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王国への挑戦⑧

アレンは血が滴るサウズを握り国王の部屋へと足を踏み入れた。

国王の家族は身を寄せ合い震えている。

アレンがそちらを見ると小さく悲鳴を漏らし顔を伏せた。


「ま、待ってくれ!ワシの家族だけは助けてくれんか!」

飾りの剣を構えたままアレンに叫ぶ国王は、膝が震え立つのもやっとといった所だ。

アレンは何も反応しない。


しばらく無言が続くと、アレンは一歩踏み出した。

国王は後退り、大量の汗を流している。


「お前達の罪は重い。お前が家族を守ろうとするように俺達も仲間を守って戦い続けてきた。だが、それは何の意味もない戦いだった。無駄に命を散らしたあの年月は何の意味もなかった。」

「ほ、本当にすまない!!ただアルマイト鉱石が欲しかったのだ!地球の発展には必要不可欠なエネルギーだと分かっているだろう?ワシはこの星の為にお前達を……」

国王の言葉はそれ以上続かなかった。

いや、続けられなかった。


瞬時に首を斬り落とされたからだ。

アレンは床に転がる国王の首を踏み付けた。


「俺達は何の為に命を散らした。なあ?侵略行為に手を染め無実のアーレス星人を殺してきたんだぞ。その恨みが返ってこないとでも思っていたのか?ククク、おめでたい頭をしているな。」

父親の首を斬り落とされた家族は言葉も出ず、ただ震えて部屋の隅に固まって見ていた。


「罪の責任は上に立つものが清算するべきだ。お前達は見逃してやる。だが、許したわけではないと思え。それに、これからこの国は滅ぶ。生きたいのなら必死に亡命でもするんだな。」

アレンは震えた家族にそう言い残し斬り落とした首を掴んで部屋を出ていった。


城の頂上まで登ったアレンは国王の首を掲げ大声で叫ぶ。


「諸悪の根源は打ち取った!!即刻戦闘を辞めろ!!!」

声が聞こえた者は上を見上げ、自国の王の首を見て膝を付く。

国のトップが討たれれば戦争は終わる。

それはどの時代であっても変わらぬ事であった。


僕らが国王の部屋に辿り着いたのはその後すぐであった。



「終わったみたいだな。」

「そうね、やっと……平和な日々が来るのね。」

失ったものは多いが、それ以上に達成感があった。


僕らは城を出て、城門前で集まる事にした。

突入した時に比べて少し人が少なくなったところをみるに、何人かは犠牲になったようだ。

やっと終わったと誰もが喜びを露わにしている。

ただここに来るまでに地上へ落ちた人達がどうなったのかが気がかりだった。


「ザラさん、無事だといいな。」

「あの人はああ見えて案外しぶとい人よ。多分どこかで傷を癒しているんじゃないかしら。」

早く救助に行きたいが、どこにいるかが分からない以上闇雲に探し回っても時間がかかるだけだ。



王国内に散らばった仲間を集めるのにどうしようかとアレン隊長らと話し合っていると、急に悪寒が走った。

ここにいては死ぬ、そんな感覚だ。


「全員ここから離脱を!!!!」

咄嗟に叫ぶが、みんな何を言っているんだと首を捻る。

それもそうだろう。

先程戦闘が終わったばかりだ。

気を抜いている状態で、そんな事を言われても相手にしない。


「ライル?どうしたの?」

アスカは僕の真剣な表情を見て、問いかけてきた。


「急いでここから離れた方がいい!!!アレン隊長!!」

「……それはお前の勘か?」

「はい!お願いします!!!」

アレン隊長は数秒黙った後、全部隊に向けて大声を上げた。


「全員この場から離脱だ!!!急げ!!!!」

隊長が言うと流石に何かあると考えたのか、みんなジェットスラスタを起動させ空に上がった。

隊長は僕を信じてくれたらしい。



僕らが出来るだけ距離を取ろうと城を背にした時、爆風のような衝撃が背中を押した。

衝撃が強く空に上がった者は全員吹き飛ばされた。

視界も白く染まり何が起きたかも理解できないまま飛ばされる。

空中で体勢を整えようとしたが、飛ばされた勢いが強すぎて上手くコントロール出来なかった。


殆どの者は地面を転がった。

幸い速度はあまり出ていなかったお陰で建物と激突するような事は避けられたが、擦り傷や打撲は避けられなかった。


身体を起こし周りを見ればみな痛そうに立ち上がりだした。

重傷者はいなかったようでホッとする。


「アスカ、大丈夫か?」

傍にいたアスカに声を掛けると上手く着地したらしく擦り傷もなかった。


「一体何が起きたんだよ……。」

「貴方の勘は正しかったようね。あれを見なさい。」

アスカが指差す方を見ると、そこにはあるはずの物がなかった。


さっきまで僕らがいた城がほぼ半壊していた。

上部は完全に失われ、かろうじて残った下部もボロボロになっている。

それを見てようやく僕は理解した。

さっきの爆風と視界を覆う光は何らかの攻撃だと。

それが城に直撃したらしい。


中に残されていた国王の家族や近衛兵の生き残りは全員消し飛んだだろう。

城が半壊する程の一撃だ。

生きているはずがない。


ただ一つ疑問なのはどこから攻撃されたのかだ。

奇跡的に僕らはその場を離脱したお陰で助かったが本当であれば僕らもあの場で蒸発していた。



「ライル、お前の勘に従って良かった。感謝するぞ。」

アレン隊長が近寄り礼をしてくる。

しかし今はそんな礼などどうでもよかった。


城の後方から目が離せない。

そんな僕の態度を不思議に思ったのかアレン隊長も僕の見ている方へと視線を移した。


「馬鹿な……なぜあんなところに……。」

有り得ない。

僕らはその場に立ち尽くし見ている事しか出来なかった。


「輸送船アポロン……生きていたのか……。」

誰もが口を開けて見ていた。

死神騒ぎのせいで行方をくらましてしまっていたアポロンが何故ここにいる?

それにあの威力の兵器はアポロンに搭載されていないはず。


何もかも理解が追い付かなかったが、今言える事はこの場から逃げた方がいい、ということだけだ。



輸送船アポロンに積まれた主砲がこちらを向いていたからだ。

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