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背中に気をつけて![YOUR6!]  作者: B2F(びーにえふ)
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page 2 『日出衣麻子による救済』の噂、そして罠 (ヒイヅルイマコ)

私帰(きさき)ののか ・・・ 主人公。無事家に帰りたい

茅吹(かやぶき)かざね ・・・ 仲良くなったポニーテールのクラスメイト

入学した更信(さらしな)高校には特殊な七不思議があった

制服は紐リボンのセーラー服

噂に聞く『更信(さらしな)高校の七不思議』……。

おそらくその1つに入学初日で出くわしてしまった私たち、

私帰(きさき)ののか と 茅吹(かやぶき)かざね 。

気絶してしまった私は茅吹さんに背負われ、そのまま2人で保健室へ向かうこととなりました。――――


「…茅吹さん、さっきのってきっと、この学校の七不思議ですよね」

「それしか考えられないね。あたしは七不思議は2つだけ知ってるけど、そのどっちでもなさそうだから、わからないや」

「え、すごい…私1つも知らない。どんな七不思議を知ってるんですか?」

「あ…、片方は私帰さんもゼッタイ知っておいたほうがいいと思う…」


えぇ…、なんですかそれぇ…。それって、危険度がバリバリに高いとか、ゴリッゴリに遭遇しやすい七不思議ってことですよね…。茅吹さん急に黙らないでーーっ!



思い直したように言い淀んだ彼女が、深刻そうに唇を引き結ぶ。

在校生のいない今日の校舎と重なる、不穏な静寂が流れる……。



……ゴクリ……。

私が生唾を呑み込むのが、肌越しに彼女に伝わってしまう。



――― やがてその一度秘した花弁が、覆い包んでいた闇をのぞかせた。



「……イマコさん……」



うわあああああ!!

「うわーーんっ!! それ絶対ホラーのやつだぁーーっ!! トイレに出てくるとかのやつだぁーーっ!! そんなのが今もこの学校にあるんだぁーーっ!!」

茅吹さんのうなじに再びうわんうわん泣きつく。

「さっきのせいで私帰さんがトラウマになっちゃってる…。あのねよく聞いて、これはそんな七不思議じゃなくて、嬉しい七不思議だから、怖がらなくていいんだよ?」

「ハッピー七不思議…?」

「…え? ハッピー…? そ、そう! ハッピー七不思議だよっ! 私帰さんっ!」

優しくてノリのいい茅吹さんでした。


「その七不思議は、『日出(ひいづる)衣麻子(いまこ)による救済』って呼ばれてるんだってっ!『救済』だから、ハッピーだよっ!」


…救…済…? ハッピー…?


「絶対ヤバい"救済"だそれぇっ!」

「違う違うホントに! なんかハッピーのせいで無駄に疑われてない!?」

「じゃあどんな"救済"をするって言うんですか? そのイマコさんっていう、幽霊だか人は」

「あたしも詳しくは知らないんだけど、なんでもその"日出衣麻子さん"っていう人にお願いをすれば…」

「お願いをすれば?」

「必ずどんな願い事でも叶えられるっていうの。恋の願い事とかもね。それで部活の女子の間で話題になってたのを聞いたことがある」

「それ最強じゃん…」

「最強…」

ていうか私も女子じゃーん! 女子なのに聞いたことないじゃーん!

「なるほど、知れて良かったです。わたし女子なので。それでもう1つの七不思議はどんなのなんですか?」

「もう1つは……、あっ……、コワいかもだからまた今度にするねっ!」

可愛く言っても駄目です茅吹さんっ!

