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トリカゴの住人②

宇宙暦795年。


アスカ・ラインハルトは容姿端麗、頭脳明晰。

非の打ち所がない少女だった。

ラインハルト家では蝶や花のように育てられた。

もちろん父親が兵士である為戦闘訓練も惜しまない。


レオン・ラインハルト。

人類最強、切り札、無敵の男。

色んな呼ばれ方をしているが、実際に強い。

侵略者の化け物と一対一で戦える実力があった。

人類のエースといえば彼であろう。


しかし、人類にエースがいれば侵略者にもエースは存在する。

エース対エースとなれば、地力の強さが勝る侵略者に勝ちを譲る事となるだろう。

そんな彼も1人の父親として娘にはとても甘かった。


「父上、今日は剣術訓練を教えて欲しいです。」

「お、アスカ!格闘術はもうマスターしたのか?」

「はい、父上の隊に所属する方に膝を付かせました。」

「何!?10歳の子供に負けるなんて何処のどいつだ!!」

「ガロン・バルムンクさんです。」


ガロン・バルムンクはレオン隊の副長を努める男だ。

そんな男がたった10歳の少女に負けるとは、もしや手を抜いたか?


「そ、そうか……可愛いアスカに手を抜いちゃったのかな?」

「いえ、多分本気でした。」

「ふむ、その心は?」

「負けるのが嫌だったのか試作型サウズを起動させました。」

「なっっ!!!」

こんな子供相手にサウズを使うのはあまりに汚い。


それにしても、サウズを使ったにも関わらずガロンに膝を付かせるなど精鋭の兵士ですら無理な話だ。

もしかするとこの子は人類の希望になるかもしれんな。


「アスカ、君は才能に恵まれているかもしれん。今日から本格的に戦闘訓練を始めるがいいか?」

「もちろんです。私も早く父上と共に戦場に立ちたいので。」


そうは言うが兵士になれるのは16歳からだ。

アスカにはまだ6年ある。

しかしこの6年みっちり鍛えれば私すら超えるだろう。


「よし!では早速剣術訓練にいこうか!」

その時執務室のドアが叩かれた。


「伝令!!侵略者の一部が障壁に猛攻撃を仕掛けて来ました!!」


こんなタイミングで来るとは……

「これ以上の攻撃を受けるとエネルギーの消耗が激しく枯渇する恐れがあるとのことです!」


このトリカゴは圧倒的な防御力を誇るが、一番外側に展開されている電磁障壁はエネルギーの消耗が大きい。

全ての攻撃を弾くことはできるが、その分消耗も激しくなる。


「分かった、ガロンにも伝えろ。私の隊で迎え撃つ。」

「はっっ!!」


側で黙って見ていたアスカに向かって声を掛ける。

「ごめんなアスカ。父さんはこれから戦いに行かなくちゃならなくなった。」

「大丈夫です、訓練は1人でも出来ます。」

「そうかそうか、偉いなアスカは。またいつものようにサクッと倒して帰って来るからな。」


アスカに別れを告げ、部隊の元へと向かう。

これが今生の別れになるとも知らずに。



「全員揃ったか。」

「レオン隊長、私ガロンを含め遊撃隊全員揃っております。」

「よし、全員聞け!今この時にも障壁を破ろうとせんとする化け物共が複数確認された!我々遊撃隊はこれを殲滅する!!精鋭達よ!剣を抜け!奴らに目に物見せる時だ!!!」

「ウオオオオオオオオオオ!!」


「門を開けよ!我ら遊撃隊100名殲滅作戦を実行する!!」


バイクや車に乗り込み全速力で外壁へと走る。

遊撃隊はいつどの場所でも行けるよう中心に位置する城塞都市に身を置いている。


「かっけぇなぁ!遊撃隊は!」

「まだ一度も負けたことがないらしいぜ!」

「レオン様〜!!」


民衆の声が遊撃隊の勇姿を物語っていた。

遊撃隊は発足してから一度も敗北を知らない最強の部隊であった。


走り続けて2時間は経っただろうか。

最短最速で伝令が来たといえど、外壁までは距離がある為到着までは外壁防衛隊が何処まで持ちこたえられるかに掛かっている。

レオンはこの時間が一番嫌いだった。

到着した時にもし防衛隊が壊滅していたら?壁が突破されていたら?

そんな事ばかりが頭によぎる。


「ガロン、後どれくらいで着く?」

「後1時間もあれば到着出来るでしょう。」

「そうか」

いつもの会話だ。

毎度の事ながら聞いてしまう。


「そう言えば、ガロン。お前アスカに格闘術で負けたと聞いたぞ。」

「げっ!あ、あれはですね、その、あまりに美しい少女に攻撃を躊躇ったせいでして……」

「言い訳はいい、負けた事を認めろ。それに説教するつもりはない。」

「なんと?」

「あの子は恐らく私すらも凌駕する才能がある。」

「それは流石に……」

「本気だ。あの子は人類の希望なんだ。妻が残した置き土産。兵士になる頃には私と並ぶ事だろうな。」


親目線を抜きにしてもアスカの能力は目を見張るものがあった。

ガロンもそれを感じ取った事だろう。


「失礼を承知で言いますが、レオン隊長すら超える可能性を今日感じました。」

「やはりか。格闘術は身体能力が全てだからな。」

「ついサウズを起動させてしまいましたが、あの反応速度は10歳どころか大人ですら出来ない速度でした。」


アスカの話に花を咲かせていると戦闘音が聞こえてきた。

「さあそろそろ雑談も終わりにしよう。気を引き締めろよガロン。もう数分で戦場だ。」

「はっ!」


 

障壁の外では防衛隊が戦っていた。

「状況は!?」

「レオン隊長!!申し訳ございません!!防衛隊の8割がやられました!」

何?8割だと?今までもそこまで壊滅状態になることはなかったはず。

防衛隊は前線の中でも特に戦闘が多い。故に戦闘経験の多い者達が集まっているはずだったが……


「どういうことだ!」

「1体異様に強い化け物がいます。狼のような体躯で体長は3メートルほどかと。」

「特殊個体か……」


特殊個体。それは侵略者の中に現れるエースのような存在だった。

過去にも1度出てきたことがあるそうだが、その際は私の父上が命と引き換えに倒したと聞いている。

先代遊撃隊隊長、ライオネル・ラインハルト。

最強の遊撃隊と言うのを広めたのは我が父だった。

人類最強と言われてきた父上ですら互角に終わった特殊個体。

今回の特殊個体もそうであれば私で勝てるだろうか。


「特殊個体の相手は私がする。ガロン!お前達は他の侵略者共を排除せよ!」

「しかし隊長1人で特殊個体と戦うのは危険すぎるかと!」

「バカ言え。私の先代が命を懸けて戦ったんだぞ。それに特殊個体は強すぎる。お前達では足手まといにしかならん。」

「ならば私が肉壁となりましょう!!」

「駄目だ!ガロン!お前には私の後を継いでもらう必要がある。今この時、2人もの指揮する者が消えれば遊撃隊は壊滅するぞ。」

唇を噛み締め、血を流すガロンだが己の実力は己が一番分かっているからこそ何も言えない。


「それに……ガロン。私が居なくなっても娘を強く育ててやってくれ。あの子こそが人類の希望なのだから。」

「身命を賭して、育てましょう。」

いい大人が涙目な所を見るのはきついものがあるが、彼なら任せられる。


「では、隊長。ご無事で!!!」

「お前もな!!」


そして私は1人特殊個体へと赴いた。

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