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ママとふとん


ふとん。


お昼寝する時、夜寝る時。


体には必ず布団をかける。


人間は生まれた時から必ず何かをかけて寝るんだって、ママは言ってた。



春は、布団は一枚しかかけない。


ママ達が住んでいるここは寒くないからね、ってママは言う。充分寒いと思うのに、北の国はこんなもんじゃないんだって偉そうに教えてくれた。本当かどうかはわからないけど、ママは北国で生まれて育ったらしいから本当なんだと思う。


でも、日本地図の一番北じゃない所らしいから、やっぱりそうでもないんじゃないかな?


寝る時間になると、タオルケットをかぶって寝る。


ボクがこっそり中にタブレットを持ち込んで動画を見てると、ママがタオルケットをはぎとってタブレットは没収される。音も消して見てるのに、なんでかバレちゃう。妙に大人しいからって言うけど、僕はそんなにうるさくないと思う。


タオルケットを縦にしないといけないのに、縦にしてるつもりなのに、整えてると横になっちゃう。でも寒くないから別にいいかって思うんだけど、ママは絶対ボクがちゃんと出来てるか確認しに来て、整えていく。


ママが整えたタオルケットは急にお利口さんになって、ボクの体にフィットしてくれる。


夏はお風呂上がりにパンツを履いて、そのまま敷布団に飛び込む。


汗をいっぱいかくから、ちゃんとパジャマを着なさいってママは言うけど、汗をかくから着てないのに、ママはおかしい。無理矢理着せられるパジャマはママがボクから離れた瞬間に脱ぐ。ママは、せめてお腹は隠しなさい、って言って、わざわざタオルケットをお腹にかける。お腹が冷えると良くないって言う。そんな訳ないじゃんって言うと、ママはぶつぶつ文句を言ってくるんだ。


秋はいつからいつまでが秋なのかがわからないけど、暑い時は夏、寒い時は冬と似た感じ。寒くなってくると、毛布とかかけるものが増えて難しくなる。だから寝る時は敷布団に仰向けになってると、ママが来て布団セットをボクにかけてくれる。足、全部入ってる?気持ち悪くない?とか毎回聞いてくる。返事をしないと、しつこく聞いてくる。気持ち悪かったらちゃんと言うから!


そして冬。


ママが布団について熱く語りだす季節。


薄い肌触りのいいタオルケットと、羽毛布団と、毛布。正しいかけ方についてテレビでやっていたけど、そんな事は気にしない、きもちのいい順番でかけるの。そうママは言っていた。


敷布団の上に仰向けになる。


ママが掛け布団をかけてくれるのをいつもの様に待つ。


部屋の電気が眩しい。


横を向いてママの姿を探す。


部屋の遠くで、お兄ちゃんにゲームやめなさいとか、文句を言っているのが聞こえる。


早く布団をかけてくれないかな。僕は眠いんだ。


待ちきれず、布団を自分でかける。


ちょっと気持ち悪い。


足で蹴飛ばして広げてみるけど、広がらない、むしろ足下の方に行ってしまった。


一番大きな羽毛布団だけを引っ張って自分に合わせる。いつもと違うけど、もういい。僕には出来ない。


ママの気配がする。


もう寝た?お布団ちゃんとかけれた?


