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訓練兵隊

四肢を全てサウズにしてるなんて、この人に一体何があったんだ。


ゼノンは四肢の全てにサウズを取り付けていた。

いずれかの戦いで四肢を失う程の大怪我を負ったということだ。

それに、サウズは身体が拒否反応を起こせばそのまま死に至る可能性もある、諸刃の剣だ。

それを4つも取り付けるなんて失敗する可能性が高くなる。

正気の沙汰じゃない。


「まあそういうわけでよろしくと伝えに来ただけさ。アリア君、ライル君、それと君はアスカ君かな?で、レイス君とオルザ君だ。2年後会えるのを楽しみにしているよ。」


それだけ言うとゼノンさんはまた何処かへと消えていった。

「なんだったんだ、今のは。」

「まああの人らしいっちゃああの人らしいけどね。ま、それは置いといてせっかく合格したんだ!私の家でパーティといこうじゃないか!」




場所は変わってアリア邸。

両親は別の場所で住んでいるらしく、この家にはアリアと使用人しかいなかった。

「では!合格を祝って!かんぱーい!」

「かんぱーい!」


各々自己紹介から始まり、世間話に花を咲かせる。

僕も一通り飲み食いした後、外の空気を吸いたくなりベランダに出た。

すると、同じようにレイスも出てきた。


「ライル、だったな。お前のダチ、リコだったか?悪かったな怪我させて。」

どうやら、リコとの模擬戦で傷を負わせたことを謝りに来たらしい。

「謝ることじゃないよ、あれは模擬戦。お互いに怪我するのは承知の上だ。それに僕より本人やリッツに謝った方がいい気がするけど。」

「ああ、模擬戦が終わってすぐに俺も医務室に向かった。その時に声は掛けた。リッツにはさっき謝ってきた。」

わざわざ1人ずつ謝って回ったらしい。

律儀な人だ。


「誰も怒ってなかっただろ?」

「そうだな、謝る必要なんてない、弱かったリコが悪いってさ。」

リコにしてみれば、何故謝る?と疑問に思っただろう。

弱ければ、負ける。

それがこの世の常だ。


「俺も手加減してやれば良かったんだが、戦闘になるとつい力が入っちまってな。」

「それは仕方がない。誰だって戦闘時に余裕なんてないからさ。」

「お前とアリアの模擬戦は肝が冷えたがな。」

「ああ、あれはお互い熱くなりすぎた。反省してるよ。それにアスカにも怒られたし。」


あの模擬戦は伝説になるだろう、とガデッサ教官も言っていたが、誰もがどちらか死ぬと思ったらしい。


「お前の反応速度は異常だった。何か専門の教育でも受けたのか?」

「いや、そんなことはないよ。ただ昔からカンが鋭かっただけで。」

「カンが鋭い、か。それだけで済ますのもどうかと思うが。戦場ではいかに傷を負わず戦うかが大事になる。その分お前のその特技はかなり有利だ。かと言って無茶はするなよ。同じ隊のやつが死ぬのは見たくない。」

そう言うと、レイスはまた部屋に戻って行った。


レイスと入れ代わりに今度はアスカが出てきた。

今日は僕に来客の多い日だ。


「ライル、同じ隊に入れて良かったわ。」

「アスカ、そう言えば昼時に言ってた、僕と同じ道を行くってやつ、なんだったの?」

「あれは忘れなさい。」

「そうは言っても気になるんだけど。」

「忘れなさい。」

有無を言わさない迫力に僕は黙った。


「私は、貴方のことを2年間見てきた。」

と思ったらアスカが何やら語りだした。


「貴方の努力は人を喜ばせる。誰よりも努力をしていたわ。でも誰よりも力が弱かった。それでも諦めずに剣を振っていたわね。遂には私すらも超える反応速度を手にした。努力が実る瞬間を私は見ていたわ。だから、貴方には死んでほしくない。共に生きていきたいと感じたの。きっとこれが……いえ、何でもないわ。」

ただ独り言のように話しては、部屋に戻っていった。

僕は黙って聞いていたが、結局何が言いたいのか分からなかった。


コソッとリッツにも聞いては見たが、いずれ分かる、としか答えなかった。




「そう言えばオルザは来なかったみたいだけど、アリア、ちゃんと誘ったのか?」

「もちろん誘ったさ。そんな除け者にするようなことはしないよ。ただ人と関わるのが得意じゃないって言ってたよ。」

「そっか。オルザとも話してみたかったな。」

「どうせ明日からは訓練兵隊に入隊するんだ、嫌でも話す機会はできるよ。」



宴もお開きになり各々帰るべき場所へと帰っていった。

僕はリッツの家に世話になっている為、リッツとリコと3人で帰路を共にする。


「ねーライル、ベランダでアスカと何話してたの!」

「いや、まあ色々だよ」

何故かリコは気になっているみたいだが、結局何が言いたいのか分からない話だったから聞いても意味がないと思うが。


「アスカにも明日聞くから!」

「別に構わないけど、大した話はしてないよ?」

「ライルは大した事なくてもリコには大した事なの!」

「そ、そうか。」

リコはプリプリ怒っているが何に対して怒ってるのか良く分からなかった。


「ライルぅ、おめぇも罪な男だぜ。」

リッツは意味深な事を言うが、僕は首を傾げるだけだった。



グラストン家に帰り、合格したことを伝えるととても喜んでくれた。

特に殲滅隊に入った事は、光栄な事だと何度も言っていた。

それだけ、殲滅隊というのは誰もが憧れる部隊だそうだ。


このトリカゴの中にはいくつもの部隊が存在する。

殲滅隊、討伐隊、機工隊、外壁防衛隊、中央近衛隊、そして魔導隊。

魔導隊のことは良く知らないが最近出来た新設の部隊らしい。

グラストン夫妻もあまり詳しく知らなかったが、何やら新しく開発した魔導兵器とやらの運用を主に行う部隊だそうだ。


侵略者も最近は、小隊のような形を取りながら攻めてくるらしい。

勿論昔と違い今はサウズのお陰で互角に戦えている。

しかし、黒狼のゼクトは姿を現さないそうだ。

他の特殊個体はまだ見つけられていない。

多分だが、黒狼のゼクトだけではないだろう。


僕らは2年後、外の世界に出る。

その時に黒狼のゼクトと出会えることを祈るばかりだ。


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