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新たな人生⑧

宇宙暦807年。

大規模作戦の日がやって来た。


訓練に訓練を重ねた結果、僕らもそれなりに戦える程度の実力は身に付いた。


テッド・プライム大隊長率いる討伐隊220名。

ビリー・ガーランド隊長率いる機工隊50名。

アレン・シスクード隊長率いる殲滅隊30名。

誰が指揮官かも分からないが魔導隊が10名。

総勢310名による三隊合同領土奪還作戦。


ここまで規模の大きい作戦は今までにもなかったはずだ。


「いいか、これは人類が生き残る為の作戦である。故に作戦の重要さは理解できるだろう。失敗は許されない。なんとしても前哨基地を破壊、もしくは奪取しなければ人類に未来はない。」


個々の戦闘能力で言えば殲滅隊に軍配が上がるだろう。

しかし数の暴力という言葉もある。

討伐隊の数は圧倒的だ。

今回の総指揮がテッド・プライム大隊長となったのはそういう所も含めて考えた結果だろう。


「ライル、緊張しているの?」

「ああ、アスカか。まあこれだけの作戦なんだ。それに僕らの班には別の任務もある。緊張しないって言えば嘘になるだろうな。」


殲滅隊第一班は特殊個体が現れた際、何よりも優先し討伐に向かわなければならない。

他の隊では確実に実力不足となるのは明白。

限られた兵士を無駄に減らすわけにいかない。

だからこそ少数精鋭で挑まなければならない。


「大丈夫、貴方は十分強い。あのアレン隊長と互角に渡り合えたのはゼノン副長以来初めてって聞いたでしょ?」

「それは分かってるけどさ……。」


実はあれから、自身の必殺技となる四連の剣閃を改良したのだ。

あの技を思い付いた時こそ自分の才能に酔いしれたが良く考えれば、両腕両膝から刃を生み出し真っ直ぐ突撃し切り刻むなんて、真正面から接近し懐に入られれば顔面に一撃もらって終わりだ。

だからこそ新しく生み出した四連の剣閃改。

両手に剣を生成し、加速する。

相手の正面に近づいたら左右どちらかに高速機動。

これで相手は目標をいきなり見失う、はず。

そこから、更に高速機動を行い元の位置に戻る。

その際両手に持った剣で切る。

加速した身体は簡単には止まらない。

その勢いで足裏から生み出した刃で蹴りを入れる。

最後に回し蹴りの要領で刃付きの足で蹴る。

これで4つの斬撃を可能な限り最速で行える。


この技でついにアレン隊長と互角に渡り合える程となったが、いかんせん体力がない。

互角に戦えたのもそう長くは続かなかったが、そもそもアレン隊長と互角に戦える事は難しいと言われるほどだった。


「おい!ライル!」

聞き慣れた声が聞こえる。

驚いて振り返ると、そこには見慣れた2人がいた。

「リッツ!リコ!!久しぶり!」

「元気してたか!?」

「そっちこそ!」

久しぶりに会った幼馴染は相変わらずといったところだ。

「アスカ、どう?進展は?」

「無いわね。あると思った?」

「だよねー!」

何の話かは分からないがアスカとリコも会話に花を咲かせているようだ。


「おお、懐かしい顔ぶれだな。」

「もう傷はいいのかリコ。」

アリアとレイスも近くに居たのか、声を聞き付けて近付いて来た。


「アリア!お前は変わらずキザったいなぁ態度が!」

「な、そんなことないだろう!紳士らしく居るだけだ!」

「もちろんもう傷なんてないよレイス、今度あの時のリベンジさせてもらうよ!」


訓練時代の仲間が集まるとやっぱり笑顔が絶えない。

「ちょっと!ボクらもいるよ、忘れてない?」

「レイン!ルナ!久しぶり!」

「四肢を失った時はどうなるかと思ったけど、意外と元気だね。」

「レインもな。体力は多少ついたか?」

「馬鹿にしてるなー?ボクだってやる時はやるんだから!」


久しぶりに甲高い声を聞くとやはりこいつ男か?と思ってしまう。


「筋肉はついたか?」

そう言って胸の当たりを触ると、顔を真っ赤にして怒りだした。

「ちょいちょい!何してんの!!」

「え?胸筋ついたかなーと思って。」

「ひ、人の胸を触るなんて常識を疑うよ!」

「男同士なんだからいいだろ別に。」

「うっ……。」


男同士、筋肉ついたか触り合うなんて普通のことだと思うが。

何にそんな怒る要素があったのか良くわからない。

「まあまあそこまでにしなさい。喜ぶのもいいけどはしゃぎすぎると隊長達に怒られるわよ。」

ルナの一声によりその場は収まったが、レインは僕から少し離れた所に移動した。


「今回の作戦はなかなかの規模だ。私達の初陣にもなるな。」

アリアにそう言われ、確かにそれもそうかと再認識する。

僕らはまだ本格的に実戦を経験していなかった。

だから、これが初陣となるのだ。


「正直こんな大規模な作戦が初陣になるなんて思わなかったよ……。」

「確かにね。でも私達はその間ずっと訓練を積んできた。やっと本領発揮できるといったところかしら。」


話し込んでいると、そろそろ出立の時間がやってきたようだ。

「じゃあな、みんな。生きて帰ってこよう。またもう一度こうやって話そう。」

「ああ!ライルお前は先陣の部隊だ。俺ら機工隊が到着するまでにやられたりすんじゃねぇぞ。」

「大丈夫よリッツ。その時は私が守る。」

「アスカ~相変わらずだよ~、ま、みんな笑顔で帰ってこようね!」


そして各々の部隊へと戻っていく。

またもう一度生きて会う為に。

それぞれが強い想いをもって。


「行くぞ!!!!全部隊!目指すは前哨基地だ!」



壁を出て、1時間は経っただろうか。

僕ら殲滅隊は一番先頭を走っている。

遥か後方に機工隊の姿が見える。


いつ侵略者と出会うか分からない恐怖。どれだけの数が前哨基地にいるかも分からずもやもやする。

もしも、侵略者の数が僕らより多ければ……。

最悪の場合は、持久戦になるかもしれない。

アレン隊長が言うには、人類側にも切り札はあるとのことだったが。


「肩に力が入ってるよ~ライルきゅん。」

「あ、すみません。」

ザラさんに言われ、肩がガチガチに硬くなっていることに今更気づく。


「あの、ザラさんは怖いとか思わないんですか?」

「思うよ~でも言っても仕方ないしね~、アタシ達がやらないと沢山の人が死ぬ。怖がっている暇なんてないね。」

「すみません、変な事聞きました。忘れてください。」


そうだ、皆覚悟してここにいる。

家族ともう会えないかもしれない人もいるだろう。

それでもここにいる。

明日を生きる為に。



「見えてきたぞ、あれが前哨基地だ。信号弾を撃て。」

「了解!」

アレン隊長が指差す方向に強固な壁が築かれた基地があった。


「全員、戦闘準備!奴ら、思っていたより高度な文明をもっていたらしい。」


言葉通り、壁の上に置かれた数基の砲台らしき物。

「ちっ!!撃ってくるぞ!散開!!!」

前哨基地より聞こえた轟音に被せるように隊長の声があがる。


全員が空に飛び上がるのと同時に乗ってきた車軸は砲台より放たれた青色の砲弾を浴びせられた。


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