王国への挑戦③
船に運び終えた兵器の類は主要メンバーに説明されることになった。
僕ももちろんそこに参加している。
「よし!じゃあまずは自己紹介からだ。俺はオスカー・ハインリッヒ。カイルの友人だ。今は帝国の宇宙開発研究所の所長をやってる。その俺が内密に進めていた開発がある。それがこれらだ!!」
何故カイルの友人がまだ生きているのかなど細かい説明は省いたせいで、皆呆けた顔をしている。
しかしオスカーさんはそんな事お構いなくで、後ろに運び込まれた兵器の類いを指さした。
どれも見た事がない物でみんな戸惑っていた。
「どれもが強力な奴だぜ。そうだな……まずはこれから説明しようか。」
オスカーさんは数ある兵器の中から一つを選んで手に取った。
携帯式のロケット砲のような見た目をしている。
「こいつはマグブラスターつってな、戦艦の主砲並みの火力を持つ歩兵用の兵器だ。反動も凄いから作ったはいいが俺らみたいな普通の人間には扱えん。でもあんたらなら大丈夫だろ?」
ニヤッと嫌らしい笑みを浮かべるオスカーさんはなんだか楽しそうだ。
「今時電磁障壁は当たり前のように使ってるからな。実弾兵器を使う前にマグブラスターで障壁を剝がしてやるって寸法だ。」
電磁障壁も突破する威力の兵器が持ち運べるなんて恐ろしい。
使い方は後でじっくり教わろう。
「んで次にこいつだ。これは超高度落下式ミサイルだ。もちろん反動には気を付けてくれよ?威力が高いって事はそれなりに反動だってあるからな。」
「それはどれくらいの火力があるんだ。」
アレン隊長が質問をする。
待ってましたと言わんばかりの笑みでオスカーさんは答えた。
「これは一度撃たれると迎撃は不可能だ。速いし高度がありすぎてレーダーでは捉えられない。威力は半径1キロが消し飛ぶ。間違えてもここをロックオンなんてすんなよ?全員蒸発するぜ?」
威力が凄まじすぎてアレン隊長もちょっと引いている。
戦略兵器とでもいうのだろうか。
「後はこいつだな。これは結構俺の中でも気に入っててな。超広範囲破壊兵器ドラゴンブレスだ。」
名前かっこいいな。
僕は好きかもしれない。
「砲口から放たれた一発のロケット弾が着弾すると辺りに圧縮された重力場が生まれる。半径5キロ圏内は真っ新な更地になる。ただ一発のコストが重いから連発は避けて欲しいがな。」
前言撤回。
好きじゃないな。
なんだその威力。恐ろしすぎて引き金を引くのも躊躇してしまいそうだ。
「王国を壊滅させる為に造ったやつだ。威力が高いのは出来るだけこっちの被害を減らす為だぞ。あの国にはどれだけ煮え湯を飲まされてきたか……そのせいでカイルも……あんたらだってそうだ。元はといえば帝国の皇帝が始めた戦争だったかもしれねぇが長く俺達を虐げすぎたんだ王国は。」
オスカーさんは手を握りしめ歯を食いしばる。
友人を失った事がやはり辛いのだろう。
「まあ全部は説明しきれない。後々話すからとりあえずこういう物があるって事を覚えておいてくれ。それと宇宙開発研究所は全面協力する。そのつもりでいてくれ。」
「助かるぞオスカー。お前に会えたことはとても大きい。これからの戦いは我々の知識では対抗できない部分も出てくると思っていたところだ。」
「任せておけゼクト。俺が知りうる限りの知識と技術を提供する。その代わり必ず王国を倒してくれ。俺は戦えないからな。」
オスカーさんはゼクトの肩を数度叩き、ゼクトもそれに答えるように頷いた。
ふとオスカーさんが僕の方を向く。
数秒固まったと思ったら、首元に視線がいっていることに気づいた。
何かあるのかと思っていると、オスカーさんから声を掛けられた。
「そのネックレス……どこで手に入れたんだ?」
「これは、アーレス星人の人が戦場で拾ったらしくて、人間の物だからってくれたんです。」
「そうか……いや、まさかこの時代にそれを見る事ができるなんてな……。」
オスカーさんは少し涙ぐんでいた。
このネックレスに何か思い入れでもあったのだろうか。
それを聞こうとするとオスカーさんが先に答えた。
「そのネックレス……間違いない。カイルが嫁のニナにプレゼントした奴だぜ。かなり高い物だってんでニナは毎日のように着けていたからな。」
嘘を言っているようには見えない。
まさかこのネックレスがカイルの奥さんの物だったなんて。
という事はその戦場で奥さんは……。
「ニナがその後どうなったかなんて、知る訳ないよな。」
「はい、すみません。これを拾った者も着けていた本人は分からかったみたいです。」
カイルとその妻とはよほど仲が良かったのだろう。
オスカーさんからしてみれば、約10年前に顔を合わせて会話もしていた感覚のはず。
「もし良ければ、このネックレスをカイルさんの住んでいた所に供えてあげられませんか?」
「それは無理だ。カイルの住んでいた家は既に取り壊されてその上にはでけぇビルが立っているからな。」
この地球にカイルとニナがいたのは400年以上前の話。
生家がなくなっているなど、当然であった。
「オスカー、お前から見て我々の戦力、この兵器、そして帝国の戦力で王国に勝てる可能性はどうだ?」
ゼクトが質問をする。
王国を打倒するためにこれらの兵器を作っていたのなら、王国の脅威ももちろん分かっているはず。
それを分かっていてゼクトは質問したようだった。
「勝率は4割ってとこだな。残念ながらどれだけ強力な兵器、強力な兵士を揃えた所で数があまりに違いすぎる。」
「質では勝っているのか?」
「質だけでいえばな。ゼクト、お前が1人圧倒的な力を持っていても数の暴力は偉大だぜ?まあお前が何十億の人間を相手に戦えるってんなら話は別だが。」
流石のゼクトでもそれは不可能のようで、悔しそうに唸っていた。
「でも知ってるか?今この帝国では最高の頭脳と呼ばれているのはこの俺だ。最高の戦闘力と最高の頭脳が合わされば勝てない相手にだって勝てるってもんよ。」
オスカーさんは自分の胸を片手で強く叩く。
ついその様を見て笑ってしまった。
この人はとても自信家らしい。
僕らは2週間を切った決戦の日が待ち遠しくなっていた。
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