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仲直り

 冒険者を倒した俺とギンは、ダンジョンに戻ってテラに報告した。


「嘘だろ? たった二人で、三人の冒険者を倒しただって……?」


 最初は疑っていたテラだが、剥ぎ取った冒険者達の装備を見せつけると驚きに目を見開く。


 間抜けなくらい口をパクパクさせているが、ともかく俺の言うことを少しは信じてくれたようだ。


「人なのに冒険者の敵で……。冒険者を撃退したのに私らの敵で? あ、あれぇ!?」

「いいから、約束通りここに住まわせてくれよな。俺はどこに住めばいいんだ?」


 今の状況がよほど信じられないのか、テラは目を回して混乱している。


 好機を逃さず頼み込むと、テラは渋々といった様子ながらもダンジョンを案内してくれた。


「えっと……私ら魔人は危険な入り口付近に配置されてんだ。住むとしたら、お前もここら辺だな」

「私の近く、空いてる。一緒に寝よ?」

「おいバカ、そしたら私もこいつと近くになっちまうじゃねぇか! 勘弁してくれよ!」

 

 俺の服の裾を引っ張りながらおねだりするギンに、テラが文句を言う。


 しかしそれなりには信用を得ることが出来たのか、最初ほどの拒絶っぷりではなかった。昨日なんか、まだ信用出来ないって理由でダンジョンと外の境に寝かされたからな。


「いいじゃん、テラも一緒に寝れば。タケルの体、柔らかくてきもちいいよ」

「お、おいギン! そんなに抱きついて!」


 ギンの俺に対するスキンシップを見て、テラが顔を真っ赤にする。なんというか、意外と純情なやつだな。


 テラは気恥ずかしさを誤魔化すように荒く吐くと、ようやくボソボソとした言葉で俺を労った。


「ま、まぁ、ただの人間にしちゃあ良い働きだったんじゃないか? ダンジョンに住みたいなら、これからも精々役に立つんだな」

「あぁ。俺もここを追い出されたらどうしようもないし、そうさせてもらうよ」

「え? う、うん。いや……」


 彼女にしては歯切れの悪い反応なので、俺は眉をひそめる。すると、ギンがテラに助け船を出した。


「こういう時は、ありがとう、だって!」

「うぅ……。あ、ありがとよ……。そんで何より……疑ったりしてごめんな?」


 成る程、謝りたかったけど素直になれなかったわけか。謝罪を口にすると気分が楽になったようで、テラはようやく落ち着いたようだった。


 こいつ、素直になれないところが可愛いやつだな……。最初会った時は分からなかったが、結構良いやつなのかもしれない。


「ねぇ、みんなどうしたの?」

「何の話でござるか?」


 そんな話をしていると、洞窟の小部屋から二人の少女が姿を現した。


 一人は頭部から大きな耳を生やしている少女で、額からは角も伸びている。例のごとく服は着ていないが、モコモコの白い毛が体を覆っているので大事なところは見えていなかった。


 もう一人は完全なる全裸で、特徴的なのは手首から先が緑色の鎌になっているところだ。胴の長さに匹敵するくらい大きな鎌は、蟷螂のそれを連想させた。


「テラ、あまりうるさいと魔獣達から苦情がくるでござるよ?」

「そうだよ……。さっきからちょっと……声大きい……」


 テラを嗜めるた少女二人は、ようやく意識がこっちに向いたのか各々反応を見せた。


「おっ、人間! もしかしてこの人がテラの言ってた、ここに住む人でござるか!?」

「うぅ、怖い……」


 蟷螂少女は興味深そうに声を上げ、もう一方のモコモコ少女は人見知りなのか蟷螂少女の背に隠れる。

 その拍子に蟷螂少女が少し前に押し出されて彼女の裸体が強調されてしまったので、俺は平静を保つのがやっとだった。


「うん、この人がタケル。私を助けてくれた」

「人間なのに魔人を助けるとは、タケルは奇特な御仁でござるなぁ」


 だがもちろん蟷螂少女は自分がすっ裸であることなど意に介さず、こちらに関心を向けるばかりであった。


 このままでは会話どころではないので、名前を聞いたりするのも後回しに服を着てもらうよう頼む。


「すまん、いきなりで悪いんだけど、ちょっと服を着てもらえないか? なんというか、目のやり場に困るから……」

「何ででござるか?」

「いやだって、恥ずかしいし……」

「拙者は体にも魂にも、恥じ入る点は何一つないでござる。どこでも好きなところを見ればよかろう」

「あああああ! またこの流れぇぇぇ!」


 仕方がない、後で冒険者達から剥ぎ取った装備を与えて反応を見てみるか……。今は俺が平静を保ってさえいれば問題ない。


 そう自分に言い聞かせて、再度蟷螂少女の体に目を向ける。……うん、やっぱ駄目だ。


「どうやらお疲れのようでござるな。今日はもうお休みなされ。拙者らの紹介は、また後日ということで」

「うん、というかもうずっと眠ってて」


 蟷螂少女が俺を労る発言をして、その裏でモコモコ少女が不穏な発言をした。あれ、俺もしかして嫌われてる?


「そうだ!」


 しかし真意を聞く前に、興奮した様子のギンが叫んだ。


「タケル、寒そう。寝る時、私が暖める」


 よく気が付いただろう、と胸を張るギン。確かにパーカーをギンにあげてから凄く寒いけど、私が暖めるってどうするんだろう?


 俺が訝しんでいると、ギンはピトッと俺の右側に体をくっつけてきた。ギンの元々の体温で、確かに暖かい。


「あたたかい?」

「うん、そうだけど……。このまま寝るの?」

「うんっ! きもちーでしょ?」

「そ、そうだね……。でもこれじゃあ寝られなさそうなんですが……」


 絶対体の感触意識しちゃうでしょ!?


「ほら、テラも一緒に!」

「そ、そうだな……。おわびのしるしに? 仕方ねぇから私も暖めてやるよ」

「いや大丈夫! 気にしてないから!!」


 これ以上はヤバいと思って断るが、テラは結構気に病んでいたのか、俺の言葉も意に介さず左側にくっついてきた。


「あちぃっ!」

「す、すまん! 火を消すの忘れてた!」


 テラの胸や局部を隠していた炎が熱くて、思わず叫んでしまう。


 それに気が付いたテラは、謝りながら火を消した。彼女の裸体が完全に露になる。


「謝ることが増えちまったな。その分、もっと暖めるしかねぇ!」


 責任感を感じたのか、テラは俺をより暖めようと裸体を隅から隅まで押し付けてくる。体温よりも、その感触で色々と暖かくなっちまうわ!


「私も! もっと暖める!」

「むしろ燃やす!」


 ギンが負けじと体を押し付けてきて、テラもまた体を押し付けるのを繰り返す。変なところが暖まりすぎて、俺は横になった後も寝ることが出来ないのであった……。

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