「うん」


目を閉じたまま答えた。


ちゃんとかけれた?に対して返事をしているのに、ママは布団を少しめくりあげてチェックする。


また蹴飛ばしてー、ってママ。


羽毛布団だけをかけているのを見られた。


ママは思い切り羽毛布団を剥ぎ取って、一からやりなおしてくれる。


最初はタオルケットとよんでいる綿毛布。次に羽毛布団。最後に毛布。


ママがしてくれると、何故か気持ちいい。


僕の体がちゃんとタオルケットの中にある。


その上には羽毛布団があるのがわかる。ちゃんとのっている。毛布は感触がしないけど、きっとその上にのってくれてるって信じてる。


ママがしてくれるとなぜかお布団達はちゃんとしてるんだ。


今日は、ママがいなかった。


お友達とご飯を食べに行ってくるって言ってた。


お酒は飲まないけど、ボクが寝る時間には間に合わないから先に寝ててね。


そう言ってた。


パパはいるけど、寝る時の事なんて何もしてくれない。


お兄ちゃんはママに言われるまで歯磨きをしないけど、僕はちゃんとする。ちゃんとあっちもこっちも磨く。うがいだってちゃんと何回もする。


お風呂だって一人で入ってるけど、髪の毛を乾かすドライヤーだけはママがいないと使えない。でも元々ドライヤーなんてしなくても乾くし大丈夫。


電気をつけたまま布団の中に入る。


タオルケットがぐちゃっとしてる。


今日は蹴飛ばさない。毛布と羽毛布団をはいで、タオルケットだけを整える…んだけどうまく出来ない。


ママが、この面は横、この面はお顔、こっちは足の方!って言いながら整えてくれるのを思い出すんだけど、自分ではうまく出来ない。


体が隠れれば、縦でも横でもいいや、と思ってとりあえずかける。


その上に、羽毛布団と毛布をかける。


つま先がなんだか寒い気がする。


寒い気がするけど、また整えるのは面倒くさいから、そのまま勢いよく仰向けになった。


電気が明るくて眩しい。


真っ暗じゃなくて、暗くする方法があるけど、覚えてない。いつもママにしてもらう。


目を閉じてみるけど、目を閉じても明るいし、やっぱり足先が寒い気がする。それでもお布団かぶって頑張って少し眠れそうになったんだけど、隣のお兄ちゃんの部屋から叫ぶ声がして目が覚めちゃった。


ネットゲームを友達としてて、負けたみたい。


ママを呼ぼうとしたけど、いないのを思いだしてパパを呼ぶけどもちろんくるわけない。


お兄ちゃんを呼ぶけど、くるわけない。二人ともヘッドフォンをしてゲームをしてるから。


なー、って鳴きながら猫のモリーがケージの中でも僕よりの場所に移動してきた。


いつも高い所で丸まってるのに、僕が叫んだから来てくれたんだと思う。


僕は布団を抜け出して、充電しているタブレットを持ってきた。いつも見ている動画を見始めた。


遅い時間にアップされる最新動画を見てしまう。


この十数分の動画が終わる頃には、ママは帰ってきてるかもしれない。


でもその動画を見終わってもママは帰って来なかった。布団の中で膝を曲げていたけど、やっぱり足先が寒い。足の指でつまんで下の方に下げると、今度は首元にあったタオルケットの上の部分が下にさがって胸あたりになった。


とても気持ち悪い。


ママ!と叫んでみてももちろんいない。


ママはいっつもうるさい。


歯磨きした?うがいは3回以上した?


頭はちゃんと洗った?シャンプー使った?


毎回聞いてくる。


お兄ちゃんにも言う。シャンプーで洗ったっていうお兄ちゃんの頭の匂いを嗅いで、ウソ!って言って怒ってる。ボクも頭を濡らしてるだけの時があるから、まずいと思ってそれからはちゃんとシャンプーで頭洗ってる。


ママは朝もうるさい。


家からすぐそこの曲がり角、危ないよね、ってよく言ってるママ。いつだったか、車とぶつかりそうになった、って話をしたら。そうだよ!いつも言ってるとこだよね?だから遠回りかもしれないけど、横の階段使って行ってね。ほらみて、交通事故は家の近くであうのが多いんだよ!ってスマホ見せながらうるさく言ってくる。最初は、うんうん返事して聞いてるんだど、しつこいの。わかってるよ!ってキレ気味に言うと、ほんとに?ママなんて言った?まとめて見て!なんてめんどくさい事も言ってくるようになる。だから最近はわかった気をつけてる、みたいな事を適当に言うと、あんまり言わない事に気がついたから、そうしてる。お兄ちゃんもいつも適当に返事してるけど、それにはこういう理由があるんだと気づいた。


ママはいっつもうるさい…。


ママの文句を言っていたら、僕はいつの間にか寝てた。


夢の中で、ママが毛布と掛け布団をめくって、タオルケットを整えてくれた。それからボクの頭を撫でてくれて、電気も消してくれた。


遠くでお兄ちゃんに早く寝なさいって言ってて、頭ちゃんとシャンプーで洗った?って聞いてた。


夢の中のママもほんとにしつこくてうるさいなって思いながら、早くママに会いたいなって思った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 子どものことに何でも口を出すお母さんと、それを煩わしく思う「ボク」。でもお母さんがいないと、急に寂しくなるんですよね。お母さんの気持ちも、「ボク」の気持ちもよくわかってなんだかほっこりなりま…
[一言] 子供のことが心配で、ついあれこれ言っちゃうんですよね~。 それにしても、ボク君が布団を上手くかぶれない時の残念っぷりがわかりすぎて笑えました。 掛け布団や毛布の枚数が増えると、上のや下のだ…
[一言] 微笑ましく読ませて頂きました。 ママの愛が感じられる素敵な作品ですね。 ふとんをきちんと掛けて寝るのは大事ですね。
2020/12/21 13:25 退会済み
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