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惑星守護艦隊⑦

惑星守護艦隊一番艦アインスの艦内ではアラートが鳴り響いていた。

バルバトスの主砲が直撃し甚大な被害を被ったからだ。

至る所でスプリンクラーが作動し艦内は水浸しであった。


「くそっ!!!なんて威力だ!!!被害状況を報告しろ!!」

「損傷率70%!!これ以上の戦闘行為は不可能です!!!」

艦長は目の前に迫るバルバトスを睨みつけた。

しかし睨んだところで巨大な戦艦が止まる事はない。


「距離200を切りました!!数十秒後激突します!!!」

「回避行動をとれ!!片側のブースターを最大出力で作動させろ!!」

「む、無理です!!ブースターの計器が水の影響でまともに動きません!」

スプリンクラーは火事を防いでくれるが肝心な時に邪魔になる。

機械類はそもそも水に弱い。

各部がショートしまともに機能している物はほとんどなかった。


「距離100!!もう間もなく接触します!!」

「撃てる兵器は全て3時方向にぶっ放せ!!」

「そんなことして何になるんですか!」

「いいからやれ!!このまま司令室を潰されてたまるものか!!」

艦長は強引に指示を出しシートの肘置きを強く掴む。

狙いはアインスの向きを少しでも変える事にあった。

兵器を撃ちまくれば反動で多少艦体は動く。

ブースターが使用できない今、それを利用し艦首を前方からずらす為だ。

正面衝突すれば、サイズの違いから確実に潰されて死ぬ。

しかし少しずれれば艦の胴体部分に当たってくれる。

そうなれば司令室にいる自分達即死する事がないと判断しての指示であった。



「5秒後接触します!」

最後の報告が来た。

全員が何処かにしがみつく。


凄まじい衝撃がアインスを襲った。

上手く艦首がずれてくれたおかげで即死は真逃れたが、胴体にぶつかって来たバルバトスは速度を緩める事がない。


「艦長!!!身動きが取れません!このままだと大気圏に!!」

その報告を受けてハッとする。

バルバトスの狙いが分かってしまったのだ。

もうこの体勢から助かる術はない。


「くっくっく、流石はヴァイン総司令官だ。こんな方法を思いつくとは……。」

「艦長!!大気圏に突入すればこの艦は持ちません!」

「無駄だ、諦めろ。我々はしてやられたというわけだ。」

「!?どういうことですか!」

「このアインスを盾にして大気圏を突破するつもりらしい。良く見てみろ、バルバトスもかなりのダメージだ。あれでは大気圏は突破できん。しかし我々の艦を盾にすれば突入可能となる。性能でも知略でも負けたという事だ、我々は。」

抗う事を諦めた艦長はポケットから煙草を一つ取り出し火をつける。

深く息を吸い込み、肺を煙草の煙で満たす。

その様を見ていた乗組員が怒号を散らした。

「何呑気に煙草なんて吸ってやがる!早くここから抜け出す方法を考えてくれ!!」


その乗組員をチラッと横目で見た艦長はゆっくりと煙を吐き出し、口を開いた。

「最後の煙草なんだ、味合わせてくれや。それにもう俺達は終わりだ。惑星守護艦隊は今を持って解散だ。」

もはやこれまでと理解した乗組員は膝から崩れ落ちた。

万が一地球外生物が攻めてきても守り切れると言われる程だった惑星守護艦隊はもうその影すらない。


「本国もとんでもねぇもん作ってくれたもんだ。バルバトスか……俺達を負かした最強の艦。いや、敗北したのはヴァインにか。」

大気圏に突入した無防備状態の一番艦アインスは熱に耐え切れず爆散し燃え尽きた。


この時を持って惑星守護艦隊は全て撃沈した。




――バルバトス船内――

「アラートが鳴りやまねぇよ!!しかもこの揺れ!耐えられるのか本当に!!」

バルバトス船内でもアラートが鳴り響いていた。

揺れは大きくなりもう立つことは出来ない程だ。

僕らは不安に押し潰されそうだった。

ギシギシと嫌な音がひっきりなしに聞こえてくる。

いつこの司令室の壁が壊れ宇宙に放り出されるかと思うと恐怖以外のなにものでもない。


「問題ない。この船自体大気圏突入が可能なように造られている。それに目の前の敵艦を盾にしているんだ。あっちの船は今頃阿鼻叫喚だろうな。」

ヴァインは自信たっぷりにそう言うが、不安は簡単に拭えない。

しばらく揺れに身を任せているとアスカが口を開いた。


「大気圏突破まであと30秒。それと今より揺れは大きくなります。備えた方がいいかと。」

その言葉の後すぐに目の前の敵艦は爆散した。

破片が飛び散り燃え尽きていく。

中に乗っていた人は即死だろう。

しかしそんな考えも吹き飛んだ。

盾がなくなると衝撃は全てバルバトスに襲い掛かる。

先程までの揺れなど比較にならない程に揺れ出した。


「耐えろ!耐えてくれ!!!」

「し、し、し、死ぬー!!!」

「殲滅隊だろお前ら。もっと堂々としておけ。」

ロウさんとザラさんは叫び続けている。

堂々としているのはヴァインとアレン隊長だけであった。


「損傷率50%!大気圏突破まで後10秒!」

「大丈夫だ!!ブースター点火用意。大気圏を出たら即座に点火しろ!」

こんな状況でもヴァインは冷静に指示を出している。

この人を味方にしておいて良かったとつくづく思う。


大気圏を出たのか揺れは小さくなった。

それと同時に視界が晴れた。

眼下には青と緑の光景が広がっている。


「ブースター点火!」

「良し!後は私が操縦する!!」

ヴァインが操縦桿を握ると目標目掛けて飛行を始めた。

どうやらヴァインは帝国の本土の場所を知っているようだ。

見た事もない数値を見ながら操縦桿を握っている。

前に教えてもらった緯度と経度というやつだろう。


「後方からイカロスが追従!大気圏を無事突破したようです。」

「もう1隻、アポロンも突破したみたいですが追従はしていません!」

そういえばアポロンはどうなったのだろう。

船内は悲惨な事になっていそうだが、大気圏を突破してきたという事はハイア艦長が操縦しているとしか考えられない。


「おっと言い忘れていた事があったな。」

ふとヴァインは振り向く。

僕らを見回し間を置いて口を開く。


「諸君、地球へようこそ。眼下に広がるのは青い海。そして緑の草木だ。帝国まで後少しだ。景色を楽しんでいてくれ。」


僕らはその言葉を聞き、ようやく願いが叶ったと実感した。

見た事もない大量の水、緑生い茂る草木。

そして何十億の人間が住まう大地。


どれもが新鮮だった。

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