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訓練兵隊④

「行くぞー!!!サウズドライブ!!」

大きな掛け声と共に両腕から銀色に包まれた機械が刀を形作る。


僕らのサウズⅡと違い、形成は1秒で終わった。

掛け声が終わったと同時に両腕には長身の刀が生み出されていた。


「ジェットスラスタ、起動!」

ビリーは補助装置に音声で操作を受け付けるよう設定しているようで、声を認識した腕輪は黒色へと変わる。

「ガデッサ!訓練用オートマタを全て起動させろ!」

「承知した。」


訓練用オートマタ。

サウズやジェットスラスタを使った対人戦は、下手すれば死人が出てしまう。

それを避ける為訓練用オートマタという自動で行動し動き回る機械人形を使って訓練を行う。

これが何の原理か分からないが液体金属を使っているらしく、完全に破壊しても10分で元の形に修復される。

だから何度壊しても問題はない。

ただし、心臓に位置する核を壊すと二度と修復は行われない。

訓練時は必ず、核を壊さないように攻撃しなければならない。

壊すと修理に凄まじいお金がかかるらしい。


ビリーは、全て起動させろと言った。

訓練場には100体のオートマタが常備されている。

100体ものオートマタを起動させれば満足に高速機動が出来なくなると思ったが、ガデッサ教官は何の躊躇いもなく全て起動した。


「殲滅隊ほど戦闘に特化しているわけではないが、ジェットスラスタの操作に関しては機工隊が優位に立つ。だから私は機工隊を呼んだのだ。まさかアイツが来るとは思わなかったが。」

どうやら、ビリー隊長はガデッサ教官にも伝えておらずいきなり来たようだ。


「だが、ビリーの実力は殲滅隊に勝るとも劣らない。殲滅隊に入ったとしても精鋭と呼ばれる程に活躍できるだろうな。」

やはりビリー隊長だけは別格らしい。

サウズを取り着ける為に両腕を切り落とすなんて正気の沙汰ではない。

ビリー隊長曰く、理由はシンプルだ。

殲滅隊にばかり活躍させるつもりはない、との事。

それで両腕をサウズにしてしまう、その精神はどうかと思うが。


「始まるぞ、オートマタが全て起動完了した。」


「スラスト!」

掛け声と共に空中へと飛び上がったビリーは両手の刀を地面と水平に置き、再度ガスを噴出させる。

「おおおおおお!!!」

空中を高速で飛び回り、オートマタを切り刻むその様は、鬼のようだった。

あまりの速さに目が追い付かず、酔いそうになる。


オートマタはみるみる壊れていき、残りは12体となった。

「さあ、目に物見せてやるぜお前らぁ!目ぇかっぽじって良く見とけぇ!行くぜぇ!!!ひっさぁぁぁつ!!!」

一際大きい声を出したと思ったら、地面に着地し腰を少し下げ、溜めに入った。


「十二連斬!!!」

最高速度で踏み出したビリーの背中を轟音と斬撃音が同時に追いかける。


気付いた時には、オートマタを通り過ぎ一番後ろにあったオートマタの真後ろにビリーがいる。

「どうだ、見たか。これがオレの必殺技、十二連斬だ!」

言うが早いか、12体のオートマタはバラバラに崩れ落ち全て破壊された。


「レイス!見たか!昔お前に見せた八連斬を大幅に超える記録だぞ!驚いたか!!」

いたずらが成功した子供の如く満面の笑顔でこちらに歩いてくるビリー。


「ちっ。また強くなってやがるな親父は……いつになったら超えられる……」

小さく呟いたレイスのその言葉を聞き逃す事はなかった。

レイスはずっと父親を超える為に努力していたようだ。

多分機工隊に入らなかったのも、目の前でどんどん先を行く父親を見て挫けたくはなかったからだろう。

ずっと睨んでいた理由が分かって少しほっとした。

睨んでいたのは父親ではなく、なかなか超えられない自分の分身を睨んでいたようだった。


「これが機工隊の操作技術だ。ああ、最後のは真似しなくてもいい。真似しようと思っても出来んがな。」

ガデッサ教官にそう言われると少し救われた気がした。

もし、あの必殺技を会得せよなんて言われたら、どうしようかと思った。


しかし原理は簡単だ。

ジェットスラスタの出せる最大のガス噴出を両足背中同時に行い、身体のバランスを崩さないよう目の前に現れる障害物を尽く切り刻むだけ。

言うのは簡単だが、やろうと思っても出来ることではない。

そもそもジェットスラスタの最高速度は150kmにも及ぶ速さだ。

その速さで目標を視認し攻撃する、なんて技術は一朝一夕で身につくものではない。

耐えまぬ努力があって初めて会得できる技だろう。


「さあ、オレのお手本は終わりだ!10人ずつ前に出ろ!オレが直々に見てやる!!他のやつは雑談でも何でもしてろ!ただし訓練場の端に寄ったままでな。」


自分の番が来るまではしばしの休憩といった所か。

レイスはずっとブツブツ言っているので、離れて別のやつと話でもしよう。


「ライル。」

「アスカか。さっきの見た?」

「見たわ、人間努力すればあそこまで出来るのね。」

天才と言われたアスカから見てもあれは別格のようだ。

「ライル、貴方の反応速度は常人を超えていると前に言ったわね?なら努力すればあれを会得できるのではないかしら?」

「無理無理!何てこと言い出すんだ!僕に死ねと!?」

「努力すれば会得できるのでしょう、あれは。」

「無理だろ!」

アスカが恐ろしい事を言い出した。

まさか努力すればあれが会得できると思って、僕の訓練を倍にしようとでも言うのではなかろうか。


「そう……でも貴方なら出来そうだけど。」

「無理だって。反応は出来るかもしれないけど行動には移せないよ。まず恐怖が勝る。」

「でも、反応は出来るのね。」

「うっ……いやまあ多分……だけど。」

「てことは貴方にはあの速度で切り刻む一挙手一投足が見えてたのかしら?」

「み、見えてたよ。」

「やっぱり。目がいいのも長所になるわ。ちなみに私は最後の3体を切り刻む所しか見えなかったわ。」

アスカも冗談が上手くなったものだ。

そんなわけない、僕ですら12体全てに刃を添わせて行く様を見れたのだ。

アスカが見えてなかったはずはない。


「本当よ。こんなことで嘘ついて何になるの?」

「じゃあ……やっぱり僕の目は特別秀でてるってことなのか?」

「そう言ってるでしょう。貴方の悪い所はそれよ。謙遜も行き過ぎると嫌味になるわ。」

「謙遜してるつもりはないけど……分かったよ、僕の反応速度は普通の人より凄いって自覚はしておく。」

「違う。普通の人より凄い、じゃない。私より優れてる時点でそれは間違っているでしょ。貴方のは人外の反応速度よ。」

「僕を化け物のように言うんじゃない。」

「ふふっ、そういう所も……いえ何でもないわ。」


まただ。また中途半端に話を切り上げる。

最近多いなこれ。一体なんだってんだ。


「おお!お前!!機工隊希望か!よっし!やってみろ!」

声がする方を見るとこれからジェイドが披露する所だった。

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