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王国への挑戦④

今僕らの前にはヴァインと皇帝が立っている。

周囲には数えきれない程の人がいた。

帝国の総戦力と僕らの軍がこれから攻撃に出る。


作戦は簡単だ。

未だ王国は厳戒態勢を敷いてはいない。

その隙を突いてバルバトスの主砲で道を拓き、各自一気に突撃する。


バルトステア王国は大きく分けて三つの地域がある。


一つ目、平民地区。

貴族至上主義を掲げる王国にとって平民は取るに足らない存在だ。

故に今回僕らはそこを攻撃する事はない。

多少、兵は割くかもしれないが警戒程度しかしない。

平民には武器はおろか、戦う意思などないからだ。


二つ目、商業地区。

商人や階級の低い貴族が住まう地域。

ここには兵が滞在しており、王国の主義に染まった者しかいない。

戦力の三割をここに当てるつもりだ。


三つ目、王都。

王国の全てが集まる都。

残りの七割を持って一気に叩き潰す必要がある地域だ。

恐らく一番激戦になる場所でもある。

ただ、王都は帝国領から一番遠い。

もちろん守りも固く生半可な戦力では返り討ちに合うだけだろう。

なので航空戦力と呼ばれる飛行型兵器は全てここに費やされるとの事だ。


僕ら火星連合軍は力を温存しつつ王都を目指す。

帝国の兵力と比べても圧倒的に数が少ないが、個々の戦闘能力は目を見張るものがあるからだ。

少数精鋭で王都に切り込む。

帝国軍と共に王都を目指し、入り込んだ所で僕らは一気に各所へ散る。

ジェットスラスタを使う僕らに銃弾を当てることなど出来ない。

撹乱しつつ、国王を斬り伏せる。


これが今回の作戦だ。


「我が国は長年虐げられてきた。」

色々考えていると皇帝がようやく口を開いた。


「数百年に渡る奴隷国としてのあり方は正しいのか?いや!違う。先祖である暴君がしでかした過ちのせいで我々はずっと辛い生活を送らされる羽目になった。しかし!いつまで続く?終わりのない搾取される毎日……抗いたくとも心の奥底に潜む怯えがそれを許さなかった。だが、今!数百年の時を経て、火星から我々の同士が戻って来た!我が先祖が送り出し放置し続けていた火星の民だ!彼らは我々に手を貸してくれるという。ならば、我らも立たねばならん!!!帝国民よ!憎き王国に刃を突き立てろ!引き金を引き絞れ!我が国は王国に鉄槌を下す!!」

「「「「ウオオオオオ!!」」」」


皇帝の演説は力が入っていた。

今までの気持ちを吐露したとでもいうのか、拳を握り締め語りかけるような口調だった。

しかしそのかいあってか、帝国の者達はみな一斉に拳を空に突き立てた。

歓声が空気を震わしている。


「傾聴せよ!我らは火星連合軍!今より帝国に力を貸す者の名だ。覚えておけ。手を取り合い仲良しこよしなどと言うつもりはない。ただ我々は火星で地獄を見てきた者の集まりだ。王国など取るに足らん!精鋭達よ、サウズを解き放て!疾風の如く駆け抜けろ!」

「「「「了解!!」」」」


僕らは遂に動き出した。

王国を打倒するために。



王国との国境に移動する時にレイナに呼び止められた。

なんだ、と返すと私も参戦したいと言い出したのだ。

「それは駄目だ。もう君は兵士じゃない、国の姫なんだろ?戦うのは僕らだけでいい。」

「嫌!ボクだって一緒に訓練したじゃない!昔ほどではないけど、それでも一般の兵士よりかは戦える!」

「無茶言うなよ……レイナを連れていけば問題になる。」

ワガママを言い出したレイナを何とかしてもらおうと隣りにいるルイを見ると、しっかり装備を着けていた。


「おい……お前も姫の護衛だろ。前線には連れて行かないぞ。」

そう言うと愕然とした顔を見せ膝から崩れ落ちた。

誰か何とかしてくれないかな、と辺りを見回すと丁度ゼクトが通り掛かった。


「む?何をしている。前線からはぐれるぞ。」

「いや、それがレイナとルイが一緒に行くって聞かなくてさ……。」

「む、ベータに紛れ込んでいた人間か。良いではないか連れていけば。」

ゼクトまでそんな事を言い出した。

レイナとルイは味方をつけたと言わんばかりにドヤ顔を見せる。


「いや、駄目に決まってるだろ。姫なんだぞ?」

「構わんだろう。どのみち戦いに負ければ帝国は滅ぶ。それなら禍根が残らぬよう戦わせてやったら良いではないか。」

ゼクトはあくまで結果しか見ていない。

結果的に勝てばいいかもしれないが、死ぬ可能性がある以上前線に出すわけにいかない。


「大丈夫だよライル。ボクだってただ毎日無為に過ごしていた訳じゃない。いつもルイに稽古をつけてもらってたんだ!」

「稽古をつけていた程度でなんとかなるわけないだろ。」

「ただの人間がベータよりも優れていたと訓練兵時代に示したでしょ?少なくともそこらの兵士にはまだ負けないよ。」

「レイナ様の言う通り。ただの人間がベータに混ざって対等に戦えていた時点で、戦闘技術の才能があると思う。」

もう何を言っても引かなさそうだ。

出来るだけ一緒に行動すればなんとか守れるか。


「分かった。ただ皇帝陛下が駄目だって言えば諦めろよ。」

「あ、それは大丈夫。話はつけてきたから。」

ニッコリと微笑むレイナは、多分娘である強みを十分に活かしたんだろうな。

父親なら娘が涙を流せば、頷くしかできないだろう。


「どのみちここにいても王国から反撃を貰えば、安全ではなくなる。何処にいようがこれからはこの地球全土が戦場となる。覚悟を決めよライル。」

「わかったよゼクト。それより主砲の後はアーレス星人の部隊が突撃するんだろ?未知の武器だってあるんだ、油断するなよ。」

「ククク、誰に向かって言っている。我はアーレス星人最強だぞ?王国がどれほど強力な兵器を使おうが蹴散らしてくれるわ。それに切り札は奴らだけの特権ではない。」

ゼクトの言葉は意味深であったが、何か隠している力があるようだ。


準備は整った。

後は開戦すれば僕らにとって最後の戦いが始まる。




「バルバトス主砲発射用意!撃てぇぇぇ!!」

ヴァインの号令と共に青白い破滅の光が王国の領土へと降り注いだ。

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