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新たな人生⑥

案の定というか、アレン隊長から集合の命令があり全員兵舎のとある一室に集められた。


「全員いるな。もう知っている者も何人かは居るだろうが改めて説明する。昨日侵略者の前哨基地が発見された。その前哨基地は我々にとっても侵略者にとっても都合のいい場所に違いないだろう。軍司令部はこの前哨基地を奪取、もしくは破壊しその場所に我々の前哨基地を設置せよとのことだ。作戦は半年後だ、これからは壁外戦闘訓練を主に行い対黒き災害を想定した訓練も同時に実施する。」


まさか前哨基地を奪取できればするという発想がでるとは思わなかった。

侵略者の背丈は大体2〜3メートルの二足歩行トカゲだ。

生活空間も人間に似たものであると仮定した場合、新たに設置するより多少手を加えてそのまま使うほうが有効的だと、軍司令部は判断したようだ。


「それに、もう1つ。これは大規模作戦になる予定だ。三隊同時作戦になる。もちろん我ら殲滅隊が先陣を切ることになるがな。」

三隊が同時に行う作戦なんて今まで無かったはずだ。

そこまでするほどこの作戦は重要視されている。


説明が終わり解散した後、僕の所にアレン隊長は来た。

「お前ら一班はここに残れ。話がある。」



「アレン隊長、リオン副班長含め一班全員集まりました。」

「ああ、それでお前達を残したのはライルのことだ。」

「僕、ですか?」

「軍司令部はお前を三隊で最大戦力となるよう鍛えろとの事だ。」

「最大戦力はアレン隊長では……。」

「今はな。だがお前は適合率100%のサウズを4つも着けている。生身での戦闘能力が同じであればお前の方が強い、はずだ。今のお前では話にならんがな。」

「隊長、ライルを鍛えてその後はどうするつもりですか。」

アスカの目は少し怒っているような目をしていた。

僕の事を案じてくれるのはとても嬉しいが、隊長に反発心は持たないで欲しい。

とばっちりがきそうだから。


「その後か……。まあいいだろう。ここからは全て俺の独り言だ。ライルを人類最大の武器として扱う事となる。黒狼のゼクト、あるいは同様の特殊個体にのみ戦闘が許可される。」

「は!?」

「ただの侵略者は他の者が戦えばいい。無駄な事で傷つきいざ戦わねばならない時に使えないのであれば意味がない。最大戦力を温存する為に他の者は全力でライルを守護せよと軍司令部は命令を下した。」

「待ってください、ライルは物ではありません。」

「アスカ、お前の気持ちは分かる。ただ軍は上の命令に絶対遵守だ。これが破られた時、軍は崩壊する。」

「分かっています。ですが軍司令部はライル以外の者は誰が死んでも構わないと?」

「直接そうは言わなかったが、そういう意味だろうな。俺も聞いていて腹が立った。」

人を人と思わない発言。

軍司令部に良い思いを抱かないのは、こういう所だろう。


「作戦中、俺達は絶対にライルを守り抜く必要がある。誰を何人犠牲にしてでもな。軍司令部はライルにそれだけの価値を見出した。」

「納得出来ません!!たった1人の為に我らは無為に死にゆけと!?」

リオン副班長は激昂していた。

それもそのはず。

適合率100%とは言え、ただの新兵1人の価値とこれまで培ってきた経験を活かし戦う兵士全て。

軍司令部はこれが釣り合っていないというのだから。


「俺の意見じゃねぇ、軍司令部の意向だ。命令には従う。だが全て奴らの言いなりになるつもりはない。」

「それは一体……。」

「作戦実行時、第一班は、第二班の不調により前線へと移動する。戦闘能力は経験こそが全てだ。ライル含め第一班は全ての部隊より真っ先に戦闘へ参加する。これは俺とゼノンで決めた。」

「最初からわざと不調ということで第二班を下がらせる、ですか……。なるほどそれなら軍司令部もあまり口は出せない。そもそも最大の目的は前哨基地。ライルが前に出たからと行って作戦は中止に出来ない。そうですね?」

「そういう事だ。これは外に出て実戦経験を積むいい機会だ。こんな機会無駄には終わらせはしない。」

リオン副班長もウンウンと頷き納得したようだ。

僕だって守られてばかりでは何の成長も見込めない。

有り難い話だった。


翌日からの訓練は今まで以上に苛烈となった。

「遅い!ライル!動きが左右と合っていないぞ!」

「はい!」

殲滅隊の動きは無駄がない。

僕が足並みを揃えれず常に叱責されている。

ちらと、横を見るとアスカは涼しい顔で他の隊員に追随している。

ジェットスラスタは皆同じ装備であるはずなのに、何故こうも差が出来てしまうのか。

それは、ガス噴射のタイミングと量だ。

周りに合わせるには全員が同じタイミングで噴射し量も同じでなければ、遅れや先走るなんて事になってしまう。


「くそ!もう一回お願いします!」

「よし!全員初期位置に戻れ!」

リオン副班長の指示に全員従う。


「そんな焦るなよライル。一朝一夕で習得できる技術でもねーからよ。」

肩を叩き慰めてくれたのは、第一班のブラン・ブードルさんだ。

みんなからは頭文字をとってBBと呼ばれている。


「BBさん、ありがとうございます。」

「気にすんな!俺も最初はなかなかサウズを扱えなくて良く怒られてたしな!」


「おいおい、BB何偉そうなこと言ってんだ。お前も新兵の時ボコボコにされたの、忘れたか?」

「ああ!?言うんじゃねぇよ!ロウ!」

BBさんを茶化しに来たのはロウ。

孤児で名前も分からず、路地裏に倒れ込み病気で死にかけていたところを拾われアレン隊長が付けた名前をそのまま使ってるらしい。

この人は心臓と頭以外全てが機械になっている。

殲滅隊最高火力である。身体の隅々に弾薬や爆薬が仕込まれており、歩く人間兵器と揶揄される事もあるそうだ。

膝から、掌から、腹から、何処からでも銃身や砲塔が生み出され、全砲門発射するとそれはそれはド迫力だと、ザラさんから聞いた。

サウズではなく全身が機械の兵器で構築されているのは、まだ当時はサウズの技術もそこまで発展していなかったらしい。

サウズではないがとてつもない数の砲弾や弾丸を放出し続ければ侵略者と言えども無事では済まない。


「ロウさん、お疲れ様です。」

「ああ、俺なんかに畏まる必要なんてねぇよ、孤児なんだしよ。」

そんな事を言うが面倒見の良さでは一番と言っていいほどだ。

「俺はお前らと違って機械兵器だからな。戦い方を教える事はできねぇが、生き方くらいは教えてやれる。ま、成るようになるもんさ、世の中な。」


この班は正直言って他の班に比べて特殊な立場の人が多い。

大抵の者は四肢の何処かを欠損しサウズを着けており、ザラさんは両足、ロウさんは全身機械兵器、僕は適合率100%のサウズ持ち、そして一人称が我の人。

まあ最後のは個人の意見でしかないが。


ただ1つ言えるのは、全員が精鋭中の精鋭だってことだ。

あのアスカですら見劣りするほどの。


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