2話︙少女と家族
……雨の中増水した川の近くで?
俺は少女が言った言葉が理解出来なかった。
俺が体験した出来事と明らかに違ったからだ。
俺が混乱する中、少女は更に言う。
「まぁ、見つけたのは私のパパなんだけどね。
この家が流されないか様子を見に行った時に見つけたんだって。それでこの部屋に運び込んだの。」
なるほど、そういう経緯があったのか。
つまり俺は車に跳ねられた後、増水した川の近くで倒れていたと。……余計に分からなくなった。
「話はこれくらいで良い?。」
そう言うと少女はまた距離を詰め始める。
「その手も退けて。身体が拭けない。」
「いや、ちょっと待って!本当に待ってくれ!」
俺は慌てて両手を上げる。
すると少女は不機嫌な顔(多分)をしながら俺に布を渡してくる。
「それで拭いて。私は後ろを向いてるから。」
「あぁ、分かったよ。」
俺はそう言って水に布を浸そうとしたその時だった。
「……え?」
俺は間抜けな声を上げてしまった。
何故ならば、水面に映っていたのは、小さい頃の俺とも、今の俺とも似つかない端正な顔立ちの少年だったからだ。
俺はびっくりして、しばらく呆然と眺めていると
「どうしたの?。やっぱり拭いてあげようか?。」
音がしない事に疑問を覚えたのだろう。少女がそう話しかけてきた。
俺はそれに大丈夫と返すと、急いで服を脱ぎ身体を拭き始めた。
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「じゃあ、私はパパとママに貴方が目覚めた事を話してくるから。」
俺が拭き終わったのを伝えると、少女はそう言って
扉から出て行った。
俺は扉が完全に閉まるの確認すると、俺は再びベッドの上で考え始めた。
今までは走馬灯だと思っていたのだがどうも違うらしい。
ならこれは何だ?そう考えた結果、ある一つの結論にたどり着いた。
「……異世界転生……。」
ありえないと思ったが、それしか考えられない。
俺とは似ても似つかない顔だったのがその証拠だ。
多分、俺はあの時死んだのだろう。
で、この世界?に転生した、と。
何故少年の姿で?とか気になる事は色々とあるが
正直わくわくが止まらなかった。
俳優時代も雑誌などで読んでいたし、会社時代はもちろん小説サイトをガッツリ読んでいたからからな。
その日はあの少女が来ることはなかったが、興奮して中々寝付けなかった。
次の日の朝、起きてすぐ現れたのは少女ではなく、2メートルの大男だった。
「おお、起きてたか。ボウズが目覚めたって話を娘から聞いてな、朝の仕事の前に様子を見にきたんだ。」
男はそう言うと、豪快に笑いながら俺をベッドから引きずり出すと肩に担ぎ上げた。
「ちょっ!何すんだよ!」
「がはは、ボウズも寝てばっかはつまらねぇだろ?。家族みんなで食事するからボウズもこいや!。」
「仕事はどうしたんだよ!。」
「仕事は食事の後だ後。」
そう言って男はあっとゆう間に俺を肩に担いで食堂に連れて行った。
俺は抵抗したが、全く歯が立たなかった。
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食堂に担がれて着くと俺は南側の椅子に降ろされ、男は東側の椅子にどっかりと腰を下ろした。
「お父さん、その子川の近くで拾った子よね?どうしたの?」
「様子を見に行ったら起きてたんてな!寝てるのも暇だろうから、担いで連れてきた!!。」
「えっ……!?」
俺は北側の椅子に座っていた女性と男の会話を聞いて
思わず困惑の声を上げてしまった。
(この男、あの少女の父親なのかよ!!。てっきり親戚の叔父さんかと思ったぞ……)
そう思ったのがばれたのだろうか男……少女の父親が
「何だえ……!?って。全く似てないですねって言いたげな口ぶりだな?」
と言ってジト目で俺を睨みつけてきた。
俺がどう返そうか迷っていると
「ねぇ、お腹すいた。」
と西側の椅子の方から昨日聞いたばかりの声が聞こえてきた。俺が声の方を向くとあの少女がそこにはいた。
「……ルリア。今お父さんとこの子は大事な話をしてるんだ。だから「パパがごつくて似てないねって言われるのは慣れてる。そんな事よりお腹すいた。」……。」
……どうやら余程ルリアと呼ばれた子はお腹が空いていたようだ。父親の説得も彼女のお腹の前では無力だった。
そしてそのやり取り聞いていた女性(ルリアの母親だろうか?)がくすくすと笑うと
「そうね。似てるか似てないかなんて些細な問題よりご飯の方がさきよね。さぁ貴方も手を合わせて?。」
と言った。父親はその言葉を聞いて、母さんまで……と言った後、大きなため息を吐いて手を合わせた。
俺がそれを微笑ましく見ていると
君もよ?と言われたので
あ、はいと言って、言われるがままに手を合わせる。
そうして全員が手を合わせると、俺以外の全員が頂きます…ではなく食物を司る神?とかゆうのに感謝の言葉を捧げていたので、俺も周りの真似をして感謝の言葉を捧げた。
そうして祈りを捧げ終わると、食事を開始した。
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