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惑星守護艦隊⑤

惑星守護艦隊一番艦アインスの艦長は何が起きているか分からなかった。

後方で大きな爆発が起きたと思うと引き続きもう一度爆発が起きた。

ただ何故爆発したのかは理解できる。

アインスの横を青白い光が通り過ぎて行ったからだ。

荷電粒子砲の光。

それだけは理解できていた。

だが何故荷電粒子砲を撃ったのかが分からなかった。


「艦長!二番艦ツヴァイ、三番艦ドライ撃沈を確認しました……。」

副官を務める男が悲痛な面持ちで話しかけてくる。

そんな事は言われずとも分かっていた。

極太の青白い光が意味するのは、大型荷電粒子砲。

そんな凶悪な兵器を積んでいるのはこの場に一隻しかいない。

戦艦級輸送船バルバトスだけだった。


「黙れ!!!何故だ、何故我々を攻撃する?バルバトスに回線を繋げ!!!」

「やっています!!ですが……通信を遮断しているようで……。」

ヴァインが何故攻撃してきたのか聞きたくとも通信が繋がらなければどうしようもなかった。


そもそも大型荷電粒子砲は膨大なエネルギーを要する。

連続で撃ったというのが有り得なかった。

本来であれば、あれは切り札クラスの兵器だ。

最後の切り札として使うレベルの代物だった。

一発撃てるだけなのが普通の戦艦であれば常識である。


もし連射できるとすれば、バルバトスを止める手立てはない。

しかしこのまま地球に降下させるわけにもいかなかった。

もしも彼らが地球へ復讐しに来たのであればここで止めなければ、世界を巻き込んだ戦争になるだろう。


「一隻手が空いている艦を後ろに回せ!!それとアポロンについている艦も全て向かわせろ!!体当たりしてでも止めるんだ!!!」

「了解!」

主砲の威力だけなら勝てないが、守護艦隊は全て最新鋭の戦艦であった。

突破されるのだけは避けなければならないと、艦長は各所に命令を飛ばす。


「イカロスについている2隻はそのままだ!ただ電磁障壁は展開するよう伝えろ!この艦は転回し逆噴射!主砲をバルバトスに向けろ!」

「電磁障壁ではあの主砲を防げません!」

「ないよりマシだ!電磁障壁を展開しながら突撃でもすればダメージは入る!!」

無駄だと分かっていてもやらなければならない。

幸いにもバルバトスは船体が大きい為、素早い動きは出来ない。

固定砲台みたいなものだ。

攻撃すれば必ず当たる。

攻撃される前に叩く、それしか勝てる方法はなかった。



――戦艦級輸送船バルバトス船内――

「不味いです、アポロンに張り付いていた2隻がこちらに進路を変えました!それと前方からもう1隻!」

「多段ミサイル全弾発射!!」

「電磁障壁の耐久が80%を切りました!」

「主砲充填完了!!」

各所から報告が飛び交う。

それを一つずつ処理していくヴァインは流石総司令官だと言えた。


「左舷側電磁障壁の局所耐久値を上げろ!他は薄くなっても構わん!多段ミサイルを撃ち終われば大型対艦ミサイルの用意!!主砲は前方にぶちかませ!!」

「照準よし!撃つぜ!各員衝撃に備えろ!」

船が大きく揺れる。

主砲の衝撃は毎度ながら凄まじく、レバーを握っていると照準がブレる程だ。

前面の窓ガラスに映る青い光が広がっていく様は圧巻の一言に尽きる。


「前方の船は大破!!左舷から来た2隻も対艦ミサイルが直撃し中破しています!」

「対艦ミサイルを撃ち続けろ!弾は尽きても構わん!!」

「イカロスの方の支援はどうしますか?」

そうだった。

つい、左舷と前方にばかり注視していたせいで右舷を一切見ていなかった。

アスカの一声により全員が右舷を見ると、丁度イカロスが1隻を撃破していたところであった。


「あの兵装で戦艦を落とすとはな……リクリット、弱点を見つけたようだな。」

「弱点ですか?」

僕は弱点など知らない為、ヴァインに質問する。

どうやら、ブースター部分が戦艦唯一の弱点だそうだ。

機敏な動きが出来るよう大型のブースターが取り付けられており、ほとんど弱点をむき出しにしている状態らしい。

しかしそのブースターを守る為防護壁で覆ってしまえば、ブーストの意味がなくなってしまう。

だから仕方なくむき出しにしているようだ。


「イカロスの兵装はかなり弱いが、それでもブースターばかりを狙えば破壊出来る。リクリットは優秀な指揮官になれるな。」

ヴァインが嬉しそうにそんな事を言っているが、リクリットは指揮官なんて望んでいなさそうだ。


「イカロスの支援は後回しでいい。左舷、アポロンを放置して残りの2隻もこっちに船首を向けた。迎撃用意だ。」

「多段ミサイル及び対艦ミサイル全弾発射します!」

雨のように降り注ぐミサイル群を躱す事が出来ずに次々被弾していく守護艦隊。

反撃してきているが照準が定まっていないのか主砲はまだ一発も当たっていなかった。

1隻が大破し、動揺したのか反撃の手が緩まった。

その隙を逃さず、ありったけのミサイルを撃ち込む。

爆発は連鎖していき、最後は大きな爆発が生じ宇宙の塵となってしまった。


「不味い!前方から攻撃!躱せません!!」

誰かがそう言った。

対応する暇もなく船体が揺れ、主砲が直撃したことを悟る。


「電磁障壁、破られました。」

「くそっ、一番艦アインスか!主砲は荷電粒子砲だな。直撃すれば多大な被害が出る。なんとしても撃たせるな!!」

「主砲の充填もうじき終わる!!」

前方には一番艦アインス。

惑星守護艦隊の隊長が乗っている船だ。

恐らく性能も一番高い。

アインスは前後左右に動けるようで常に照準を合わせられないよう動き続けていた。


「主砲はまだか!」

「撃てる!けど、照準が合わねぇ!!!速すぎる!!」

ロウさんがなんとか合わせようと主砲のレバーを動かしているが、アインスの動きについていけないようだ。


アインスの動きが止まる。

向こうも撃つ時は止まらないと合わせられないらしい。


「撃てるぜ!!各員衝撃に備えろぉ!」

座席のシートに背中を預け、レバーから手を離して肘置きを強く握る。


青白い光が視界を包み大きな揺れが襲った。

アインスの主砲は直撃したようで、ゼクトですら地に伏せる程の衝撃だった。


「すまねぇ、外した……。」

お互いの攻撃は、バルバトスの被弾のみという結果になってしまったようだった。

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