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096 折衝

「あっ、いた!謝倹さん、こんなところで酔い潰れてる場合じゃないですよ!」


 謝倹は仲間に頬をはたかれて目を覚ました。


「んん……俺は……うっ」


 下腹部にひどい鈍痛を感じる。


 苦痛に顔を歪める謝倹を、部下は完全に誤解していた。


「……こんな時にでも酔い潰れるほど飲める謝倹さんは凄いですけどね。でもそれどころじゃないんですよ」


「いや……酔い潰れてたわけじゃねえよ」


 意識を失う前の記憶がだんだんと蘇ってきた。あれは確かに好みの女ではあったが……


(くそっ、あの女)


 苛立ちと後悔とが同時に襲ってきたが、仲間の次の言葉でその感情は全く消え失せた。


「もう屋敷は軍に包囲されています」


「何だと!?」


 信じられなかった。


 いや、考えてみれば全くもってあり得る話なのだが、軍が来るのは完全に明朝以降だと思っていた。


 謝倹は大きく呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。


「えらく早いじゃねえか。今どうなってる?」


「とりあえず門を固く閉じてます。軍は囲んでるだけで攻めてはきません。それより、太守の野郎が謝倹さんと話がしたいって言ってるんですよ」


「なに?俺と話だ?」


(降伏勧告か?)


 普通に考えたらそうだろう。こうなったからには一戦交えてやりたいというのが謝倹の本音だが、仲間連中を道連れにするのも気が引ける。


 悩みながら部屋を出ようとするところに、王朗の大音声が届いてきた。


「謝倹よ!王朗だ!話したいことがある!」


 謝倹はその声に首を傾げた。


「……あれ、門の外から叫んでんだよな?」


「はい、そのはずですが」


 ちょっと信じがたいほどの声量だった。


(太守の野郎、やっぱり良い男なんじゃねえか)


 謝倹はそう思った。


 声のでかいやつに悪い男はそういない、というのが謝倹の持論だった。


(しかし……それにしても、でかすぎだ)

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