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訓練兵隊③

訓練兵隊に入隊し3週間が経った。

まだまだジェットスラスタを上手くは扱えないが、いきなり意味の分からないところへ吹っ飛んで行くようなことはなくなった。


初日に吹き飛んだジェイドは、案外飲み込むのが早く今では他の訓練兵から教えてくれとせがまれていた。

器用さには自信があると自負していたが、あながちただの自惚れではなかったようだ。


「ジェイド!どうやったらそんなに上手く行きたい方向に動けるんだ?」

「リッツ、それはな、心だ!心が行きたいと思えばそこに行ける!いいか!行きたい方向を見るんだ!あとはシナジーで何とかなる!」

「分からねぇよ!お前の教え方は!あ!それともお前適当に教えてんのか!?」

「オレは本気だ!何で分からないんだ!ここをこうやってこう!だろーが!」

「ぜんっぜんわかんねぇよ!バカか!?」

「うるさい!お前もバカだろ!」

「なんだと!?」

「なんだ!」


結局このざまだ。

教えて欲しいと近づいてきた者も、ジェイドの教えに理解が及ばず苦笑いしながら去っていく。


「はーおバカが戯れるとうるさいなー」

リコもアニキをバカ扱いしているが、それでいいのか?

「ライルはどう?上手く操作できた?」

「いや、とりあえず行きたい方向にはなんとか飛べるようになったけどコントールが効かないな……。」

「だよねー、というか空中を動き回るってのは人間には難しいよー」

なんだと?空中といったか?


「待ってくれ、リコ。空中?僕は地上の高速機動の事を言ってるだけど。」

「あ、そっち?地上の高速機動はまあなんとかいけるかな。空中機動が難しくてさー」


駄目だ。リコも人外だった。

誰か同じレベルは居ないのか。

少し離れた所にアスカが居た。

友達に教えを請うならまだいいかと、近付きかけたが、空中に飛び出したのを見て近付くのを辞めた。

誰かいないものか……同じレベルが……


「ラ、ライル君。ど、どう?上手くいってる?」

声をかけてきたのはオルザだった。

「オルザ!そっちこそどんな感じ?僕はまだ地上機動がなかなか出来なくてさ……」

先手を打っておいた。地上機動と言って空中機動の話になるならこいつも駄目だ。

「まだ地上機動?当たり前じゃないか。い、今はみんな地上機動の、練習してるんじゃ、ないの?」

「ああ、いやなんていうかさ。ほらあそこ。」

そうしてリコやアスカの方を指差す。


「ええ!?もう空中機動が出来てる!?」

オルザ、君は良いやつだ。僕と同じレベルを見つけたよ。


そこからは何となく居心地の良いオルザとずっと練習することになった。

お互いのレベルが近しい事もあってか、話も弾む。


「そう言えばさ、オルザってルインの前にルって入るだろ?あれどういう意味なんだ?」

「あ、ああ、皆と違うよね……実はボク滅んだ国の生き残り、なんだ。」

昔の人類は国が沢山あって、国によって文化も違ったそうだ。

今では1つの国しか残っていないけど。


「ボクの国では、名前と家名の真ん中に一文字入るのが通常なんだ。」

「国によってそんな違いもあるんだな。じゃあオルザのルも意味があるとか?」

「ボクの名前に入っている、ル、は名前と家名で同じ文字、が、あるだろ?それを真ん中に追加するのが習わしなんだ。」

「てことは僕ならライル・イ・カーバイツになるってわけか!」

「そうそう、そんな感じ。あまり意味はないと思うけど、ね。」

国によって文化や名前の付け方にも違いがあるのはとても面白い。もっと歴史を知りたくなった。


オルザとはあまり話す機会がなかったが、とてもいい機会になったと思う。



「おー!やってるやってる!よーし!お前らぁ!全員集まれぇ!」

いきなり大男が現れたと思ったら全員招集された。

「ほほーなかなか良さげな奴が多いじゃねぇか!なあガデッサ!」

「お前は相変わらずだな、ビリー。」


ビリー?そうか、ビリー・ガーランド。

レイスの父親だ。

でも何でこんなとこに?


「お前ら知ってる奴も多いだろうが一応名乗っておく。オレはビリー・ガーランド!機工隊隊長だ!覚えておけ!」

身体がデカければ声もでかいのか。

「ちっ、親父が来たのか……」

「レイス?」

苦々しい顔でビリーを睨むレイスが目に入った。

「あ?ライルか。機工隊はジェットスラスタの操作に手慣れてるからな。今日特別教官として来るってのは聞いていたんだが……まさか親父自ら来るとはな。」


何がそこまでレイスを苛立たせるのか分からないが、隊長自ら来てくれたのはありがたい事だろう。


「お前達!今日は機工隊隊長自ら教えに来てくれた、今やってる訓練は一先ず置いて並べ。」

ガデッサ教官の言う通りに全員並び直す。


するとビリーがコチラを見つめ歩いて来た。

「お?レイスじゃねぇか!オメェ殲滅隊に所属する事が決まったらしいな?なんで機工隊じゃねぇんだよ。」

「うるせぇな、別にいいだろ。」

「良かぁねぇよ!オレとお前で隊長副長やろうぜって言ってたじゃねぇか!」

「うるせぇ!俺は俺の生き方を選ぶ。」

「ほー、大人ぶりやがってよぉ!ん?横のお前、もしかしてカーバイツの息子か?」

レイスと話していたビリーは僕に目を向けるとそんな事を問いかけてきた。


「あ、はい。ライル・カーバイツです。」

「そうかそうか……もう、そんなに経ったのか……」

とても悲しそうな顔でじっと見つめてくる。

「カーバイツは俺のダチでもあったんだ。懐かしいぜ……お前はアイツの面影が残ってる。息子がいるとは聞いていたが兵士になる歳になっているとはな……」

また初耳な情報を知ってしまった。

うちの父は結構顔が広かったらしい。


「アイツは優秀だったぜ。オレもスゲェがそれでもアイツに模擬戦で勝てたことはなかった。まあ討伐小隊と機工小隊で別れちまってからはたまにしか会わなかったが、同期でな。お前達のように訓練時代は一緒に馬鹿やったもんだ……」

ビリーは少し眼に涙を浮かべたが、すぐに腕で拭いとった。


「そんなアイツが残した1人息子だ。今日は俺を楽しませてくれよ?」

「き、期待に応えられるかは分かりませんが精一杯やらせていただきます!」

肩に手を置き2度ほど叩いた後、元の位置に戻って行った。


「わりぃなお前ら!時間を取った。早速だがまずはオレのお手本を見せてやろう。訓練場の端まで全員下がって待ってろ。」

ビリーが装備を着け始め、僕らは皆端へと寄る。


「ライル、親父はあんなだが実力は本物だ。良く見ておけ、双剣使いの名は伊達ではない。両腕を見てみろ。サウズを着けるからって両腕をわざわざ自分の部下に切り落とさせた狂人だ。」


ビリーを良く見ると、サウズを着けている。

それも両腕に。

色は黄色。適合率70%台の強者の1人だ。



「よっし!準備が出来たぜ!見ておけお前らぁ!これが実戦で通用する高速機動だ!!」


そこからはビリーの独壇場となった。

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