た。」

「狙撃だぁ!?そんなことまで出来んのかよ侵略者ってやつは!」


やはりリオン副班長の死はとても信じ難い事だったらしく、話を聞いた機工隊の者達はみな一様に引き締まった顔に戻り基地制圧へと動き出した。


「本隊の到着はあと30分といった所か。侵略者はもう少ない。到着までに終わらせるぞ。」

「了解!」


僕はアスカと共に一体の侵略者に目を付けた。

「アイツやろう!」

「ええ、貴方は撹乱を。私がトドメを刺す。」

実力はまだアスカが上だ。

指示には従わなければならない。


「くっ、分かったよ。気を付けろよ!」

「貴方こそね。」

侵略者の周りを飛び回り始めると、僕に目を付けたのか攻撃しようと手を振り回しだした。

当たればもちろん死だ。

しかし、ジェットスラスタの操作に慣れた今の僕には避けることなんて造作もないことだった。


アスカは一瞬の隙を付いて上空から一気に首を切り落とした。

「よし!やったな!」

「あの程度でまごついているようじゃ先輩方に笑われるわよ。」

「な、うるせー。僕1人でもやれたよ。」

「さっきまで震えて怖がってたのに?」

「うるさいな!さあ次のヤツをやるぞ!」

「ふふふ、本調子に戻ったみたいね。」

そんなやり取りも交わしつつ、2人で計3体を殺した。


前哨基地を制圧した、と掛け声があがり全員基地の中央へと集まった。

「全員無事、とはいかないが最小限の被害でここを制圧したのはかなり大きい。周囲警戒の者以外は一時休息を取れ。本隊が到着次第近くに身を隠す侵略者を屠る。」


束の間の休息。

たった1杯の水がとんでもなく美味しく感じる。

「ふぅ、リオン副班長以外は負傷者のみ……か。」

「あれは仕方がなかったわ、まさか狙撃手まで用意してるとは思ってなかったでしょう。」

「そう……だな。」

あまり言葉を交わす機会は多くなかったが、副班長らしく見本となる女性であった。

そんな方を亡くした事が残念でならなかった。


「おい!お前ら!無事だったんだな!」

「ジェイド?久しぶりだな!」

「殲滅隊から死者が出たって聞いて、お前らを探し回ったんだよ!あー良かったぁ、気が気じゃなかったからな。」

「亡くなったのはリオンさんだ。僕らの副班長だった人だよ。」

「え!?副班長!?そんな人がなんで!」

リオンの死を説明する。


「まじかよ、狙撃って……侵略者も黙って殺られてくれたらいいのによ……。」

「そうだな、でもこれだけの基地をほぼ損害無しでとれたのはかなり凄い事だよ。」

「確かにな!あ、そうだった!新しい砲台の調査があるんだった!じゃあな!」

そう言い持ち場へと戻って行った。


ジェイドとはかなり久々の出会いとなったが、元気溢れるあの様は変わってなかったようで少し安心した。


アリアとレイスも怪我なくいつも通りだった。


そんな時だった。

二度と忘れないであろうあの光景を見たのは。



「緊急伝令!距離約1キロにて多数の侵略者を確認!特殊個体と思われる侵略者も見受けられます!」

数百にものぼる侵略者と真ん中に巨大な体躯を持った異質な存在。

明らかに特殊個体と思われるそれは、ここ前哨基地へと向かって来ていた。


「全兵士に告ぐ!!第一級戦闘配備!!機工隊は火砲の用意を!討伐隊は鶴翼の陣を展開!殲滅隊は対特殊個体に備えよ!」

テッド・プライムによる号令で一時の休息は終わりを迎えた。


戦いに次ぐ戦い。

それも、前哨基地を奪取した時の数倍の戦力で攻めてきた。

数も見た限り500は超えている。

真ん中の特殊個体は確実に強い。

遠目で見ても10メートルはありそうなデカさだ。


黒狼のゼクト以来となる特殊個体の出現。

これを退けて初めて人類の反撃と言えるだろう。


僕は剣を固く握り締め、反撃の一手となるために覚悟を決めた。


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