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惑星守護艦隊④

「おい!!アポロンが速度を上げているぞ!!」

誰かが窓の外を見て叫んだ。

釣られて僕も外を見ると徐々に速度を上げてバルバトスを抜こうとしていた。

隊列を組んで動いていたのにアポロンだけが突出するような形になってしまった。


流石に守護艦隊も気付いたのかすぐに通信が入った。

「おい!どうなっている!!アポロンだけ速度が上がっているぞ!!」


ヴァインは何と答えようかと思案する。

正直に言えるはずはなく一番良さげな嘘を考えていた。

しかしあまり返答を遅らせる訳にもいかない。


「聞こえているのか!?アポロンはどうした!通信も繋がらんぞ!!」

二度目の通信。

これ以上は怪しまれると考え、ヴァインは応答した。


「すまない、先ほど入って来た情報だが、どうやらアポロンの航行システムが異常をきたしたようだ。それに通信システムもダウン中で今はこちらからも繋がらなくなっている。古い艦だ。整備なんぞしたことがなかったのを無理やり動かしたんだ。異常が出るのも仕方がない。」

「なんとかして速度を落とさせろ!これ以上速度が出れば私の艦を追い越す事になる!」

「方法がない。アインスの艦長、何か手段はないか?」

「……あるにはある。しかし強引な手だ。出来れば使いたくはない。」

「あるのならやってくれ。こちらではどうすることも出来ん。」

守護艦隊の隊長は方法があるという。

なんとなく想像は付いていたがその通りだった。


「アポロンの両舷にいる2隻で挟み込む形でぶつける。もう1隻を前方に配置し3隻全てで逆噴射をかければ速度は落ちるだろう。……しかし中にいる者がどうなるか分からんぞ。船体にダメージは入るし中にいる者へのGが凄い事になる。」

ヴァインは動くのであればこのタイミングしかないと考えた。

これで完全に3隻はアポロンから目を離せなくなるだろう。

もう2隻はイカロスに張り付いている。

残り5隻。

これならバルバトスであれば戦える。

そう判断したヴァインはそのように動いてくれとアインスの艦長に頼んだ。


「分かった。念の為もう1隻をアポロン側に回しておく。」

「ありがとう。」

通信を終えるとヴァインは立ち上がり、周囲を見回した。

僕やアスカ、ゼクトらに目線を合わせ片手を上げた。


「これより作戦を開始する。4隻がアポロンに張り付いたら逆噴射で速度を落とす。イカロスもタイミングを合わせさせる。そうすれば両舷に張り付いた2隻は船体の前に出てくる。そこを狙って撃て。こっちが片付いたらすぐさまイカロスの方に支援砲撃だ。……アポロンの現状は分からないが、この機を逃すな!!!」

「「「了解!」」



アポロンの周囲に4隻の守護艦隊が集まった。

徐々にアポロンの船体に近づいていく両舷の2隻。

速度を落とさせる作戦が始まったようだ。

その様をじっと見つめていたヴァインは攻撃要員に呼びかけた。

「アポロンの速度低下作戦を始めたようだ。砲手、準備はいいか?」

「任せておけ。兵器の扱いなら殲滅隊で誰よりも上手い自信がある。」

主砲の操作を任されたのはロウさんであった。

全身兵器のロウさんなら現代兵器の扱いも難なくこなせる。

ヴァインはそう判断したようで、一番重要な主砲を任せていた。


「アスカ、艦内への呼びかけは終わっているな?」

「はい、Gがかかる為全員部屋のベットに体を括りつけるよう言ってあります。」

「よし……やるぞ!!自動安全装置解除、逆噴射、開始!!!」

ヴァインの掛け声と共に体へ凄まじいGを感じた。

身体が座席のシートに抑えつけられる感覚。

初めて感じた不快感に一抹の不安を覚える。


「ぐぅぅ結構くるわねー!ゼクト!あんた突っ立ったままだけど大丈夫なの!?」

ザラさんも顔を顰めて苦しそうにしているが、それよりもゼクトだ。

その場に突っ立ったまま身動き一つしない。


「フッ、我はそんなやわな身体をしておらん。この程度の重力なら問題はない。」

流石はアーレス星人といった所か。

僕らは立ち上がる事すら出来ないのにゼクトは平然としていた。


「逆噴射終了!主砲用意!!」

身体を抑えつけていたGが無くなると即座に砲のレバーを握る。

僕が任されていたのは、遠距離用の電磁誘導砲だ。

スコープでのぞき込むと前にいる守護艦隊が良く見えた。


「衝撃に備えろよ!!!大型荷電粒子砲!発射ぁぁ!!!!」

ロウさんが力強く主砲のトリガ―を引き絞ると前方に青色の熱源が現れる。

次第にそれは大きくなり、前方の景色が青に染まるほどになったと思うと船全体に衝撃が走った。

主砲が発射された際に起きる揺れだ。

小刻みに大きな揺れが僕らを襲い、レバーにかけた手が離れそうになった。

前方の景色が見えるようになると、全員が絶句する。


話には聞いていたが、実際に目にするとやはり衝撃が大きかった。


守護艦隊の片方の船はもう原形をとどめていなかった。

もう片方もかろうじて形は残っているが色々な箇所が爆発を繰り返していた。


「と、とんでもねぇ威力じゃねぇか……。」

トリガーを引いたロウさん本人もあまりの威力にドン引きしている。

かくいう僕らも空いた口を閉じる事はなかった。


「第二射用意!!」

ヴァインだけは冷静に次の行動を指示する。

まだ1隻落としただけでバルバトスが担当するのは3隻残っていた。


「じゅ!充填開始!発射まで30秒!!」

ロウさんはハッとして即座にメーターを読み取り報告する。

30秒はすぐに過ぎる。

しかし今の30秒はとても長く感じられる。


「電磁誘導砲、攻撃開始します!」

僕はヴァインにそう叫び照準をかろうじて生き残ったもう1隻に合わせる。

30秒間は主砲を撃てない。

その間、僕や他の砲手がこの船を守らなければならないのだ。

手に汗が滲むがなんとか緊張を振り払いトリガーに指を添わせる。


トリガーを引くと、照準の合った箇所へと即座に弾丸は着弾した。

数発撃ち込むと、大爆発を起こし破片が周囲に飛び散る。



ただ座ってトリガーを引くだけで1000人以上が死んだ。

そう考えると恐ろしくなってしまった。

僕らは戦争をしている。


いまやっと実感を持てた気がした。

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