「ギャース!」



page 2 『日出衣麻子による救済』の噂、そして罠



ようやく辿り着いた保健室は開いていて、中の明かりもついていたけど、

入口のホワイトボードを見ると『離席中』の所にマグネットが置かれていた。

今、保健室の先生はいないのか…。そういえばお昼時だったっけ。お手洗いか職員室に行っている可能性もある。


私を背負ったまま中に入った茅吹さんが、左見右見(とみこうみ)して誰もいないのを確認してから声を発した。

「せっかくだからベッド使っちゃお! 話せばわかってくれるよね、多分」

まぁ七不思議関係なく、気絶したことを話せば良さそう。

奥に空きベッドが2台あり、どちらの仕切りカーテンもくくられていた。

興奮して喋ったりもしたせいでフラフラなままだから、確かに一睡はしたい…。


…ここへきて、この茅吹さんのぬくもりも、一歩ごとの揺すれも、

少し息切れした息つぎも、彼女の髪の香気も、

全身で感じられていたのが少し名残惜しく思えてきた…。


「…私降りますね。ここまで運んでくれて本当にありがとうございました、茅吹さん」

怪異の時に走ってもいたのに、大して息切れしてないのは驚いたけど…。

「おっけー。じゃあ、そ~っと降ろすから、気をつけて降りてね~?」

ずるずると茅吹さんの背中から降りていく。―― すると…、足を着けた床が妙だった。例えるなら忍者屋敷の罠が作動する床スイッチを踏んだように、ガタッと足もとがちょっと沈んだのだ。

…なんだろう? 私は足もとを見…、

「…ってぇ!! ここ体重計のはかり台の上ーーっ!! 確かに私にとって最悪なトラァーーップ!!」

「ごめん私帰さんほんとに気づかなかったっ!」

私も茅吹さんも…背中に気をつけて…!! 作動した後ろの目盛りと針も見ないように気をつけて…!!

危うく久々に自分の体重を見そうになってヒヤヒヤしました…。


  *  *  *  *


校内の自販機に飲み物を買いに行っていた茅吹さんが、スポーツドリンクのペットボトルを2本持って戻ってくる。

私はソファで待っていました。怪異も保健室の先生も来るのを考えたらベッドじゃ寝れなかった。

走って、おぶって、また走って、どれだけ動けるんだろう茅吹さん…。

「無事で何より! はい、どうぞ!」

「ありがとうございます。わぁ! つめた~い!」

隣に座った茅吹さんに硬貨を渡す。

茅吹さんが冷気と水滴をまとったペットボトルをほっぺたにくっつけて、恍惚の表情を浮かべた。ポニーテールの髪型も相まって涼しげだ。

「はぁ~…ひんやりぃ~…」


!?


「え…どうしたの私帰さん? 驚き方面白いけど」

「なんか茅吹さん……スポーツドリンクすっごく似合う!!」

「へ…? あぁ、陸上部だったからかな? 特に『三段跳び』っていう種目をやってたんだけど」

三段…跳び…?

私は、スマホのアクションゲームで操作するキャラが、通常のジャンプだけでなく、空中でさらにもう2回ジャンプできるのを想像する。

「最強じゃん…」

「どんなイメージかはわからないけど…多分違うね…」

茅吹さんがいったんスポーツドリンクを飲んでから説明をしてくれる。私もすでにふたを開けて飲み始めている。


「えっとね、三段跳びっていう競技は、走り幅跳びみたいに助走をつけて砂場に跳び込むんだけど、助走してから、ホップ・ステップ・ジャンプって大きく3歩跳んで、その3歩の合計距離を競う競技だよ」

「え…あとで動画見てみようそれ…」

「面白いし、見やすいとも思うし、ぜひ見てみて!」

大好きな競技だというのが伝わる、無邪気な笑顔を見せた。

なるほど陸上部かぁ…、どうりで茅吹さん、体力あるし、足が速いし、スマートな体してるわけだ! 私を助ける時も確かにその三段跳びのような感じで駆けつけてくれていた気がする。


茅吹さんが再びペットボトルを口につけ、少し上向いてごくごくと喉に通す。

「茅吹さん…スポーツドリンク飲んでる姿もよく似合う!」

「うぷっ…、ちょっと笑わせないで…、あははっ! だからなんなのそれぇ」

「ごめん~タイミングまずったぁ…」

でもポニーテールもまさに!って感じで、ものすごい運動量の後にたっぷり水分補給したから全身に美しい汗も流してて、まるでCMかドラマのようでした。


私はスポドリをしみじみとすすりながら、想像してみる…。

もし茅吹さんが学生モデルやタレントさんだったら、と!

雑誌の表紙をハツラツ笑顔で飾る茅吹さん。

夏には健康的な体を活かして、水着姿も披露したりして。

茅吹さんにはどんな水着が似合うだろうか…。

―― 茅吹さんがソファから立ち上がった。

「ねぇ、一緒にベッド行こ?」

「ぶふぅっ!!」

「あれ…? タイミングまずった…?」

「いえ…私が悪いんです…」

「?」

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