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惑星守護艦隊⑨

バルバトスの眼下には見たこともない光景が広がっていた。

青い大量の水は海と言うらしく、無尽蔵の塩水だそうだ。

緑生い茂るのは様々な植物。

どれも見たことがない物ばかりで新鮮だった。


何より驚いたのは高層建造物が多いことだ。

トリカゴの壁など比較にならないほど巨大な建物が多い。

特に一番大きなのは街の中心にあった遥か高くそびえ立つ塔だ。

ヴァインが言うには、そこにシュラーヴリ皇帝がいるらしい。

僕らは今そこに向かっていた。


「ヴァイン、全員の装備は確認した。いつでも出れるぞ。」

アレン隊長がフル装備で報告しに来る。

僕も同じくサウズやジェットスラスタを着けていた。


「戦闘になることはないと思うぞ。」

「なに?何故それが分かる。」

「見てみろ。」

ヴァインに促され窓の外を見ると青い信煙弾が上がっていた。

帝国では、青い信煙弾は敵対意思がないことを示すサインだそうだ。

しかし油断は出来ない。

何しろ僕らにとっては未知との遭遇なのだ。

自然と身体に力が入る。


「私が最初に降りる。ないとは思うが念の為護衛は頼むぞ。」

「任せておけ。お前に死なれると困るということがここ直近でよく分かったからな。」

ヴァインが居なければここまで来れていなかった。

それは誰もが同じ意見であった。

故に護衛にはアレン隊長とゼノン副長が就く。

僕とアスカもその後ろに控えていた。


「まさか守護艦隊が破られるとは思っていなかっただろうからな。我々を警戒しているのかそれとも油断させて討つつもりか……まあ顔を合わせれば分かる事だ。全員覚悟はいいな?」

その場にいた全員が頷く。

バルバトスとイカロスはゆっくりと広場へ降下を始めた。

誰も口を開かない。

ピリピリとした空気が漂っている。


実のところ、ゼクトが最初に降りると言っていたのだが相手を威圧するとヴァインが反対し少し後ろから出てきてもらうことになった。

確かにいきなり船から大きな狼が降りて来れば、彼らは気が動転して攻撃してきてもおかしくはない。


バルバトスが着地したのを確認し、ハッチの前に僕らは並ぶ。

後は目の前の扉を開けば、遂に地球人と邂逅する。

緊張の一瞬だった。


「開け。」

ヴァインがただ一言それだけを告げる。

ガタンッと音を立てながらハッチは開いていく。

隙間から覗く外の光が少しずつ強くなっていき、扉は全開した。


僕らの前に立っているのは数人の男女。

服装から見て皇族であることは確実であった。

ヴァインと歳が近そうな男が真ん中にいる。

恐らくあれが皇帝陛下なのだろう。


ヴァインが一歩踏み出すと、彼らはより緊張感が増したように見えた。

顔も強張っている。

僕らと同じように緊張しているようだ。


僕らも続いて降りていくと、ゼクトが姿を現した途端周囲にいた兵士らしき者達が身構えた。

しかしそれも一瞬、ゼクトが周囲に目を向けるとすぐに構えを解いた。

最初から手を出すなと厳命されているようだった。



数秒間の無言が続く。

先に口を開いたのはヴァインであった。


「初めまして、シュラーヴリ皇帝。私は火星侵略先行軍総司令ヴァイン・ノクティス。帰ってきましたよ地球に。」

「……私はシュラーヴリ皇帝、アスカロン・シュラーヴリだ。よくぞ帰ってきてくれた。」

「よくぞ?ククク、面白い冗談ですな。それで?我々を快く招いてくれたようですが、何の意味があるのでしょう?」

「……まずは私からお話をさせて頂けませんか?」

皇帝とヴァインの会話に割って入ったのは1人の女性。

いや、姫と思われる格好をしている。


「私は、レイナ・シュラーヴリ。この国の第一皇女ですわ。」

声に聞き覚えがあった。

アスカもそう感じたようで、不思議そうな顔をしている。


「護衛のルイ・ジェインです。」

少し小さめの声でレイナと言った女性の斜め後ろから聞こえた声も聞き覚えがある。

しかしその疑問もすぐに解決した。


「火星ではレイン・クリストファー。こっちのルイはルナ・ジーンと名乗っていました。」

ずいぶん大人びたように見えるが、まさかの2人であった。


「レインとルナ!?なんでここに……。」

僕はつい驚きで前に出た。

アスカも同じ様に驚いた表情を見せる。


「久しぶりだね、ライル、アスカ。話すと長くなるんだけど、聞いてくれるかな。」

少し微笑むその顔は昔見たレインであった。

ずっと疑問だった。

何故レインは僕らに比べて体力がないのか、それにいきなり姿を消した事、やっと繋がった。


「そうか……レインはこの国の姫様だったわけか。地球人だったから、僕らに比べて体力もなかったんだな。」

「そう……いきなり行方をくらましたのは本当にごめんなさい……。誰にもバレてはいけなかったから……。」

俯き悲しそうな顔をするレインは本当に申し訳なく思っているようだ。

しかし話したい事は沢山ある。

それはヴァインにも理解できたようで、提案を持ちかけた。


「ふむ、どうやら昔の知り合いのようだ。どうですか?1度話をする機会を設けるというのは。」

「!それは願ってもない事だ!是非お願いしたい。ではこちらに来て頂けるだろうか?流石に全員は難しいが何人か一緒に来て欲しい。」

ヴァインはもちろんの事、護衛であるアレン隊長とゼノン副長、それに僕とアスカ。後はゼクトが共に行くこととなった。

他の皆は船内で待機だ。

勝手に動き回られてもそれはそれで困るだろうと、ヴァインが全員にそう指示を出していた。



皇帝に連れて行かれた部屋はとても大きな会議室のような所だった。

人数に見合っていない大きさで、空席が目立つ。


「改めて、自己紹介しよう。私はアスカロン・シュラーヴリ。この国の皇帝である。そして、ようこそ地球へ。」

「私はその娘、レイナです。火星ではレインって言ってたけど偽名です。」

「ルイ・ジェイン。ルナって名乗ってた。」

3人が各々自己紹介をしてくれたが、ヴァインの表情は硬い。

まだ油断は許すなということだろうか。


「我々は火星に送り込まれた者の子孫。貴方方にいい感情は抱いていない。それだけは分かっていて欲しい。」

そう一言呟くと、レイナとルイは顔を伏せた。

自分達がやったわけではないが、罪の意識があるのだろう。


「そう……だな。我々の先祖は君達を……火星に送り込み、放置した。まずは謝罪させて欲しい。本当にすまなかった。」

皇帝はそう言って膝を折り頭を地面に擦り付けた。



まさかこんな所で皇帝陛下の土下座を見ることになるとは思わなかった。

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