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兎と亀のぱろでぃ

作者: 木彫りの熊ごろう

兎と亀のなんか不思議な感じ。納得してない。あと、アドバイス欲しいです。批評も全然。

兎と亀

今こうして君を振り返って書いていると昔のことを良く思い出すよ。

小学校の運動会の時、君と同じアンカーだった時に君がぶっちぎりで優勝を決め、僕が最後にゴールする姿をつまらなそうに見ていたのを覚えてる。君は速すぎる。何事も。君は頭も良いし、容姿端麗だし、運動神経も抜群。君の背中ばかり見るのは嫌なんだ。負けず嫌いだから。絶対に追い抜かしてやるって思ってしまうから。

中学の時、君の才能と努力に完全に打ちのめされた。才能でも負けているのに努力なんてしないで欲しいよって思ってしまった。

追いかけても追いかけても君はどんどん加速して、いくらなんでも速すぎだ。背中すら見えなくなって、ある日追いかけるのをやめてしまおうなんて考えた事があるのは君には絶対に言いたくない。

君は友達でもあったけどライバルだったから。

君を追いかけていると君の凄さが良くわかる。君の足跡は図体に似合わず深く地面にめり込んでいた。

毎日毎日、君の後を追う。君も見たであろう色んな景色を味わった。綺麗な景色もあったけど、大半はそうではなかった。険しく、辛い道だった。君のことだから僕が遠回りするしかないような険しい道も通っていったんだろう。そこからの景色はどうだったのかな?君の姿が消えてからもう長い年月が過ぎたよ。毎日同じ事の繰り返しで、とてもしんどかった。それでも、頑張っていられるのは君がいたからだと思う。君と競い合うことで僕の毎日が無駄じゃないように思えている。長生きする理由をくれた。君と競い合う人生はとても充実したものだった。歩みを止め、長い眠りについた君は、まだまだ僕では到底辿り着かない遠い場所で待っているんだろう。ハンデなんて君が思ってても認めない。最後には勝つ。勝ちたい。

人生の競争相手に君は強すぎて何度も心を折られたよ。



この手紙を読んでるってことは君はここまで辿り着いたということかな。

君には通って来れないだろうと思う道を僕は何箇所も急いで駆け抜けてきたんだけどね。きっと、わざわざ遠回りをしてきたんだろうね。そんなノロノロして生きてて、この場所にいるなんてね。この道のりは僕の人生そのものなのに。

君と初めて出会ったのは小学校の時だったね。

君と僕はアンカー同士で、僕に抜かされた時に諦めてスピードを緩めたよね。リレー前、靴紐を強く結び直していた僕の隣にいた君の靴紐は緩いままだったのを覚えてる。

君の人生において、小学校最後のリレーのアンカーという出来事は靴紐すら緩いままで行えるものなのか。そう思った時、僕は君に負けたくなくなった。僕が一番欲しいものを持ってるくせに。勢いでライバル宣言をしてしまったのはまだ幼かったからかも知れないけど、間違いはなかった。こうして人生の競争相手になっているのだから。

それから僕は駆け抜け続けた。どんどん加速して、どんどん動いていく人生。君には感じたことがないだろう。人生の1日1日を必死に駆け抜けることによって感じる達成感や充実感や爽快感。1日で日記帳が全部書き終わるくらいの出来事の数々を。

高校の時。君は僕に羨ましいと言った。その言葉は僕が君に言わまいとしていた言葉だったなんて知るわけもないだろう。口喧嘩が続き、取っ組み合いの最中、君が発した一言で僕は何も言い返せなくなった。

君がダラダラと過ごす何でもない1日を僕が、どれほど欲していたか君は知らないだろう。

速いって事はそれほど1日に出来ることが多くて大変だった。やろうと思ったことをなんでも出来てしまうから。

君の一日を経験してみたかった。のんびり、ゆったりとね。どんなに楽なんだろ。しようと思えば出来る事ではあった。けど、君は想像したことあるかい?君より何倍もすぐに死ぬ生き物の存在を。君は明日でさえ生きられるかわからない時、何をする?僕の人生ではする事の一つ一つに「何のために?」がまとわり付いた。そして僕は悩むのをやめた。どうせすぐ死ぬのなら常に自分を追い込み、努力し、才能を活かし、人生を持てるすべての力で駆け抜け続けてやろうと思った。君では到底辿り着けない場所に行ってやろうと思ってた。僕の何倍も生きる君が辿り着けない場所に行けたら僕は、君より長く生きたなんて事にはならないかな。なんて思ったりしてね。

結局、苦しい事の方が圧倒的に多かった人生だった。勝敗がわからないまま僕はこの人生を終えるのは正直、不本意。それでも、後悔はない。忙しくて過去を振り返る余裕なんてなかったからね。死んでから後悔する事にするよ。

君はここまで来れない。毎日適当にダラダラと過ごしてるような君には。僕はそろそろ生き絶える。遅い君にはいいハンデになるね。最後に一つ、僕の何倍も生きる君に質問したい。

君にはこの道はどう映った?僕が必死に駆け抜けたこの道は綺麗な道だった?それとも見るに耐えない酷い道だった?僕には景色を味わう時間なんてなかったから後で教えてよ。この道の先の景色も加えて。


「お前にだけは負けたくなかった」





誰かが手紙を閉じる。


僕の日々なんて君から見たらダラダラと過ごす何でもない日にしか映らなかっただろう。君は速すぎるから。僕は小さい頃から運動も勉強もダメで、何をやっても人より優れてるものなんて何一つなかった。小学校の時のアンカーだってやらされただけだった。相手が君じゃ誰も僕に期待なんてしてない。君からライバル宣言をされた時、当時はからかわれただけだと思っていた。

君がいつも何事にも熱心で努力を怠らない姿を見てかっこいいと思えば思うほど、僕は僕の人生がわからなくなっていった。

高校の時、喧嘩の末に「どうせすぐ死ぬくせに」と僕は言った。それは今でも謝るつもりはない。だって、

君の1日と僕の1日はまるで違う。僕の1日は少ししか進めない。焦っても、頑張っても、工夫しても、何をしたって少しだけ。それを長い日々し続ける。毎日。毎日。ただひたすら。それが君にとっては羨ましいものだった?僕は歩んだ距離が君と一緒なら僕は君みたいに短命の方がいい。だって楽そうだから。君を抜かすのにあまりに多くの時間を使った。長生きが良いなんて僕は思えない。君を追い越すのに君の何倍もの時間を使ったから。苦しかったから。進んだ距離が一緒なら僕は君がいい。僕の何倍も速く死んだ君を追い抜かすのに僕は僕の全ての寿命を費やしたなんて、馬鹿みたい。僕は長く生きてない。君と同じく。

君も全力疾走を全うし、僕も全力疾走を全うした。それでも君は僕の1日が欲しかった?


そうして、誰かが歩みを進める。踏み出した足から体はガクンと倒れ込み、目覚めることはなかった。

その表情は悔しさに満ちていた。


その先、山の頂きにある一通の手紙に気付くことなく。



なんとなく疑問に思った。

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